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四角い空を見上げて  作者: くまのびと
「四角い空」から見る夢と現実と、過去と今。お伽噺と「その先」について。
6/18

小さな小さな「ぼろ橋」の時間と、僕。

その日僕は、「新しい話」を紡いで行く「昔の寓話」を見た。

敢えて例えるならば、それは二律背反なのか、非現実的な「不条理」な只の夢なのか。


或いはメビウスの輪が紡ぐ、あちこちに無数に存在する「巡り巡る」、僕の意識が辿り着いたパラレルワールドの一つに「無意識」や「潜在意識」が勝手に投影した「夢」だったのだろうか。


きっとそうだろう。

疲れていたんだ。

うんざりしてたんだ。

だからあんな夢を見たんだろう。


・・・・・・

それにしても。

子供の頃の夢を見るのは久しぶりだった。


雲一つない、突き抜ける様な澄みきった青空。

心地よく吹き抜ける風は、上空では雲を払い除けるように、一方では僕らが見えない、「ここではない、遥かどこか」に向かって雲を呼び込んでいるかの様に、少しも休む事なく、地上で聞く「僕ら」にはサワサワとしか聞こえない位の、でもせわしなく忙しい音をずっと鳴らしていた。


僕は顔を上げる。

水面から出した僕の顔には、情け容赦ない夏の日差しが照りつける。


「暑っ‼️」

僕は思わず顔を沈めて、少し泳ぎながら進む。

「ぷはあっ‼️」


息が続かなくて、顔を上げて見上げた目線の上には、小さな橋があった。

小さな川の両端に跨がる、やっぱり小さな橋。


今ではもう使われる事はない、古くてくたびれ果てた、小さな橋。


「ぼろ橋」

僕らはずっとそう呼んでいた。


九州の田舎の夏は早い。

それに、「プール」なんて上品な場所で泳ぐ習慣は、どこをどう探したって、「あの日」の僕らにはなかった。

メダカが泳ぐ小さな川。


泳ぐのに飽きたなら、手製の釣竿(糸に針をぶら下げただけの物だった)に、その辺で適当に捕まえた餌をぶら下げでもしたら、結構な確率でアブラメが釣れて楽しかった。


そんな小さな川。

僕たちは、夏休みのとっても熱い日には、決まってそこで泳いで遊ぶ。

川遊びをした事をお父さんに報告すると、決まって嬉しそうな顔をした。


「お父さんのお父さんの、そのまたお父さんの頃から、みんな夏はあの川で泳いでたんだよ。」



「ぼろ橋は元気だった?」

お父さんはいつも同じ事を聞いてたんだ。

僕はいつも「元気だったよ‼️」

と答えたけど、何だか「ぼろ橋」が「元気」だなんて、ちょっとおかしくて、その度に僕は少し不思議な気持ちになった。


「あの橋はもうずっと使われてないけど、ずっとずっと昔からあって、川から上がった時に、あの橋が見えたら何となく安心したなあ。」


ってお爺ちゃんも言ってたなあ。

ってお父さんもずっと言ってたっけ。


「あー!疲れた‼️」


泳ぐのにも疲れて、僕は川の真ん中に付き出した岩によじ登り、ゴロンと横になった。

相変わらず夏の太陽は熱いけど、水面から上がって来る風が気持ちいい。


「何やってんだよ!」

皆の声が聞こえて起き上がる。

視線の先には、いつもと変わらない「ぼろ橋」が見える。


ずっと変わらない「ぼろ橋」

ずっとずっと、お父さんのお父さんの頃には、古くてもう使われる事がなかった「ぼろ橋」。


でもきっと、それが出来た時には、皆が喜んで行き来したに違いない「ぼろ橋」。

「ぼろ橋」はどっちが幸せなんだろうね。


「昔かな?」

「今かな?」


ううん。

いつかは壊されちゃうかもしれないけど・・・

「もっと先かな?」


もしかしたら、「新しい橋」が「ぼろ橋」って呼ばれて、いつか失くなるまでの全部の時間が、「ぼろ橋」にはずっとずっと幸せな時間だったりするのかなあ。


今はもうだれも渡らないから、背中がギシギシ軋む事はないよね。

元気だった頃は「まだまだ‼️」って笑ってたのかなあ。


ちょっと草臥れた頃には

「いつもお世話になっております。どうか程々にお願い致しますね。」

なんて内心思ってたりしてね。


それでも、今でも皆が「ぼろ橋」を見て、それを変わらずに「ぼろ橋」って呼んで、「ぼろ橋」は生まれてからずっとずっと、僕やお父さんや、お父さんのお父さん。

・・・周りの皆に大事にされてるんだもんね。


だって、みんなが「ぼろ橋」を覚えてるんだもん。

僕らだって、きっとずっと覚えてるから。


幸せだね。

「ぼろ橋」



























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