#7 護れ、姫巫女の願い 後編
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大きな金色の目玉が六つ、暗闇の中で光っている。体長を予想するに、約二メートルか。
「六つ目の化け物かな?」
「ううん、化け猫が三匹。狐と狸が戦っている間に、隙ができるのを狙ってるみたい」
美月さんが言い終えないうちに、化け猫が俺にとびかかる。手に持っていた提灯をぶち当てると、赤子の泣くような不気味な鳴き声を響き渡らせて、化け猫がひるんだ。俺は叫んだ。
「狐も狸も聞いてくれ。化け猫が三匹、隙を見てあんた達を襲おうと漁夫の利を狙ってる。奴らの弱点は火だ。狐たちは狐火で応援を頼む。狸たちは腹鼓で化け物の妖力を削いでくれ」
「化け猫なら辻に追い込め。死者を呼ばれると厄介だ。それから嫁入り道具の中に杓文字はないか。三本要る」
巴が叫ぶと、狐と狸が嫁入り道具の中から杓文字を投げてよこした。受け取った杓文字を、巴が俺と美月さんに一本ずつ渡す。
「杓文字なんか何に使うんだ?」
「化け猫の魂を安定させ、供養するための呪具だ。化け猫を三つ辻に追い込んだタイミングで杓文字を地面に突き立てろ」
狸たちが一斉に腹鼓を打ち、音を逃れようとした化け猫達が暴れたところへ、狐が一斉に赤い狐火の集中砲火を浴びせる。化け猫が二メートルぐらいはあろうかと思われる巨大な尾を振り回すのを、全員で大縄跳びの要領でジャンプして回避するが、化け猫なので尾が二本あるのと、なにせ風圧がすごい。
「娘よ。その極上の霊魂をよこせ!」
爪を立てた化け猫が美月さんに飛びかかり、花嫁の綿帽子が宙を舞った。
「こん!」
美月さんを護ろうと朧が赤い狐火を吐いたところへ、俺も紋付袴姿のまま高く飛び上がると、朧の狐火に神力を同調させて、火力を上げた。
「フギャアッ!」
「こんな所で負けてたまるか!」
「今だ。杓文字を立てろ」
巴が叫んだ。ちょうど化け猫三匹が三つ辻の真ん中に集結したタイミングで、俺達三人は辻を形成している三本の道の上の地面に、それぞれ杓文字をさかさまに突き立てた。地面が真昼のように光り輝くと、化け猫達の妖力が消失し、その姿が雲散霧消していった。
「終わった……」
「ちょっと待って。悲鳴が聞こえる」
美月さんが指さした辻の脇には、土砂で埋まった大きな石が転がっていた。石像には、着物姿の男女二体の神が寄り添う姿が彫られていた。
「この一帯に魔物が入り込まないように建てられていた道祖神の像が山崩れで倒れたんだ。それで化け猫達がこの辺りに入り込んだのだろう」
巴の話によると、この神様は夫婦で仲良くこの辻を護っているらしい。俺達は道祖神の石像を抱えて運び、元の位置に収めた。




