第5話 もしかして、天才。
(やばい……。実は、何も考えていない。)
期待に満ちた目で、オレを見るエド。
何かヒントはないかと、果樹園を見渡すと、木の根元に、うずくまっている人間がいた。
「エド。まずは、敵の状況から知らないとな。」
「あの人間に話かけてみよう。」
「そうなのか?……まあ、情報収集は基本だしな。ストラウス、おまえに任せたぞ。」
オレは、気さくな感じで、人間に話しかけた。
「こんにちは。」
「美味しそうなリンゴですね!」
顔を上げた人間は、なんだか苦しそうだった。
「あぁ、ありがとうな……。」
「今から、収穫しようとしたのだが、ぎっくり腰になってしまって。」
「どうにも動けなくて、困っていたんだよ」
――ぎっくり腰か。
昔、じいちゃんも腰を痛めて、辛そうにしていたっけ。
目の前の人間と、じいちゃんが重なり、思わず、オレは言っていた。
「リンゴの収穫、オレたちでやりますよ」
「えっ!いいのかい?」
「なんだって!?」
びっくりする人間とエド。
「はい。任せてください。」
「できるだけ早く収穫を終わらせます。」
「おぉ、それはありがたい。じゃあ、お願いするよ。」
とりあえず、動けない人間を、おんぶして家まで運んだ。
よし、これで収穫に集中できるぞ。
果樹園に帰ってくると、口をモグモグさせているエドがいた。
「エド……。りんご、食べたのか?」
「い、いや、これは味見だぞ?」
「魔王様に献上するのに、ふさわしいリンゴか、確かめていたんだ!」
言い訳っぽいけど、まあいいか……。
「それより……、なんで収穫を引き受けてるんだよ。」
「収穫して、持ってかえればいいだろう?そうすれば、怪しまれずに、タダでリンゴ、手にはいるぞ」
「なるほどな。人間の目を欺くのだなっ!」
「ストラウス、お前、天才か!?」
「これで魔王様も、リンゴ食べ放題だな!」
よしよし。
エドも、納得したな。
オレたちは、リンゴを食べながら、魔力が最大限に使える、夜になるのを待った。




