第32回 逃げられない
「いや、オレは遠慮しておく」
オレは、即座に断った。
「え――、なんで?いいじゃん、乗ろうよ」
「魔族は、乗り物に乗らないんだ」
「そんなこと言って。じゃあ、何でここにいるの?」
オレは、うっと言葉に詰まった。
――世界征服のための視察、なんて言えるはずがない。
「あっ。すぅくん、怖いんだ?」
葉月が、嬉しそうに笑った。
「い、いや、そ、そうじゃなくて……」
「大丈夫だよ!人間が乗れるんだし!魔族なら、平気じゃない??」
こらこら、大きな声で『魔族』とか言うなよ!
「いや、これは、ちょっと、難しいな……」
「わかった!初心者向けのにしよう!それならいいよね?」
初心者向けか。それなら、いけるかもな……?
少し、心が動いた。
「……一回だけ、だぞ?」
「やった――!!いこいこっ!!」
めちゃくちゃ嬉しそうな葉月。
押しに負けて、とうとうオレまでマシーンに乗ることになってしまった。
葉月に連れてこられたのは、
『バイキング』
という乗り物だった。
……え。
これ、本当に初心者向きなのか!?
「これなら、回転しないから、大丈夫だよっ!」
……うーん。
回転しないと、何が大丈夫なんだろう?
他の乗り物と変わらず、絶叫が聞こえてくるぞ?
仕方なく並ぶと、ついに番が来てしまった。
「楽しみだね――!」
葉月は、元気に言うけど、オレは気が気でない。
席に座ると、体を固定するレバーが降りてきた。
……これは、逃げられない。
冷たい汗が、背中を伝った。




