雨雲の「音」と「臭い」と「僕」と。
サワサワ・・・
心地好い音と、水面を撫でた風が作り続ける、ひんやりと過ぎ行く涼風が静かにそよぎ、何処かへと流れて行く。
ザワザワ・・・
体を震わせながら、木々が踊る。
大きな体に纏わり付く様に、でも、太陽の光を精一杯受ける為に自ら生やした枝葉は、風を受けて勇みながら喜び回る。
そんな風の心地好さが頬を撫で、僕は目を覚ました。
辺りを見渡すと、相変わらず皆は川遊びを楽しんでいる。
「ん・・・」
寝転がったままで、首を思い切り上空プラス45度位にまで反りつつ、そのまま思いっきり両手足を伸ばしながら、斜め上の青空を仰ぎ見る。
「あ・・・」
木々の間に見える、もくもくと、ゆっくりと浮かび上がり、形を整えつつある、黒いゆらゆら。
「入道雲だ‼️」
立ち上がった僕を横切る風には、微かに雨の臭いが含まれていた。
「もう帰ろう‼️」
僕は叫んだ。
流石は田舎の子供の集まりだ。
僕の言葉に対しては「?」ばっかりだったけど、顔を上げた先にある、僕の向こうの「真っ青なキャンパスを侵食する黒」を目視した後は、皆申し合わせたかの様に、一目散に川から上がり、走り出した。
「今日の夕立早やすぎやろ‼️」
「ばってん、早よ帰らんと」
皆規則正しく一目散に、だけど散り散りに走り出す。
帰りは下り坂だ。
かけっこの様に全力で皆が走る。
さっきまで遥か後ろにいた雨雲が、いつの間にか近くに接近している。
「臭い」で分かる。
「わー‼️」
「また明日ぼろ橋行くばい‼️」
皆口々に騒ぎながら、坂道を転げ落ちる様に駈けて行く。
僕も走りながら、木々の間に見える「ぼろ橋」を見る。
いつまでも変わらない橋。
お父さんや、そのお父さん。
そのまたお父さんが皆知ってる「ぼろ橋」は、いつもと変わらずに、そこからじっと動かずに、じっとしている。
「明日もまた来るからね。」
そう言い終えた瞬間。
或いは「から」と「ね」の間の雨音。
「ポタポタ」
と言う音が、僕の耳に届く。
家まであと2分。
一番遠い「美樹」ちゃんの家までは、あと3分位かなあ。
間に合え‼️間に合え‼️
そんな願いを裏切る様に、黒い領域を従えた入道雲が落とす水滴は皆を濡らし、どうにか家に着いた頃には、雷光を轟かせ、全てを覆い尽くす様な雨音を辺りにひたすら響き渡していた。
「今日は夕立が来るの早かったね」
お母さんがタオルをくれる。
「うん。」
頷きながら、軒下に座る。
お母さんが出してくれた西瓜を食べながら、空を見上げた。
相変わらず、夕立は雨樋を震わせている。
「まだ4時なんだ‼️」
スイカを食べながら、居間の時計を見た僕はビックリして叫んだ。
「ご飯はまだやけんね。」
お母さんの言葉は当たり前だ。
お父さんだって、まだお仕事してる時間じゃないか。
「うー‼️」
・・・・夏休みの宿題しようかなあ。
と思いながら、結局僕は「ゲームボーイ」のスイッチを入れてしまった。




