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私の家に戻ると、由梨さんは今までの自分の話をしてくれた。
小さい頃から、その容姿のせいで、辛い思いをすることが多かったこと。
そんな由梨さんを助けてくれたのが、幼なじみの太一郎さんだったこと。
大切な人達を病気で亡くすたびに太一郎さんに支えられたこと。
その太一郎さんと幸せな日々も、事故によって失われてしまったこと。
私は由梨さんが一通り話し終わるまで、ずっと彼女の話を隣で聞いていた。
全てを話し終えた由梨さんは
「長い話を最後まで聞いてくれてありがとう。
…もう、お姉ちゃん以外の誰かに自分のことを話すことはないんだろうって思ってた。…でも、円香ちゃんには話したいって思ったんだ。ありがとうね。」
そう言って悲しそうに微笑んでいた。
私は由梨さんの隣から前に移動して、話し始めた。
「話してくれてありがとうございます。由梨さんが私に話そうって思ってくれたことがまず嬉しいです。何より…生きていてくれてありがとうございます。」
私が由梨さんの目をまっすぐ見ながら伝えると、由梨さんの目にはあっという間に涙が溜まり、ぽろぽろと涙が流れ出した。
「由梨さんに出会えて、友達になれて、私は本当に嬉しいです。私の前では...いくらでも泣いて大丈夫です。」
私がそう言うと、由梨さんは声を上げて泣き始めた。私は泣いている由梨さんを抱きしめた。ふと壁に掛けてある時計をみると、深夜0時を回っていた。
しばらく泣き続けた由梨さんが落ち着いたタイミングで私は口を開いた。
「由梨さん、今から私が言う話を聞いて欲しいです。あくまで私の持論ですけど。何言ってるんだコイツって思うかもしれないんですけど。」
そう言うと由梨さんは少し不思議そうな目で私を見た。
「私の実家って、代々地主なんです。不動産とか株もたくさん持っていて、いわゆる資産家ってやつです。だけど、両親はいたって質素に生活していまして、豪邸に住んでいるわけでもなく、豪遊するわけでもなく、パっと見てお金持ちとは見えない生活をしています。そんな両親に育てられたので、私も贅沢せずに生活していると思います。スライムの材料とか、ジグソーパズルとか、羊毛フェルトの材料とか買うくらいで…ジブリのBlu-rayセットは、けっこう高かったですけど。
…決してお金持ち自慢をしているわけではないんですが、そう聞こえたらすみません。ただ、そういう環境で生活をしてきて思っていることが1つあるんです。お金があるという状態は、心に余裕を生みます。仕事で、例えば、人間関係とかで嫌なことがあっても、辞めても生きていけるので。もちろんお金さえあればいいって話ではないですよ。お金のためにだけ生きるのって虚しいと思うので。…お金って何か辛いことがあっても、自分を生き長らえさせてくれるものだと思うんです。
だから、自分がもし、死んでしまったときのために、由梨さんの手元にここまでお金が残るように考えて行動していた太一郎さんって、本当に由梨さんのことが大切で、心配で….愛してたんだなって思うんです。太一郎さんは由梨さんが今まで、人から注目を浴びて辛い思いをしてきたことを知っていたから、自分が側にいられなくなったときに、由梨さんが生活のために働いて、たくさんの人と接して、傷つかずに済むように、由梨さんを守るために、動いていたんだなって思うんです。」
私の話を聞いた由梨さんは、そのまま少し黙っていたが、口を開いた。
「…タイちゃんが死んで、お金だけがたくさん手元にあるのが、虚しいって思ってた。そのお金のおかげで生活はできるけど…お金じゃタイちゃんの代わりにならない。お金なんかいらないから…生きていて欲しかったって。
…でも、由梨ちゃんの話を聞いて、確かにそうだなって思った…。タイちゃん私のこと、心配して….。大事にしてくれてたんだなって。
…愛してくれてたんだなって…。そう思っていいんだよね?」
そう言いながら、由梨さんはまた泣き始めた。私は由梨さんの手を握った。
「はい。絶対にそうです。由梨さんが…これ以上辛い思いをしないようにって考えてたんだと思います。これは…ものすごい愛ですよ。」
私がそう言うと、由梨さんは泣きながら少し笑った。
「ありがとう。円香ちゃん。やっぱり、円香ちゃんは…タイちゃんに似てる。」
そう言われて私は目を丸くしてしまった。
「…私、身長157cm、生粋の帰宅部運動音痴ですが、身長180cm、中学生柔道部全国大会優勝経験ありの柔道有段者と似てますか?え?ゴリラっぽいですか?」
私がふざけて言うと、
「違う違う、見た目じゃなくって。」由梨さんはそう言って笑った。
「円香ちゃんは、タイちゃんと、考え方が似てるんだと思う…。今日、ナンパしてきた人達、撃退してくれたでしょ?昔、同級生に付きまとわれたとき、同じ感じのことを言いながら、タイちゃんが私を助けてくれたから、びっくりしちゃった。」
由梨さんに言われて、少し納得した。
「なるほど。それなら分かりました。…ていうか、今さらですけど、幼なじみで、いつもピンチを救ってくれて、一途に自分を思ってくれる人なんて、漫画以外でも存在するんですね。めちゃくちゃ素敵じゃないですか?
…あの、由梨さんがよかったら、タイちゃんさんの馴れそめとか、恋バナ聞きたいです。」
私が上目遣いでおそるおそる聞くと、由梨さんはいたずらっぽい笑顔を見せてくれた。
「ものすごいノロケ話になっちゃうけど、いいかな?」




