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日中は30度以上あったが、日が陰ると、涼しい風が吹き、過ごしやすい気温になっていた。そのおかげで、お祭りは、多くの人々で賑わっていた。神社の周囲200mほどの道路に出店が出ており、私と由梨さんは端から端まで見て歩くことにした。
「すごい、人ですねー。気になったものを買って、近くの公園のベンチで食べましょう。お祭り感を感じながら。」
私が由梨さんに言うと、
「賛成です。気になる物が、多すぎてもう既に迷ってます。」
そう答えて、2人で出店を1軒ずつ吟味した。
「やっぱり焼きそばは食べたいですよね。たこ焼きも良いなぁ。」
「こっちのたこ焼きイイダコ入ってる。美味しそう。」
「え、ピーチ味あるなら、かき氷食べたい。」
「焼き鳥かー、ソース味ばっかりだと飽きるからあった方が良いかもしれないですね」
「さすがに炭水化物ばっかり食べすぎかな。」
「あの綿あめ虹色ですよ!すごい!」
2人でああだこうだ言いながら、迷った挙げ句、もう一往復して、焼きそば、たこ焼き、かき氷を買い、人混みを避けて、近くの公園の空いているベンチに移動した。
「では、いただきます。」
溶け始めてるかき氷を1口食べる。人混みの中を歩き、汗だくになった身体に冷たさが染みる。
「おいしい!桃味だ!ネクターみたいな味がする。由梨さんのどうですか?」
由梨さんはシャインマスカット味のかき氷を食べていた。
「…シャインマスカットかどうかは分からないけど、おいしいブドウ味です。」
買いすぎたかもしれないと思ったが、焼きそばもたこ焼きも想像以上に美味しくて、あっという間に完食した。
「美味しかったー。たこ焼き、普通のタコよりイイダコの方が美味しい気がしました。」
「分かります。旨み成分が強いのかな?どんどん食べられました。」
「屋台の焼きそば好きなんですよねー。家じゃ出せない味。鉄板だと火力が違うんですかね?」
「それはある気がする。やっぱり料理って火力で味変わりますから。」
「自分で作った方が安いとか言う人もいますけど、私はやっぱり、お祭りの雰囲気を味わって食べるの込みで好きなんですよね。
由梨さん、お祭り楽しめました?」
私が聞くと、
「楽しめました。また行きたい。小さい頃の綿あめ以来の思い出ができました。あの虹色の綿あめも余裕があったら買いたかったなー。」
楽しそうに話す由梨さんを見て私も嬉しくなった。
「今度、別のお祭りもありますし、また一緒に行きましょう。また派手な柄のワンピース貸しますよ。あのベネチアの仮面も。」
「…お祭りはまた行きたいけど、仮面はいいかな。」
そう言って由梨さんは笑った。
家に帰ろうとしたタイミングで、どうしてもトイレに行きたくなり、私は由梨さんに待ってもらって、公園のトイレに向かった。
トイレから出て手を洗い終わると、複数人の男性の話し声が聞こえた。トイレから出て見てみると、予想は的中しており、由梨さんが3人組の男達に絡まれていた。私は例の物を準備して由梨さんの元に向かった。
円香ちゃんをベンチに座って待っているとこちらに向かってくる人影が見えた。嫌な予感がした。街灯に照らし出されたのは若い3人組の男性だった。どうやら酔っているようだった。
「お姉さん、すごいキレイですね。一人ですか?良かったら俺たちと呑みましょうよ。」
今日は平和に過ごしたかったのに、そうはいかないらしい。私はお祭りで浮かれていた表情を無表情に戻した。
「すみません。友達と帰るところなんで。ごめんなさい。」
そう答えたが、男達はニヤニヤと笑ったまま、引き下がらなかった。
「え、じゃあその友達も一緒に呑みましょうよ。」
「男女一緒に呑んだ方が盛り上がって楽しいですって。」
「本当に大丈夫です。今から帰るので。」
円香ちゃんとの楽しいお祭りの思い出が台無しになる気がして、私は立ち上がって、円香ちゃんのいるトイレに向かおうとした。
すると茶髪の男に手を掴まれた。
「お姉さん、キレイなのに表情暗いー。せっかくの美人が台無しですよ。」
掴む力が強く、振りほどけない。
「離してください。」
私はそう言って男を睨んだが、男は笑ったまま私の腕を離さなかった。
「離しませーん。そんな怖い顔しないでくださいよー。お姉さん美人なんだから笑ってくださいって。」
私が美人だから何だっていうのだ。私が望まないことをなんでこんな人たちに強要されないといけないのか。私は一体いつまでこんな目に遭わなければいけないのか。
「お待たせしましたー。えーっと、あなたたち何してるんですか?」
円香ちゃんが、トイレから帰ってきた。
「あれ?お姉さんのお友達?可愛いですねー。」
「俺たちと一緒に呑みましょうよ。せっかくだったら、男女混ざって呑んだ楽しんだ方が絶対楽しいですって。女だけだと寂しいし。」
円香ちゃんは、男達の言葉を一通り聞いた後、薄笑いを浮かべて、口を開いた。
「まず、あなた方は、誰かを飲みに誘うとき、相手が嫌がっていても、しつこく誘うんですか?嫌がってる相手の腕を無理矢理掴んで離さないんですか?男女混ざった方が楽しいって考えるのは自由です。でも、女だけでいるのも、一人でいるのも自由です。あなた方がどう考えようが構いませんが、そう思っていない相手に、自分たちの考えを強要するのはおかしいとは思いませんか?しかも、力づくで。
あと、大したことないと思ってるかもしれませんが、腕を掴んで離さないのは暴行罪ですよ。ちなみに、さっきからのやり取り全部このGoProで動画撮ってます。」
円香ちゃんのショルダーバッグからGoProが顔を出していた。
「あ、撮った動画は自動でクラウドに入るので今このGoPro奪っても無駄ですよ?あと、一番左のお兄さんの社員証胸ポケットから見えてます。山川さん?お勤めの会社に「御社の山川さんとそのお仲間が、私の友達に暴行罪相当の行為をしてますが、御社の社員教育はどうなってるんでしょう?」って問い合わせてみます?
...今すぐ彼女の腕を離してここからすぐ立ち去るなら、穏便に済ませることも考えましょう。どうします?」
スラスラと円香ちゃんが話した内容を聞いて、彼らも酔いが覚めたらしく、その場を早歩きで立ち去っていった。
私は由梨さんの元に駆け寄った。
「大丈夫ですか?怖かったですよね?腕掴むとか本当ありえない。気持ち悪い。赤くなってるかもしれません。とりあえず家に帰りましょうか。」
そう言って由梨さんの顔を見ると、大粒の涙を流していた。
「痛かったですか?病院行きます?あいつら許さない。やっぱり会社に問い合わせてやろう。」
私は驚いたと同時に、由梨さんを泣かせた男達に猛烈に腹が立った。
「違うんです...。やっぱり、似てる…。円香ちゃんありがとう。」
由梨さんは泣きながら、私をみて微笑んでいた。
「...円香ちゃん。長くなっちゃうけど、私の話聞いてくれるかな?」




