#10 姫巫女の決意 後編
⛩⛩⛩
俺たちはその日から朧の親になった。
月姫神社の裏山に狐穴を掘り、美月さんと交代で毎日油揚げを運び、ボールを投げたり、追いかけっこをしたりして遊ぶ。懐いてくれると可愛いもので、心が癒される。それに、朧のふわふわの毛に身をゆだねると眠ってしまいそうなくらい気持ちいい。まだ子狐だが、そのうち他の野狐たちのように言葉も覚えるだろう。
あとはあやかし嫌いの宿禰さんにどうやって打ち明けるかが問題なのだが。
⛩⛩⛩
桃井教授の特集が掲載された雑誌『日本民俗考』が刊行されたのは、それから一か月後のことだった。発刊に併せて、美月さんの写真記事が地元の新聞に掲載された。
⛩⛩⛩
『伝統を守れ 月姫神社の巫女神信仰』
「鳳凰高校二年生の蓬莱美月さん(十六歳)は、学校に通う傍ら、古くから地元に息づく巫女神信仰の担い手『月姫さん』として、地元の氏子たちとともに神事を継承している。巫女神楽『月日舞』や、五穀豊穣や縁結びを祈る『十五夜様』をはじめとした民間神事は、月姫神社独自のもので全国的にも希少性が高い。このたび刊行された雑誌『日本民俗考』の特集、桜桃大学・桃井一郎教授による『日本の土着信仰』は、月姫神社の巫女神信仰の他、各地に根差した土着の信仰について民俗学的な観点から人々の祈りの力の根源を紐解いている」
⛩⛩⛩
休み時間、俺たちは図書室で美月さんの出ている新聞記事を閲覧していた。
「信仰を守り継承する存在だって。美月ちゃんかっこいい! 舞の写真もすごく綺麗だよ」
「琴梨ちゃんありがとう。ちょっと恥ずかしかったけど、氏子さんを増やす一助になればと思って頑張ったよ」
「瀬戸っちも美月と一緒に取材受ければ良かったのにねぇ」
「いや俺はいい……お前らにネタにされるから……」
般若と話していた時、図書室のテーブルをバンと叩く音がした。幽浅魂美だ。
「何でみんな蓬莱さんに注目するの。蓬莱さんのどこがいいの? みんなが部活や学校行事を頑張ってるときに、神事を理由に断る協調性ゼロの人よ。家が神社だからって特別扱いされるなんておかしいわよ」




