マドレーヌ14歳、夏。~夏の仮装大会〜
「熊だぞー!がおー!」
「「「「きゃー!あははは」」」」
リアル熊皮をすっぽり被って追い掛ける子供達の頭には、手作り感満載のイヌ耳やネコ耳、ウサギ耳。ただいまコメルシー邸は仮装大会の真っ最中である。
「マディくらいの大きさなら大丈夫なのか」
そういうダルドワーズの腰には無理くり縄で結えられた尻尾が揺れる。はじめ熊皮は彼の仮装だったが、巨大な熊の迫力に子供達が泣いた経緯がある。
「動物の変装も良いもんだな~」
「スヴァさんの翼、ヘルギさん渾身の作品だな。凄くリアルだ」
「そのまま飛べそうだよね」
水なら瞬時に蒸発してしまいそうなほど熱量高めのマリー夫人と、夫人の期待に応えきったマーサの手腕で完成した男装は、ひとしきりお披露目会を終えた後、危険すぎると却下された。が、男装がウケたのに味を占めたスヴァーヴァが面白がって「いつもと違う格好をしよう」とカリソンの家族も巻き込んでの開催だ。要は、暇を持て余した人間のしょーもない思い付きである。
「次は何の変装にする?」
「母さん、気が早いよ」
コメルシー夫妻のように社交もなければ、ダルドワーズやカリソンのように仕事をしている訳でもない。ニート状態の親子3人だ、全くもって宜しくない。
「動物の姿で働ける場所、あるかな?」
「余計な考えは捨てろよ?」
「だって、何もしてないでいるってさあ…」
しがない一般庶民として生きた記憶のある身には、卒業後も定職に就かず遊んで暮らす日々は、どうにも居心地が悪い。とはいえ、娘を働かせているとなれば家名に傷がつく。そんなわけで考えたのが男装だったのだが。
「しばらくはのんびり過ごすことだけを考えていろよ。学院時代は、なんやかんやで忙しかったろう?」
「うーん…」
「そうだ。貸本屋で、何か借りてきてやる」




