#2 月のネックレス 前編
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放課後の帰り道、俺達は並んでのどかな田んぼのあぜ道を歩いていた。
「不幸……まさかサッカーボールぶつけられた挙句に陰陽術まで食らうとは。身代わり人形かよ俺は」
「体育の時間に何があったの?」
美月さんが首をかしげる後ろで、親子の鴨がのんびりと水田を泳いでいく。
「夏輝がやらしい目で女子を見てて、サッカーボールをぶつけられたのさ。嫌だねぇ、好色な出歯亀は」
「夏輝くん最低……」
胸の前に手を固く置いて、美月さんが醒めた目で俺を見つつ後ずさりした。
「違うわっ! このホラ吹き陰陽師が!」
「あははまた明日―!」
地蔵堂の前で一喝すると、巴がけらけら笑いながら手を振って帰っていった。
「今日はおじいちゃんが社務所に詰めてくれているから、ゆっくりできて嬉しい
な。夏輝くんも毎日家事ばかりで大変でしょ? 帰ったらちゃんと休んでね」
風になびく髪を押さえながらつづらを抱いて微笑む美月さんを、俺は意を決して誘う。
「こ、この後って時間ある? もし良かったら、ちょっと寄りたい所があるんだけど!」
美月さんの目が驚きで丸くなった。
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アンティーク調の鏡の前に、華やかな髪留めやリボン、指輪にネックレス類が所狭しと並んでいる。店内は若い女性でひしめいていた。
「わぁ……あれもこれも綺麗。夏輝くん、よくこんな素敵なお店を知ってたね」
『浪漫屋』と書かれたお店の看板が少し地味なので表通りからは目立ちにくいが、先日通りがかった時にアクセサリーショップがオープンしていたのを俺は見逃していなかった。
「俺も綺麗なものを見るのは好きな方だし。それに、気分を変えたい時はオシャレするに限るって言うし」
「さすがは常世人!」
「いや常世人は関係ないでしょ」
美月さんに尊敬の眼差しで見つめられ、俺は頭を掻きながら白川ゆりあの事を思い出していた。
あれは中三の秋のことだった。夕日の差し込む放課後の教室で、俺とゆりあの他、何人かの生徒が帰り支度をしていた。教室の前の方では女子数名がたむろして、スマホを片手に世間話をしていた。
「髪切らない方が良かったんじゃない? そもそもゆりあは整形顔だしさぁ」
本人にあからさまに聞こえるような悪口が俺の胸をえぐった。ちょうどゆりあが長かった髪をばっさり切ってショートボブにしてから急にあか抜けたと評判になっていた頃だったが、明るくて人気者のゆりあを良く思っていない層も一部いた。羨ましさと妬みから出た言葉だからまともに取り合う必要はないと誰が見ても思う状況だったが、ゆりあは悪意をまともに受け止めてショックを受けている様子だった。いつもなら事態が悪化するのが怖くて行動できない俺だが、その時は泣き出しそうな顔で黙って立ち去ろうとするゆりあを見過ごすことができなかった。同じ小学校出身だったというのもあるかも知れない。
「……せ、整形じゃない! 元々かわいいよ」




