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#7 死闘 前編


 悪王子の涼やかな美しい瞳が、黄金色の蛇の目に変わった。ざわざわ、ざわざわと青い狩衣姿の全身が揺れたかと思うと、人から大蛇の姿へと変化する。


「おい巴、やばいんじゃないのか。ラスボスじゃあるまいし、最終形態になるなんて聞いてないんだけど!」


 えーと、と目を宙に泳がせる巴。


「トモエ。神雷を五回耐えれば大丈夫って言ってなかったかい?」

「いやーつづら様。完全に僕の計算ミスです。悪王子さまが荒魂に戻られた時の事までは考えてなくて」


 巴が頭を掻いた。あともう少しで雨も降りそうなのに、ここへ来ていきなりの戦局不利とは参った。


 ついに、悪王子神が和魂である美青年の姿から、荒魂の大蛇へと化身してしまった。三メートル程度の高さから、大蛇が鎌首をもたげ、金色に輝く瞳で俺と巴を見下ろしている。その全身から放つ殺気の凄まじさに寒気が止まらない。アコーディオンのようにくねる長い体をその場に残したまま、その平たく巨大な頭部が音もなく平行移動して、俺と巴に狙いを定める。まるで、頭部と体がそれぞれ別々に意思を持っているかのような不気味さを感じる。


「いかん。二人とも下がるんじゃ!」


 宿禰さんの声に我に返った俺と巴が、後ろに飛びすさった。その着地の瞬間を狙って、驚くほどのスピードで大蛇の頭部が飛んで来る。大きく開いた口中には、二本の鋭い牙が光る。俺は反射的に右手を出し、青白く輝く神力を撃つ。


──効かない。


 愕然がくぜんとした。普段からつづらの神力に頼り切ってしまっている俺には適切な対処が思い浮かばない。


「ナツキ、逃げて!」


 つづらが悲鳴のような叫びを上げた。悪王子神の頭部が、信じられないほどのスピードで俺めがけて飛んで来る。


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