マドレーヌ14歳、夏。~危険な毒草〜
「ガレン」
「すぐに管理人をここに」
医薬学の大家スュトラッチ家の父子が眼光鋭く凝視する先は、大きな葉を青々と広げる植物。
それは、ガレンが呼んだ植物研究所の職員に毒草と判じられた後、管理人によって根ごと掘り起こされ駆除された。
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「んで。なーんで貰って来るんだ」
「だって、勿体ないし」
鍋に入る大きさに切り揃えたら、塩をまぶしてずーりずーり。それからたっぷりの熱湯で茹でこぼし。水で冷やして筋を取り、水を替えながら一晩置いたら出来上がり。
「しかも食うとか」
「おいしいよ、蕗」
そう、蕗。あの、炊き合わせなんかでお馴染みの、緑色でストローみたいな形状をした、アレだ。
大人がわらわら集まって、大々的に駆除した“毒草”とやらは、どこからどう見ても、蕗だった。しかも、立派な太さの、秋田蕗だ。そりゃあまあ、毒もあるけれど、水溶性だから、しっかりアク抜きをすれば葉っぱも茎も食べられる。猛毒を持つふぐの卵巣までも食らう国の民にかかれば蕗なんぞ敵ではないのだ。
そんなわけで、植物園に生えていた蕗を祖父にねだって貰って来て、ただいま下ごしらえ中である。醤油が無いのが悔やまれるが、せっかくなので色々と試してみたい。
「なるほど、斯様にして毒消しをするのですか」
「聞けば、お嬢様はアデイユをも食用と為されておいでとか。豊かな発想力をお持ちでいらっしゃいますね」
どうも“毒好き”認定されているような気もするが、大いなる誤解である。ただ、ちゃんと下処理すれば食べられるのなら食べておこうくらいの気持ちで、この時期にしか食べられないから食べておこうくらいの気持ちで……、ナマコやらウニやらふぐやらを食用にする、食に関して少しばかりマッドな民族の癖が抜けないだけで。
「殆どが水分なので、栄養面だけで言えば、敢えて食べる必要もないんでしょうけど。あ、葉の部分には妊婦さんや授乳期の母親に欠かせない葉酸も含まれています」
栄養を欲して食べるのではないと言いつつも、食べる言い訳みたいに付け加えれば、父と祖父が顔を見合わせた。口では何だかんだ言いつつも、この2人、よく似ている。相性が悪いのは似た者同士ゆえか。同族嫌悪ってやつだろう。
「どしたの?」
「よく聞いて、ぼくの天使。愛する天使」
「この植物は、腹の子を下ろすのに使うと、書物にあるのです」
「はあ?????」




