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マドレーヌ14歳、夏。~進路相談〜

 ふと目を醒ませば、辺りは精緻なレースのような儚く薄い闇。そして、しなやかな腕の感触と温もり。


「父さん?」


 こちらを見つめる濡れた瞳は、夜明け前や夜を迎える直前の空の色。光と闇が出逢う刻に世界がみせる、濃い紫色。


「ポルミエやマリーは」


 昔からずっと聞いていたその声は、今は迷子の子供のように行き場のない悲しみと心細さに暮れていて。


「大人になったら、マディの好きにさせるように、言うんだ」


「うん。昔からだよね、よく聞いてた」


 大人になるまで。それは、もう1人の両親の口癖で、愛娘を囲い込んで離さない実父に対して牽制すると同時に覚悟を決めるよう迫るものだった。


「マディは」


「うん」


「好きなこと、もう決まってるの?」


 ひと処に留まらず各地を流れ歩いて神託を下す漂泊の巫女の血を引くためか、スウェイビアもスヴァーヴァも自由を好み、意に染まない束縛や拘束は命を縮めかねない。だから、心が千千に引き裂かれようとも、それが今生の別れになろうとも、村を出ると決めたのならば認めるより他ない。スヴァーヴァの両親がそうであったように。


「ううん。今はまだ無いよ」


「そっか」


「あ、したいことならあるよ!今はみんなをびっくりさせたいの」


「さっき教えてくれた新作?」


「うん!でもね、まだ途中なの。暑くなるまでに完成させる予定」


「ぼくにも見せてくれる?」


「もちろん、父さん達が一番最初だよ」


「楽しみだなぁ。約束ね」


 永遠になるかもしれない別離がまだまだ先のことだと安堵し、父は愛娘を閉じ込めた腕に力を込める。小さな体いっぱいに力強く泣き声を上げていた頃も、高熱を出して寝込んだ時も、実験が失敗して落ち込んでいる時も、いつでも父と娘は共にいて、これからもずっと共にいるために。



「…大人になんて、ならなくていいのに」



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