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エーブレス・キーバー14歳、夏。~叶わぬ懺悔〜

 幼馴染が死んだ。

 この激しく降る雨の中、遠乗りに出掛けて、落馬したそうだ。


 我が家とは無関係な者で、むしろ、ありもしない噂話を流してキーバー領を不当に貶めた卑劣な加害者である。だから最期の別れにも立ち会えず、そもそも葬儀もひっそりと行われたという。


「あの、懺悔室は…?」


「申し訳ございません。設備の不調により使用不可となっております」


「そうですか…」


 幼馴染の死が事故でないことくらい、よく解っている。楽しかった想い出と見捨てた罪悪感とを抱えて、抱えきれず、教会で胸の内をすっかり吐露したいという願いすら叶わなかった。

 出来ることと言えば、ただ、かつての友人の冥福を祈ること。肉親にすら、否、直接手を下した肉親だからこそ祈ることの出来ない安らかな眠りを、どうか彼の元に届けて欲しいと。



 ―本当は、私にもその資格なんてないのだ。



 彼らのしたことと言えば、噂話を流しただけ。確かに悪気はあったけれど、こんな最期を迎えねばならないほどの罪だろうか。そう思う反面、居なくなって安心した気持ちもある。

 もしも彼があのままキーバーに纏わる偽りの噂をばら撒いていれば、キーバーから裕福な人々は去っていただろう。ごろつきが闊歩する街で誰が保養なんてしたいものか。財産持ちなら尚更だ。一度立った悪評を払拭するまで、果たしてキーバー家は保っていただろうか?保っていたとして、何によって盛り立てて行けば良い?農地にできる土地は少なく、有望な資源もない、あんな田舎の領地を。



「あなたの心を覆う悲しみ苦しみの涙が癒えた後に、幸いが訪れんことを」



 どれくらい経ったろうか。人気のない聖堂で祈りを捧げていると、柔らかな声が頭上から降り注いだ。見上げればたった一度だけ王立学院の授業でその姿を拝んだことのある、中央教会で最も高位に就く、大司教様がすぐそばに居る。

 慌てて立ち上がろうとするのを手で制され、修道士が運んできた温かな茶が振舞われた。不思議な味の茶だった。



「容易には癒せぬ深い悲しみを抱えた人々が、自身の負うた悲しみと向き合うことは困難です。我らは寄り添うことしかできませんが、あなたは1人ではないということだけは、決して忘れないでください」






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