カタコンベ
クロウとフィオは昼過ぎまで宿で過ごし宿を出て街の中央にあるコロシアムより少し離れた場所を歩いていた。
「ライエールさん!! 戻ってきてたんですか!?」
クロウが見ると後ろからこの街の冒険者ギルドで受付嬢をやっているプワレが走ってやってきた。
「それなら一声、私にかけてくれてもいいのに」
フィオはプワレを見てため息を付き明らかに嫌そうな顔をした。
「ああ、すまない」
クロウは話を合わせ適当にプワレをあしらう。
「お茶でも、ご一緒に」
プワレはクロウの手を両手で握り取り言う。
「悪いが、今は忙しいんだ」
フィオがプワレの手を解きクロウの手を取って引っ張った。
プワレは頬を膨らませフィオを睨んだ。
「別に誘われただけだ、普通に断ればいいだろ」
クロウがそうフィオに言うと今度はフィオがクロウを見る。
「忘れたのか? あのイカれた受付嬢、私達の泊まってる宿を特定して3階まで外からよじ登ろうとしてたやつだぞ」
フィオは鼻息荒くそう言った。
「別に問題ないだろ、あの子の実力じゃあ俺達は殺せやしない。
それに、明らかに素人だ」
「そう言う問題じゃ無くてだな」
二人は魔道具店の前に来て話し始めた。
「全くお前はそういう事に関しては本当に鈍いな」
「そうか? 確かに分からないが、分からないなりに理解しているつもりだ」
クロウはそう言い終えるとある視線に気づいた。
どこからか2人…見られてる? 気のせいかも知れないが…。
「中に入るぞ」
「おい…話がまだ」
クロウはそれを無視し中に入る。
中に入るなりクロウは烏の紋様が入った金貨を店の男に見せる。
店の主人は金貨を見てうなずき店の奥にある部屋の扉を開けた。
扉が開くとすぐさま、その中にフィオを入れ、自分も入る。
扉が閉まると同時に話し声が聞こえた。
「お客さん困るよ、うちはペットの持ち込みは禁止なんだ」
店主の話し声だ。
「あっあの、黒ずくめの方を見ませんでしたか?」
この声はユリスの声だ。
どうやら視線の正体は彼女だったらしい。
クロウはそれが分かるとそのまま階段を下っていった。
「どうかしたか?」
フィオが不思議そうにクロウを見ている。
「いや…何でもない」
クロウはそう少し笑って言った。
「そうか」
階段を降りるとそこは大きな洞窟の様な場所に出た。
パンテーロ地下都市、カタコンベ。
それは王都全域に広がるほど広大な地下通路。
幅は広く、明かりが灯され端には店が開かれ、酒場やレストランが広がっている。
その奥には武器や魔法書、魔道具、錬金物、屋などが並んでいる。
どれもこれも、通常では出回らない品が多く質がいい。
ここにいる人達は皆クロウと同じ同業者、暗殺を担う人達。
カタコンベはあまりに広いため、あまり奥に進むと道に迷い一生出られなくなる可能性がある。
魔物はレッドキャップ、コボルト、ゴースト、スケルトンが徘徊しているため、管理されていない場所は危険だ。
クロウは歩き途中に酒を買い、ある場所に来た。
壁に掘られた教会が見える。
クロウはその中に入り一人の女性に話しかけようとした。
「キャロライナ…」
その名を読んだ瞬間、発砲音と共に銃弾がクロウの横を過ぎ、壁に当たった。
「神は品切れ中だよ〜」
そこには金髪の修道女の格好をした女性が酒瓶を片手に椅子にもたれかかり、足を神父などがよく立っている場所にある台、主祭壇の上で足を組んでいる。
そしてもう片手に拳銃を持ち、クロウ達にむけていた。
「あいにく、神に頼みに来たんじゃない。
お前にようがあってきた」
キャロライナはクロウを見て目を細くした。
「なんだ、おめぇか、たく、人の晩酌を邪魔するもんじゃ無いぞ」
クロウは酒を主祭壇に起き見せた。
「おっ、酒か、ちっ安物じゃねえか。
たく、お前レベルならもっといい酒を幾らでも買えるだろうが」
「いらないのか?」
クロウが酒を再び取ろうとするとキャロライナは慌てて酒に飛びついた。
「ばかっ、貰った酒を手放す訳ねーだろ!
分かったよ、話を聞けばいいんだろ?」
クロウはようやくキャロライナが銃をしまったので話し始めた。
「俺の依頼主を調べてほしい」
その言葉にキャロライナは眉をひそめた。
「あ? なんだそりゃあ、お前は個人の依頼をわざわざ受ける、たまじゃねえだろ?」
クロウは指名の依頼が入った事をキャロライナに話した。
「そいつは、興味深い…ふむ」
キャロライナは少し考えると顔を上げてクロウを見た。
「ちと…危険な予感がするが…いいだろ。
調べといてやる」
「早めで頼む、あと5日以内でだ」
キャロライナはそれに笑った。
「いや、明日こい。
その目立つ情報なら、それだけあれば十分だ」
「あと、これなんだが」
クロウはそう言いヘレナから銃を見せた。
「魔弾を作る為の鍛冶場を貸してほしい」
「魔弾…?
まあ、なんか知らねえが貸してやる、それで頼み事は終わりか?」
「ああ」
そう言いクロウは5枚程の金貨をキャロライナの目の前に置いた。
「フィオ、行くぞ」
そうしてクロウ達はその教会を後にした。
…
「フィオ、お前はもう帰れ」
「ふざけんな、私はお前と一緒にいる。
嫌なら力ずくでやるんだな」
クロウはキャロライナから借りた一つの鍛冶場で魔弾の作成に励んでいた。
そんな中もう夜なのでフィオに帰れと言ったのだが、頑なにそれに従わず椅子の上でクロウと燃える炎を遠くで見ながらウトウトと船を漕いでいる。
「旦那、手伝いやしょうか?」
キャロライナの所の部下が話しかけてくる。
カタコンベのここら一帯は彼女が占めていおり、キャロライナの手書きを見ると素直に鍛冶場を貸してくれた。
「いや、これは魔力を込めながらやらないと意味がない。
君はもう寝ていてくれ」
その後一夜、悪魔バラムの力を借りたり思考錯誤をして数十発もの魔弾を手に入れる事に成功した。




