#7 日彦神社へ 後編
「清楚にして可憐、うるわしき乙女かな!」
美月さん目がけて、飛びついてくる何か。
「きゃあ!」
美月さんの身体に金色の蛇が巻きついた。ベースの部分は白蛇なのだが、所々に金箔のような金色の鱗が生えている。あまりの身のこなしの早さに俺は驚愕した。
「おお……女体の柔らかさよ!」
金蛇が、美月さんの胸に頭を擦り寄せる。
「んっ……! やめてください……!」
「何だこいつ! 美月さんから離れろこの化け物!」
俺は前に飛び出すと、右手から神力を撃つべく構えた。
「驚いたな。お前、神力使いか?」
そいつはそれだけ言うと、美月さんの体から飛び降りた。そして驚くべきことに、俺の姿に化身した。
「夏輝くんが……二人?」
「この色情妖怪が! 勝手に人の姿になるな!」
俺は叫び、右手を前方に差し出すと神力をそいつ目がけて撃った。すると奴が不敵に笑い、姿を消した。
「後ろががら空きだ」
背後から声がしたかと思うと、手刀が肩に振り下ろされ、鈍い痛みが走った。
「ぐっ!」
「あやかしや悪霊は、だいたい背中や首の後ろから入り込む。後ろを守るのは、『常識』だぞ」
見下したかのような物言いに頭に血が上って来るのを抑えながら、バックステップで下がり、距離を取った。背後に回られないように注意しながら、もう一度神力を放つ。すると奴が、涼しい顔で神力を俺めがけて撃ち返してきた。放った神力が、奴の神力に相殺されて消滅する。
「それにしても、まだまだ神力を使いこなせていない印象。オレなら、お前の持っている能力を、はるかに上手く活用できるのにな。何ならお前と代わってやってもいいぞ」
「何っ……!」
驚く間もなく、そいつは不敵に笑うと空に向かって二発目の神力を放った。
上空から俺めがけて渦巻きながら落ちてくる、その螺旋の波形は芸術的なまでに美しい。慌てて態勢を立て直し、指先から神力を放つ。しかし、奴の大渦のような神力に比べると、ボリュームと勢いが足りない。認めたくはないが、奴と俺との間には圧倒的な力量の差がある。
──まずい。やられる。
奴の神力がまさに俺を飲み込まんとしたその瞬間、つづらが悲鳴を上げた。




