#4 蓬莱山の天女の罪は 後編
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「はぁ……」
夕食後、俺は自室でつづらと一緒に布団に転がっていた。美月さんの苦しみを少しでも楽にしてあげたいと思いつつも、俺は俺で苦しかった。己の心を強く保つため、起き上がって圏外状態のスマホを取り出した。この現世でスマホは使えないが、充電はできるのでたまにアルバムや辞書アプリを開くことがある。
液晶画面には、中学の修学旅行の時にグループで撮った白川ゆりあの写真が映っている。こんなに可愛い子が俺を好きだと言ってくれているのに、美月さんのことを思うと胸が締めつけられる。
「キミはそもそもフラれてるから、もうその子に義理立てする必要はないと思うんだよね」
突然のつづらの言葉に動揺し、手から滑り落としかけたスマホを慌てて空中で受け止めた。
「俺、美月さんのことが好きなのかな。彼女って危なっかしいし、損得考えないお人好しだし。でも、優しくていつも自然体で、こんな情けない俺を頼ってくれて。美月さんが笑っているだけで俺の心が幸せなんだよ」
「でもミヅキを選んだらイバラの道だよ。キミは現世に残り、ミヅキが巫女神を降りるまで何の保証もないままにただ待ち続けることになる。桃井教授の言ったような『検証』がないまま、巫女神の掟を無視してミヅキと結婚すれば、月姫様の依巫がいなくなり、神力も失われる。そうなると、月姫神社の地下に封じている厄介な魑魅魍魎が暴れ出す。農作物の出来にも影響が出て氏子にも迷惑がかかる」
「今よりも不幸になるというのか」
「一番つらいのはキミだ。最終的にはキミが自分の心をどう整理して、折り合いをつけるかって話だよ」
「今ならまだ間に合う。意識しないようにしないと」
痛い頭を抱えていた時、窓の外から物音がした。障子戸を少し開けると、巫女装束姿の美月さんが庭を出ていくのが見えた。美月さんが連れているのは、大きな白狐の朧だ。
「こんな夜中に朧を連れてどこへ行くつもりだろう。まさか思いあまって……」
「朧は野狐だ。いくら新月の力で味方につけたとは言え、あやかしだ。いつ人を騙す地狐に変化するとも限らない。気をつけるんだナツキ」
つづらの言葉に、俺は慌てて美月さんを追った。




