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第22話 魔族だけど、ありがとう。


「また、厄介なのが来たな……」


「そうだなあ。」


二人でウンザリしていると、勇者が、震える声で叫んだ。


「よくも……っ、よくも葉月をこんな目に!」

「お前たち、許さないっ!!」


いや、違う。


違うけど、これは完全に人攫いの図だった。


どうしたら、誤解を解いてもらえるんだ?


そのうちに、


「とや――!!」


勇者が、こちらに突っ込んできた。



かけ声、葉月にそっくりだな。

でも、葉月より、うんとスピードが速い。


さすが、勇者だ。


勇者見習いとは、一味ちがう。


オレたちは、避ける準備をした。


その時。


「ゴホッ、ゴホッ!」


苦しげに咳をして、勇者が座りこんだ。


「お、お兄ちゃん!?」


いつの間に目を覚ましたのか、葉月の声がした。


「って、なんでおんぶしてるのよ!」


「離しなさいっ!!」


とたんに、背中でジタバタし始めた。


「わかったわかった、暴れるな」


葉月を下ろすと、勇者に駆けよっていった。


「お兄ちゃん、寝てなきゃだめだよ。」

「どうしてここに?」


「葉月、おまえが心配で……。」

「魔族に、変なことされなかったか?」


「うん。とりあえず、大丈夫みたい。」


そうだろう。オレたちは、何も悪いことをしていない。


ゴホッ、ゴホッ。


勇者は、そうとう具合が悪いのか、動けなくなってしまったようだ。


……まったく、世話の焼ける人間たちだ。


勇者の様子を見ようと近づくと、


「お兄ちゃんに触らないで!」


葉月に通せんぼをされた。


「お前……、早く手当てしないと危ないぞ。」


「早く、救急車というものを呼べよ。」


一瞬、ぽかん、とした表情になった葉月。


「救急車だよ」


もう一度言うと、ようやく理解できたようで、


「あ、はい!」


急いで電話を取り出した。


葉月が電話をしている間に、勇者を見る。


頭に手を当てると、とても熱く感じた。


「熱いな……」


「エド、冷却の魔術、つかえるか?」


「できるぞ。ちょっと待ってろ」


オレは、持っていたタオルをエドに渡した。


そのタオルに、冷却魔術をかける。

いい感じに、冷えたタオルになった。


それを、勇者の頭に乗せてやった。


電話をかけ終わった葉月が、こちらに来た。


「あ、あの……。」


「さっきは……ありがとうございました。」


「助けてもらったのに、勘違いしてごめんなさい。」


よかった。少しは誤解がとけたようだな。


「ま、まあ、誤解がとければいいんだ」


「じゃあ、オレたちは帰るな」


人が集まってくると厄介だ。


素早く帰ろうとすると、葉月に服を引っ張られた。


「よかったら、お名前を教えてもらえませんか?」


「できれば、連絡先も……。」


「あらためて、お礼がしたいので。」


名前はいいけど、電話はもっていない。


仕方ないから、ばあちゃん家の電話番号を教えておいた。


「エドさま、シュトラウスさま、ありがとうございました!」


「ストラウスな。」


最後まで締まらない、勇者見習いを残して、オレたちは、足早に湖を後にした。





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