第25話 葉月の杖
それからは、葉月と、普通に話すことができた。
「お兄ちゃんの熱、ようやく下がりました。」
「あの時はありがとうございました。これ、お返しします。」
あの時、お兄さんの頭に乗せたタオルを取り出した。
「洗濯もしましたので、綺麗になっていると思います。本当に、助かりました。」
オレは、タオルを受け取った。
「あと……、よかったら、魔族のみなさんでお召し上がりください。」
大きな紙袋を差し出す葉月。
「ありがとうな。」
受け取ると、ずっしりと、重みを感じた。
いったい、どれだけ入っているんだ!?
袋をのぞき込むと、『東京ばな奈』
と書いてあった。
ばなな?
バナナが、こんなに小さい箱に入っているのか??
人間の考えることは、イマイチわからない。
気を取り直して、葉月に向き直った。
「お兄さん、熱が下がってよかったな」
「まあ、あまり、魔族の前に現れるのは、嬉しくないけどな。」
そう、二人は、勇者と勇者(見習い)なんだ。
本来なら、オレたちは仲良くなれない関係なんだ。
……まあ、これから顔を合わせることもないだろうし、いいか。
心の中で、自分を納得させる。
そういえば……、
「葉月、気になったんだけど、お前の使っている杖、重いし大きいし、合ってないんじゃないか?」
葉月が、重そうに持っていたのを思いだした。
「あの杖は……、お父さんの形見で……。」
「お兄ちゃんは、もう自分の杖を持っていたから、私が使うことになったんです。」
なるほど、それでサイズがあってないのか。
「大切な杖なのはわかったけど、自分に合ったのに変えたほうがよくないか?」
「たぶん、杖が合ってないから、狙いが定まらないんだよ。」
「……ストラウスさんの言う通りです。先生からも、指摘されていました。」
「でも、私、意地になってしまって。」
「……今回のことで、反省しました。山を崩していたら、天国のお父さんに怒られてしまいます。」
そうか。杖を変える気になったなら良かった。
「まあ、オレと戦うことにならないといいけど。修行、頑張れよ。」
「はいっ!」
葉月が気持ちのよい返事をした。
うん。元気なほうが、この子らしいな。
―――
「葉月ちゃん、また、遊びに来てね〜」
ばあちゃんが、出てきて手を振る。
すっかり、葉月が気に入ったようだった。
「はい。また、来ますね!!エドさんにも、よろしくお伝えください。さようなら、みなさん」
って、また来るのか!?
すっかり元気になった葉月は、夕日の中を帰っていった。




