#8 狐狸妖怪(こりようかい) 前編
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野狐と化狸の花嫁行列が、並んで峠を歩いてゆく。俺達の真後ろでは、野狐と化狸の長老が歩きながら話していた。
「それにしても、お互い今日が雛菊の谷への嫁入りの日だったとは奇遇ですな」
「まさかあの百鬼夜行が狸さん達だったとは。いや全く派手に化けたものですな」
「最近魔物が出ると聞いて、あえて強いものに化けてやり過ごそうと思ったのですが、狐さん達が巫女神様のご一行を仲間に引き入れているとは思いもよりませんでした。まさか妖力が衰えて化ける力を失ったのでは?」
「いえいえ。我々は、百鬼夜行どころか出雲へ向かう神々に化けるくらいの余力はありますからな」
「ほう。しかし、神々一行に化けた所で、狐さんの所は小さな山神様の社でのこぢんまりとした結婚式」
「いえいえ。狸さんの所こそ住職が一晩で逃げ出す化け物寺での挙式でしょう」
「寺は少々古いが、高級漆器の膳を使い、贅を尽くした宴会を予定しております」
「私どもも結婚式こそ簡素ですが、高級螺鈿細工の嫁入り道具をあつらえましてな」
俺たち三人は顔を見合わせた。
「見栄の張り合いが凄いな……」
これが狐と狸の化かしあいかといささか呆れている俺たちをよそに、長老たちが懐かしそうに笑っている。
「それにしても懐かしいですな。二十年前は争いが絶えなかった」
「桜餅は関東風の長命寺か関西風の道明寺かで揉め……粉物はお好み焼きかもんじゃ焼きかで争い……雑煮に入れるのは丸餅か角餅かで口論を……とにかく野狐と化狸は全てにおいて反りが合わなかった……」
「あははっ、そんな事で揉めてたのかぁ」
巴が乾いた声で笑う。
「くだらない……」
「狐さんも狸さんも仲良くしようよ。たまたま同じ日に同じ村で結婚式をするご縁があったから、協力して化け猫を鎮めることもできた。だからこの先も、きっと仲良くできると思うの」




