第15話 温泉大好き
「魔族様、どうでしたか、温泉は?」
「いや、最高だな!」
「温泉って、気持ちいいんだなあ。」
オレたちは、温泉を絶賛した。
「ご満足いただけて、何よりです。」
「今は、見てのとおり、寂れてしまった温泉街ですが、魔族様のおかげで、新しくお湯がでました。」
「これで、また温泉を新しく作れます。」
そうか、エドが、地面に穴を開けたから、お湯が出たんだっけ。
……あれっ、今回のオレたちの任務はなんだった?
たしか、『記号を調査して、占領せよ』だったような……。
このままでは、新しい温泉ができて、人間が得するだけじゃないか!?
オレは、頭を素早く回転させた。
「……オレたちは、魔王様のご命令により、この地の調査に来た。」
「あまり、驚かせたくはないが、任務は、この地を占領せよ、なんだ。」
「え、そうなんですか!!」
人間が、驚きの声を上げた。
「そうだ。……ただ、ここの『温泉』は、なかなか気に入った。」
「オレは、壊すのは惜しいと思う。」
「なんとか、魔王様に掛け合ってみたいのだが、掛け合うに値するものを差し出すことはできるか?」
「……そうでしたか……。」
人間は、しばらく考えていた。
「ここを破壊されては、元も子もありませんね……。」
「では、魔族様は、温泉入り放題にさせていただくのはいかがでしょうか?」
「なにっ、温泉入り放題?」
エドがすぐに反応した。
「はい。今ある施設と、これから作る施設を、入り放題にさせていただきます。」
「ストラウス、温泉に何度も入れるんだって。こんなにいいことはないぞ!」
エドはすっかり温泉のファンになってしまったようだ。
「それは、なかなか良い話だな……。だが、もう一声、ほしいな。」
オレは、ばあちゃんの家で見た、
『テレビショッピング』の真似をした。
「うーん、わかりました!」
「ここは、頑張らせていただきましょう!」
「今回に限り、温泉の後の飲み物も、飲み放題でおつけします!」
「ぜひ、魔族の皆様のご静養の場として、ご利用ください。いかがでしょうか?」
オレは、思わず、
「買います!」
と言いそうになった。
「温泉、魔王様にも、入っていただきたいな。」
エドが隣で頷いた。
「そうだな。魔族のみんなにも、日ごろの疲れを癒やしてほしいな。」
オレたちの意見は、まとまった。
「わかりました。今回、こちらを占領するのは、見送ることにします。」
「ありがとうございます!!」
「ぜひ、これからも、温泉をお楽しみください。
私共、魔族様が見つけてくださったお湯で、この温泉街を必ず復興させてみせます。」
「賑わいを取り戻すのを、見ていてくださいね!」
人間が、決意を語った。
街の復興か……。
やっぱり、占領とは違う気がするな。
まあ、新しくなった温泉に浸かれば、疲れがとれて、世界征服が進むかもしれない。
――これも、世界征服への第一歩だ。
「次は、いつ来ようかな?」
なんだかんだで、エドと同じく、オレも温泉にはまってしまったようだった。




