第9話 ばあちゃんの家
「ばあちゃん、いるー?」
「はいはい〜。すぅくん、お帰り。」
オレを、昔から『すぅくん』と呼ぶばあちゃん。
ちょっと略しすぎな気もするけど、まあ、いいか。
「リンゴ、届いてるか?」
「ああ、山程届いてるよ。」
「宅急便の人が、トラックからどんどん運んできたから、ばあちゃん、ビックリしたよ。」
――そう。
契約したリンゴの送り先を、ばあちゃんの家にしたんだ。
なんせ、魔族には住所なんて存在しない。
だから、送り先は一か所しか思いつかなかった。
それは――
オレのばあちゃんの家だ。
オレのばあちゃんは、
人間、なんだ。
知っているのは、ごく一部の幹部だけ。
昔、東京タワーを破壊したじいちゃんが、逃げ遅れたばあちゃんを助けた。
その時、じいちゃんが一目惚れしたらしい。
「すぅくん、魔族の幹部になったんだって?」
「出世するのはめでたいけど、無理はしちゃいかんよ。」
ばあちゃんにとって、オレはいつまでも、かわいい孫のようだ。
「わかってるって。」
ちょっと照れくさくなったところに、父さんがやってきた。
「ただいま、母さん。」
「ここは、いつからリンゴ屋敷になったんだ??」
玄関から、ズラリと並んだリンゴの箱の隙間から、父さんが顔を出した。
「実はさ……、」
オレは、果樹園の出来事を、父さんに話した。
「ストラウス、やるじゃないか!」
「攻撃しないところが、お前らしいな。」
父さんは、オレの世界征服への愚痴をよく聞いてくれていた。
そんなオレを、叱るでもなく、受け入れてくれる父さんは、器がデカい。
「父さん、このリンゴ、アジトに瞬間移動させてくれよ」
「この量、運ぶの大変だから。」
「それで、母さんの家に、リンゴを送ったのか。考えたな。」
「いいぞ。魔王様、きっとお喜びになるぞ」
上位魔族の父さんは、物質の瞬間移動が使えた。
父さんに果樹園に行ってもらうより、近くのばあちゃん家のほうが、経費削減になる。
――父が瞬間移動の魔術をかけると、あっと言う間にリンゴの山はなくなった。
ちゃっかり、1ケースを残して。
「すぅくん、アップルパイを焼くから、食べていきなよ」
ばあちゃんが、笑顔で言った。
やった。ばあちゃんのアップルパイ、絶品なんだよな。
「もちろん、食べていくっ!!」




