#6 百鬼夜行との遭遇 後編
一同に緊張が走り、俺も身構えた。
「東海の神──名は阿明、西海の神──名は祝良、南海の神──名は巨乗、北海の神──名は禹強、四海の大神、百鬼を退け、凶災を蕩う。急々如律令」
巴が神言を唱えると、俺たちの姿が透き通って闇に同化した。
百鬼夜行というからには、おどろおどろしいものを予想していたのだが、三つ辻の向こうから歩いて来たものたちは、奇妙でとても賑やかだった。
地面を這う黒い塊、旗を持って駆け抜けていく小鬼、飛翔する五色の化鳥、着物姿の琵琶と琴の化け物、鉄漿を塗った大口の女官──数多の有象無象たちだ。めでたそうな楽曲を奏でながら、何がおかしいのかゲラゲラと陽気に笑いながら歩いてゆく。俺たちは歩みを止めて息を殺し、百鬼夜行が通り過ぎるのをじっと待った。すれ違いざま、百鬼夜行が動きを止める。
「闇の中に何かいるぞ。鼓を打て!」
小鬼が叫ぶと、化け物たちが「イヨォーッ!」と歌舞伎囃子のような掛け声を発して、一斉に鼓を打った。鼓の音とともにダイレクトに響く衝撃、体の中を流れる神力のバランスが崩される。巻き起こる風が、俺たちを覆い隠していた闇の帳を取り払うと、化け物たちがざわめいた。
「まさか狐の花嫁行列が隠れていたとは!」
「いや、狐の嫁入りを装った魔物かもしれん。本当に夫婦かお前ら?」
疑いの目を向けられた美月さんが俺にしがみつき、俺は恥ずかしさのあまり硬直した。
「私達結婚するの!」
「お……俺達はこれから二人で幸せになるんだ!」
「祝言を上げるのにこんな幸薄そうな花婿がいるか。こいつは偽物だ!」
「……不幸!」
悲しいかな、猿芝居は即座に見破られた。百鬼夜行が鼓による音波攻撃を仕掛けてくる。巴が呪符を飛ばして戦い始めた。狐たちが狐火を吐いて、巴を援護する。
「新月!」
美月さんがあやかしと同調する新月の力で百鬼夜行達を魅了しようとしたが、化け物が鼓を叩いた瞬間、また体の中で神力の流れがおかしくなった。
「どうしよう。新月の力が効かない……あっ!」
長い爪を立てて美月さんに小鬼がとびかかる。




