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私は、タイちゃんに頼りすぎなのではないか。自分と一緒に居るせいで、タイちゃんに迷惑を掛けているのではないかと、思い悩むようになっていた。悶々と悩む日々が続くなか、新たな1つ悩み事ができてしまった。席替えで隣の席になった浜川君によく話しかけられるようになったのだ。彼はノリが良く明るい人だったが、デリカシーがなく、距離感も近かったので、私は苦手だった。休み時間のたびに彼が話しかけてくるので、なるべく教室の外に出るようにしていたが、それにも限界があり、どうしても会話しなければいけない状況になることも多かった。
「森野さん、部活やらないの?」
「私、運動音痴だから。迷惑掛けられないし。」
他愛もない質問が多かったが、人と話すのが苦手な私は、話しかけないでオーラを常に出していた。しかし、浜川君はめげずに話しかけてきた。
「え?じゃあ文化部は?色々あるでしょ?」
無視するわけにもいかないので、答えられる範囲で答えていると、ある日、タイちゃんのことを質問された。
「森野さんっていつから田辺さんと付き合ってるの?どっちから告白したの?」
今まで誰からも聞かれたことがないことを質問され、私はそのまま黙りこんだ。私がなんて答えるか、周りのクラスメートが聞き耳を立てているのが分かった。
「教えてよ。恋バナしようよ。」
浜川君はニヤニヤしながらこっちを見ていた。私は一呼吸置いて答えた。
「ごめん。自分だけじゃなくて、相手にも関わることだから、そういう話はしたくない。」
私なりに、これ以上話しかけないでという願いを込めて、彼の目をじっと見た。浜川君はつまらなそうに口をすぼませていた。
「だって、森野さんから、田辺さんのこと好きだーみたいな雰囲気感じないんだもん。本当に付き合ってるのかなって。なんか姫と護衛みたい。」
そう言われて、思わずドキッとした。直後にチャイムが鳴って、先生が教室に入ってきたので、会話は終わった。
その日の放課後、私はタイちゃんと一緒に帰りながら、浜川君の発言を思い出して、どこか上の空だった。そんな私の様子を見た、タイちゃんは心配そうに話しかけてきた。
「由梨、何かあった?元気ないけど。」
そう言って私を見つめるタイちゃんの目はいつも通り優しい。
「心配かけてごめん。大丈夫だから。それより、私のために、登下校一緒にしてて大丈夫?もっと…柔道の練習したいんじゃない?」
「それは本当に大丈夫。練習しすぎも怪我の元だし。由梨のことも心配だし。俺のことは気にしないでいいから。」
目の前のタイちゃんが優しい言葉を掛けてくれるのに、考えすぎて素直に受け取れず、私の心は沈んでしまっていた。
家に帰っても、ソファーに座り、頭の中でぐるぐると考えていて、気付いたら30分以上経っていた。
「ただいまー。」
帰ってきたお姉ちゃんは、ソファーに座って暗い顔をしている私を見て驚いた。
「由梨、この世の終わりみたいな顔してるよ。どうした?」
さすがに心配なのか、話しかけてくれた。私はゆっくりと自分の胸の内を話した。
「なんか…このままじゃ、良くないのかなって考えちゃって…。タイちゃんに彼氏のフリをしてもらってるの…。私に付き合わなきゃいけないせいで、タイちゃんの時間を奪ってる気がするし。…お姉ちゃんが言ってた通り、タイちゃんのことが好きな子がいて、もしタイちゃんがその子のことを好きになっても、私のせいで付き合ったりできないだろうし…。私が、タイちゃんの負担になってるんじゃないかって…。頼りすぎかなって…。私、タイちゃんに迷惑掛けたくないのに…。」
ネガティブなことばかり頭に思い浮かび、話しながら私は泣きそうになった。お姉ちゃんは私のそんな姿を見て、小さくため息をついたあと、いつもと違って優しく話しかけてくれた。
「由梨はどうしたいの?」
「え?」
「いや、聞き方を変える。もし、本当に、太一郎のことを好きって言う人が現れたらどうするの?「太一郎君を私に譲ってください」って言われて、由梨は譲るの?」
頭の中に、タイちゃんとの思い出が浮かんできた。いつも私のことを優先してくれて、優しくて、タイちゃんの前では自分を偽らずにいられた。そんなタイちゃんが私以外の誰かに同じくらい優しくするのは…絶対に嫌だ。
「嫌だ。タイちゃんが誰かの彼氏になるの、すごい嫌だ。」
口に出すと、思いが溢れた。涙も止まらなかった。そんな私をみて、お姉ちゃんは私の隣に座った。
「由梨、他の誰かに渡したくないって思うのはさ、好きだからなんじゃない?」
そう言ってお姉ちゃんは私の背中をさすった。
「そっか…。私、タイちゃんのこと好きなんだ。」
自覚すると、顔が赤くなるのを止められなかった。そんな私の姿を見てお姉ちゃんは優しく笑った。
「やっと、気付いたね。見てるこっちがもどかしかったわー。太一郎が他の女子と喋ってるところを見たときなんて、すごい顔してたよ。あれで、嫉妬してないと言い切るのは無理があるでしょってくらい。」
お姉ちゃんにそう言われ、恥ずかしさで思わず顔を伏せた。
「まぁ、良かったよ。ちゃんと自覚できて。」
お姉ちゃんはそう言うとソファーから立って、冷蔵庫の麦茶を取り出した。
「見てるこっちがもどかしいから、さっさと付き合っちゃいなさい。」
そう言ってから麦茶を飲み始めた。
私は、自分の気持ちを自覚すると同時に、この思いが成就するのか不安になった。
「…タイちゃん、私のことどう思ってるのかな。ずっと兄弟みたいに育ってきたわけだし。私のことを…なんていうか…妹みたいな感覚で、見守らなきゃって思って、責任感で彼氏のフリをしてる可能性もあるだろうし…。」
私がそう言うとお姉ちゃんはうんざりした表情になった。
「あのねえ、いくら妹みたいに思ってるからって、ここまで献身的に行動すると思う?…まあ、本人に直接聞くのが一番だから。どうせ明日も一緒に登校するんでしょ?そのときに言ってみれば?「私はタイちゃんのことが好きだけど、タイちゃんは私のことをどう思っていますか?」とか」
お姉ちゃんに自分の声を真似しながら言われ、その台詞を自分が言っている姿を思い浮かべるだけで、耳まで赤くなった。
「…恥ずかしくてできる気がしない…。」私はそのまま頭を抱えた。




