第16話 マオーの湯
「エド、次は露天風呂にいくか?」
「よし、行こう!」
オレとエドは、毎日のように温泉に通っていた。
オレは、密かに『サウナ』で整うことを目標にしている。
でも、毎回5分も持たなかった。
サウナにずっと入っている人間たちは、どうなっているんだ?
なにか、特殊な能力でもあるのだろうか?
いずれ、人間に聞いてみたい。
他の魔族たちも、任務の帰りに寄っていたりするようだ。
最近の、魔族のアジトは、石鹸の良い香りが漂っている。
――みんな、すっかり温泉のとりこだな。
オレたちが大勢訪れるので、
『急にお客が増えた温泉』
と口コミで話題になり、人間たちも大勢押しかけるようになった。
駅から温泉までの寂れていたお店も、活気を取り戻していた。
名物の『温泉たまご』という物を、初めて食べたが、なかなか美味しかった。
「ありがとうございます、ストラウス様、エド様。」
「あなたたちは、この温泉の救世主です!!」
オレたちと、契約を交わした支配人が、頬を緩ませている。
「感謝の気持ちを込めて、新しい温泉を、『マオーの湯』にすることに決めました。」
「これは、この温泉を占拠したことにならないか?」
エドが小声で言った。
「そうだな。もう、この温泉街は、魔族の物になったも同然だな。」
魔王様も、いつの間にか温泉の常連になっていた。
温泉に来た人間や、労働者が、魔王様に声をかけていく。
「魔王様、今日もゆっくりしていってくださいね。」
「魔王様、湯加減はいかがでしょうか?」
「ああ、とてもいいぞ。」
なんだか、すっかり人間たちになじんでいるようだった。
こうして、魔王様を敬う人間が増えていけば、平和に世界征服が叶いそうだ。
オレたちは、瓶に入った牛乳を一気に飲み干した。
瓶に入っていると、美味しく感じるのは、なんでだろう?
――さて、身体もほぐれたし、次の任務に行くとするか。
「次は、ここだな……。」
地図を広げると、魔王様に司令された、『湖』を目指すことにした。




