マドレーヌ14歳、夏。~東からの手紙〜
「ポルックスから手紙が届いた」
祖父と父と従兄が揃って「大至急の案件ができた」と言い、マドレーヌは安全のため帰されることになった。迎えに来た馬車には母と義兄が居て、母と娘はここで交代。なんでも、正式な婚姻届を出すにあたり必要なサインを貰い、ついでに夫が子供時代を過ごした場所を見学しに来たのだとか。
新たな女性の登場に更なる騒動にならなければいいな、と考えていると、ダルドワーズから一通の手紙が渡された。それはもう半月も前に王都を出立した一行の、よく知った人の文字で綴られた、ダルドワーズ宛ての手紙だった。
「お元気そうだね、よかった」
「ああ。防砂林の下準備も意図せず始まっていたようだから、東の砦の防衛計画も進みそうだな」
国防大臣マロウ伯爵の肝煎りで東の国境に防砂林帯を築く計画が立ったけれど、既に今年の予算配分は終わってしまっていて、それに割く資金がない。予備費はあるけれど表向きは何も起きていない東国よりも現段階で既に問題視されている諸々に優先的に充てられるので、こちらも望み薄だ。
東国との緊張の高まりを肌で感じていた新テュンダ辺境伯レオスはナウルとポルックスを経由して伝えられた防砂林計画を、テュンダ辺境伯家の事業として行うのではどうか?と考えていたらしい。それが……。
「本当に、これは荒野であった地か…?」
第三部隊の溜まり場、もとい、駐留基地である東の砦に行ってみれば砦周辺の荒野は雑草が生い茂る草原に変わっていたという。ポルックスからの手紙は、その顛末を面白おかしく記してあった。
軍御用達の商家の不正が明るみになった後、新しい納入業者から正規の食料品がどっさり届いた。国からのお詫びも兼ねているのか、それとも元よりこの量なのか、とにかく大量で既にある分と合わせれば、とても食糧庫に入りきらない。かと言って食料を外に放置すれば鼠や虫の巣になってしまう。
「どうすんべ?」
「どうせなら鼠だの虫だのじゃなく、食って旨いやつが集まりゃいいのにな」
「それだ!」
以前の商家から届いた、質が悪いけれど食べられなくもない古い麦を荒野に撒いて野鳥を集めて狩り、特製塩ダレで焼いてメインディッシュにしよう!名付けて「麦を肉に変えるぞ大作戦」を決行。古麦が無くなるまでこれを続けた結果、一帯に集まった野鳥の糞に混じっていた草木の種が芽吹いたらしい。
「………」
「第三部隊らしいだろう?」
悪知恵が働き武器を扱える分、その辺の野猿よりも遙かにタチが悪いと部隊長御自ら胸を張って言うだけのことはある、なかなかの逞しさだ。
「ともあれ諸々の懸念も処置が済みそうな事だし、存分に休暇を楽しむか、マディ」




