表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四角い空を見上げて  作者: くまのびと
「四角い空」から見る夢と現実と、過去と今。お伽噺と「その先」について。
10/18

ハーフ&ハーフ

何一つ予想に反しない答えだった。

女が選んだ答えは「他人に生まれ変わる」事。


幸い彼女は田舎から上京して数年。

実家や、地元の友人や知人とは縁が薄い。


そして、俺が彼女を「紹介」された時に確認した通り、彼女はクレジットカードを所有していない、「現金派」である事が今回は幸いだった。


更に、今後はポイントカード等も処分させる。

マイレージカードは勿論、とにかく過去の生活と関連のある物は全て完全に切り離す。


家族など、どうしても連絡したい相手には・・・


(本当は、それすらないにこした事はないのだが)


匿名のEメールアカウントを作り、プリペイド電話を利用させる。


そして、今から数週間、「全て」の人間に話す言葉を「嘘」。「嘘」。「嘘」。で塗りつぶす事。

少しずつ嘘を混ぜながら、最終的に全ての今後の自分を「グレー」か「黒」に混ぜ合わせる。


それも、出来るだけグチャグチャにだ。

「鬱」や「虚言癖」に陥ったと、回りが思ってくれたのならばしめた物。


そうして実際に失踪する前に、少しずつ、確実に、勤務先の会社にすら、嘘の情報を与える。


「父親が認知症を患いまして」

「介護が必要なんです。」


公共サービスに関しては、「修正する」という名目で、名前や社会保障番号を変更する。

更に、架空の郵便受取用の住所を作り、住所をそこに変更させる。


「出来るかな?」

「今直ぐには無理だけど、一月、二月後には、完全に他人になれるけど?」


俺の問いに女は頷く。


「準備が出来るまで、・・・その後も何かあれば、ここに電話したらいい」


「有り難うございます‼️」

女はしゃくりあげながら、何度も俺を拝み倒さんばかりに頭を下げる。


およそ三ヶ月後、彼女は「失踪」し、「身元不明人」として処理された。

「彼女」の新しい住所に生活?

簡単だ。


俺が「ストック」している「戸籍」に、彼女の「性別」と「年齢」に合致した物を落とし込めばいいだけの話。

そう複雑でも、難しくもない。


「彼女」はこれからどうなるのか?

さして興味はない。


まあ、「自由」だな。


興味はないとは言ったが、そこはビジネス。

彼女はどうにかその後、事務職の仕事を見つけた。

給料は地方にしてはそこそこだと言う事。


その中から、毎月3万円を俺に支払う事。

・・・少なすぎる?


月に3万、年間36万。

20年なら720万。


彼女はまだ20代だ。

「飛んだ」なら「飛んだ」で、それ相応の報いを受けて貰う。

「結婚」?


好きにしたらいい。

毎月決まった分の支払をしてくれるなら、俺から干渉する事は一切ない。

こんな「商品」が何人いるのか?


「ご想像にお任せします。」


「信じるも信じないも、貴方次第です。」


そんな感じかな。


そもそも、「これ」は只の副業に過ぎない。

それに、「俺自身」は到って真っ当な社会人だ。


最近、「小説家」って奴の裾野が広がったのか、レベルが下がったのか、ジャンルが増えたのかは分からないが・・・そんな業界の端っこより、やや真ん中寄りに「俺」はいる。


「ベストセラー」は到底無理だが、潜入ルポライターとしてはいい稼ぎはしている部類だろう。


「そういう雑誌」や、「ちょっとヤバめな世界に触れたい、「所謂」マイルドヤンキー」なんかもいいカモになる。

多分全てが複合しているんだろう。

それが「時代」だと言ってしまえば、それまでだが。


一仕事を終えた「俺」は事務所の入っているビルの屋上に上がり、空を見上げる。


「ふう・・」


今夜は半月。

「50&50」

奇妙なバランスだ。


見上げた空は、まるで半月が割ってしまったかの様に、ある境目で「明るい」と「暗い」にクッキリと分かれていた。


ただ、間違いなく確実に、「現実的に」その境界線は存在する。

その「隙間」で生きている「人間」も存在する。


・・・俺の様にか?


「ハーフ&ハーフ 」

ピッツァなら、そう言われるだろう。


丸い月が半分に分かれている。

遠目から見る俺には、「それ」は寸分の狂いもなく見える。

幾ら目を凝らしたとしても、それ以外には見えない。



「・・けど、何にせよ隙間はある。」

そう呟く。

「人は、自分が見たいと欲する現実しか見ない」


「裏側」が存在しないのなら、届かないのなら、それでも必ず「隙間」や「境界線」は存在していて、「そこ」に蠢く生き物も必ず存在するのだから。


月が嗤う。


月を嗤う。


半分こだ。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ