#7 日彦神社へ 前編
なるべく人目につかないルートを選んでガーデンモールを脱出する。
「暑いっ……!」
ガーデンモールを出ると、灼熱の陽光と熱風が俺達を容赦なく襲い、美月さんが小さな悲鳴を上げた。
「異常気象が続いているんだ。さっきいたガーデンモールの庭園は温度管理されていたけど、一歩外に出ると灼熱地獄なんだ」
「常世の人たちは大丈夫なの?」
街角にいくつも設置された大型ディスプレイには、ニュース映像が立体的に投影されている。
【●●県で震度四】今後の情報に注意】
【記録的干ばつで水力発電に影響】
【水源をめぐり住民同士のトラブル】
「常世では、災害がこんなに頻繫に?」
焼きつけるアスファルトの道を歩きながら美月さんが俺に訊いた。
「ああ。地震や干ばつはしょっちゅうだ。近隣諸国とも水資源の奪い合いが起きてて、近く戦争になるんじゃないかって噂も流れてる」
「……常世は、私が思っていた理想郷じゃなかったんだ」
「ごめん。君をがっかりさせたくなくて、本当のことが言えなかったんだ」
「だったら! 早く日彦様に会って、どうにかしていただかなくちゃ」
ショックを受けている様子の美月さんに、肩の上のつづらが言った。
「ボクは前回、日彦様にお会いできなかった。神殿に閉じこもったまま出てこられなくて」
「初めて会った時、つづらが日彦神社にいたのは、日彦命に会うためだったのか」
ややあって、住宅街の向こう側に鎮守の森が見えてきた。あの神社の大鳥居まで、あと少しだ。俺達は黄昏時のアスファルトを急いで走った。
⛩⛩⛩
住宅街の中にひとかたまりの鎮守の森があり、赤い大鳥居がそびえている。小さい頃からよく足を運び──そして、つづらや美月さんとの縁を結んだはじまりの社でもある。鳥居の隣には、『日彦神社』と彫られた大きな石が鎮座している。
懐かしい気持ちを抱きながら鳥居をくぐると、そこには荒涼とした風景が広がっていた。境内には立入禁止のロープが張られ、工事用のカラーコーンが境内のあちこちに置かれている。年初めの大雪で折れたままの桜の木が何本も放置され、砂利の隙間からは雑草が伸びていた。手入れの行き届いた月姫神社との落差を感じる。美月さんが悲しげに周囲を見回した。
「信仰する人がほとんどいなくなって、日彦様の力をほとんど感じない」
ふと、背後から不穏な気配を感じた。




