マドレーヌ14歳、夏。~祭りの終わりに〜
「“それではいずれまた、会える日を”」
「“はい。ウリクセスの義伯父さま、義伯母さまもどうかお元気で”」
「“ねえ、わたくしはまだ居ても良いのではなくて?どうせ帰ったってやることなんてないもの”」
「“スウェイビア様、それは…”」
「“娘と孫との三世代同居か。悪くないどころか控えめに言って最高であるな”」
「“殿下まで?!”」
「それじゃあ、俺とダダールさんで合流地点まで皆を送っていくから」
長いような短いような夏至祭の終わりが近づき、遠方からの客人はそれぞれの居るべき場所に帰っていく。
「それでは、ヘルゲートはこのまま村に?」
「王都に居る理由がもう無いからね」
「また来い!フューならいつでも歓迎するぞ!」
「北の園地の蔵書をすべて戴いて良いのですか、お祖父様」
「ええ、せっかくの機会ですから不用品を丸ごと処分しようかと思いまして。フルンさんが活用してくれると有り難い」
「しかし、貴重書では…?」
「昔はヘルゲートの隔離に役立ちましたが、今はこの通り、本などなくとも心配要りませんので。では、早速ですが共に行き、必要な書籍を選んでください」
あちこちで別れの挨拶やらをして、馬車の音が遠くなり、やがて聞こえなくなった。
「静かになっちゃった…」
「煩くなくて良いね」
「うん…」
弟や妹達も遊びに行ってしまい、談話室にいるのはマドレーヌと4人の親たちだけ。存分に甘やかしてくれる人間しか居ない空間に、思わず本音が漏れる。
「これから、わたし、どうしよう…」
王立学院は卒業してしまい、期間限定の研究員は契約解消。それ以前に王宮の臨時雇用も契約を円満終了しており、これから先、するべき事もしたい事も、何もなくなった。
「これまでが忙し過ぎたのだもの、ゆっくりお休みなさいな」
「そうだな。じきに長雨の季節が来る。その前にたっぷりと太陽の恩恵を浴びて体を休めておけばいい」
「はい。そうします」
養父母の言葉にカップを置いて立ち上がると、ふわり、体が浮いた。まるで雲の中にいるような、ふわふわとした真っ白な世界にただ1人放り出されて、言いようのない不安と甘美な孤独が胸に広がる。
「―――――――!!」
誰かの泣きそうな声を、その場に残して。




