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四角い空を見上げて  作者: くまのびと
「四角い空」から見る夢と現実と、過去と今。お伽噺と「その先」について。
4/18

4話 月が嗤う

やれやれ。

今日はランチタイムもディナータイムも、悲しいかな「時給」の僕にはとても悲しく、バイト先の店舗には間違いなく「素晴らしく」目の回る様な忙しさだった。


恐らく、いや、間違いなく確実に、誰に憚る事もなく、今日のアルバイト王は「僕」だと認定できる。


誰も渡してくれないなら、自ら「バイト王」と書いたベルトを腰に巻いてもいい。


何ならついでに、リングガールに両手に持たせたプラカードには、A4サイズの紙に縦書きでこれでもか、という位に高らかに「成果主義」と書いて、店内を闊歩したい位だ。


救いは賄いが兎に角美味しい事。

元々、夜の賄いは御飯に味噌汁(その日によって、赤出汁や清し仕立てだったりする)はおかわり自由な上に、その日に余った切れ端等を使った料理にありつける。


今日は幸運な事に・・・

(店にとっては不幸だが)

当日キャンセルになった食材で料理長が作ってくれた、「黒毛和牛の治部煮」は絶品だった。


裏口から出た僕は空を見上げる。

ピンと張りつめた、それに良く晴れた(今は夜なのだけれど)1月の空には、凛とした月が良く似合う。


僕は煙草に火を付けた。

高校生が煙草?

今時ありふれた、ごくごくありふれた行為だろう。


僕が吐き出した息と煙はユラユラと中を舞う。

それは直ぐに目に見えて消えてしまうが、間違いなく空高く舞い上がって行く。


もしかしたら、明日の朝には「それ」は空に届いているのかもしれない。

「明日は晴れかな」

不意に思う。


僕が吐き出した煙が空に届き、雲一つない空に少しの彩りを加えてくれたらなあ。


僕が吐き出した煙と息が空高く舞い上がって雲になり、どこまでも続く真っ青なキャンパスの彩りになる。


でもそれは、自分の意思では何処へも行く事は出来ない。全ては大空を流れる風に流され、そして何時かは消え失せていく。


不意に思った。

まるで「人の営みの様だ」と。

僕は煙草を地に落として踏みつける。

今日も綺麗に月が笑う。いや、「嗤って」いるのかなあ。


また明日も「繰り返す正しい日常」が待っている。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読しました。 独特な雰囲気が漂うお話でした。 率直に上質な文学だなあという感想です。朗々と声に出して読めば、「詩」に通ずるような響きもあります。 そして窓から見る「四角い空」と「月」が…
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