依頼
王都市 パンテーロにつくとクロウとフィオは都市を歩き宿へと向かっていた。
もう闘技大会も近いため、人がかなり多くなっている。
しばらく歩くと、ドンッとクロウに子供がぶつかってきた。
クロウが連絡手段にしている一つ。
子供はぶつかったと周りに見せクロウのポッケに紙を入れ、金貨を一枚交換する。
何事もなかったかの様に振る舞い少年は謝りながらこの場を走って去っていく。
「情報か?」
フィオが今の光景を見終えてからそうクロウに聞く。
「どうやら、そうらしい」
クロウは宿に一部屋、借りて入るなりその紙を開いて見た。
依頼
例の組織とパンテーロに住む貴族が癒着していると言う情報が入った、これを調査し報告せよ。
密会は、舞踏会が行われている日、王城の西塔最上階、資料室で行われるとの事。
クロウはそれを見終わると指から炎を出し燃やすと暖炉に投げ入れた。
「仕事だ、それも重要なものらしい」
「指名か!」
クロウは手を仮面の顎に当て床を見た。
「最近やたら指名が多いな」
依頼主は匿名の為、分からないが自分達をよほど信用においているらしい。
「騎士国と言いマーレと言い、次はここか…」
文字の書き方からして恐らく同一人物……内容が大きい依頼ばかり。
麻薬のルート調査に今回の貴族の話。
騎士国については話を蹴った為よく分からないが、騎士国のアーサー王政の復興する為の協力、普通の依頼じゃない。
そもそも個人からの指名など滅多にあるものでは無い。
普段なら、指名でも、大抵は今いる組織から依頼される危険因子の抹殺だ。
まあ、もっともそれを普通と言うのであればだが…。
危険因子…人や団体、街、国を脅かしかねない存在。
錬金術の研究、禁忌とされる魔術、あとは名のある殺人鬼、危険な魔物、異常現象と多岐にわたる。
それらはブラックリスト化され、名も無い組織、よく影や烏、裏のギルドなどと言われている団体…ギルドのような組織がそれを管理している。
世界を裏から支える世界的組織。
冒険者ギルドが表で出来ないような汚れ仕事をこちらが請け負う。
そうして世界は何事も無いかのように平和な生活をいつも道理の生活をおくる。
黒き影の姫…黒姫それがクロウ・ビトリークの二つ名だった。
…
夜、クロウは赤い指輪を見ていた。
ふと気づくとそうしている自分がいる。
赤い宝石…月の光を浴びた宝石は美しく、キラキラと美しく輝く。
…
「あのー。
あなたがクロウさんですか?」
酒場の中、椅子に座るクロウとセシルのもとに若い女性が現れた。
「貴方が、協力者ですか?」
セシルがそう聞く。
セシルは横に座るクロウと同じく女性で緑の髪をしエルフの耳を持っていた。
「はい、私がイリヤ・ルークスです。
それで…貴方があの…!」
「クロウ・ビトリークだ」
クロウの声は男性の物では無く女性の声だ。
そして今と違いどこか言葉足らずで何処か暗い印象を受ける。
クロウはイリヤに手を差し出され、少し躊躇いながらもそれに応じた。
「貴方と一緒に仕事が出来るなんて光栄です…あの魔族国ベサデロでの戦いでの影の英雄…」
「あまり、その事を言うな…。
あれは、助けたかった大切な人がいたからやった事だ。
僕は…英雄でも何でもない…ただの人殺しだ」
イリヤがクロウの反応に困っているとセシルが腰を上げ席から立つ。
「まあ…そんな事よりもここを移動しましょう。
どこに耳があるか分かりませんので」
クロウ達はその酒場を後にした。
店を出ると太陽が店から出てきた3人を照らしている。
場所はアルシーユ王国のマーレ。
3人は信用できる場所…教会のもとまで向かう。
路地には行き倒れ、や酒に飲まれているやつ、薬をキメている人達が目立つ。
そのマーレは今のマーレと違い荒廃した治安の悪い都市だった。
まだ戦争が終わり片手で簡単に数えられる程しか経過していない。
貧しい都市だ。
戦争で疲弊し、雇いの兵は稼ぎ口を失い暴徒とかす。
戦争のショックで精神的におかしくなってしまうものも多い、そう言った人達は職に手をつけることも出来ず、現実を見ない為に酒に溺れ、薬に手を出す。
そんな人達が病や飢えに苦しみ道端で死んでいく。
最前線とはいえ、これが戦勝国の都市と言うのだから…皮肉な事だ。
教会につくとそこに子供たちはおらず代わりにルアとルナが黒い装束と鎌を装備しクロウ達を待っていた。
ルアとルナは今より若く今のユリスと同じほどだろうか。
「遅いよ、クロウ」
「すまない、少し遅れた」
ルアとルナはクロウの同僚だ。
もっとも今では、ほぼ引退し情報などのサポートに徹し、受付嬢として活動している。
子供たちは戦争が始まるや、避難しそれが終わった、今でも違う都市で暮らしているらしい。
イリヤがルアとルナに挨拶を交わし終えるのを見てセシルが話し始めた。
「それでは始めましょう」
セシルはそう言うと地図を取り出し机に広げた。
「今回の依頼は、魔族の残党であるレジスタンスのテロを起こす計画を阻止する任務です」
そのままセシルは地図の上に指を持っていき指し示す。
「彼らは今現在、ここで野営していると情報があります」
そこは森の中、おまけに小さいが川が通っている。
隠れて野営するのであればもってこいの場所だろう。
「ここで我々は指揮官の首を狙います」
「では、夜襲をかけると言うことですね」
ルナがそう聞く。
「ああ、私達は確実に頭を取り除く事が優先される。
残りは、マーレの兵、そして冒険者ギルドが攻撃を仕掛ける手はずになっている」
「では、それが始まり、混乱する前に始末する必要がありますね。
それにしてもマーレの堕落した兵に発足したばかりの冒険者ギルドに頼って大丈夫です?」
ルアがそう指摘しセシルに問う。
セシルは頷き言った。
「問題ないとは思う。
戦争でも活躍した…今ではS級の冒険者が来るそうだ」
「それって誰なんです?…」
イリヤが首を傾げ聞いた。
「フロワ・バーキンだ」
…
朝…フィオが項垂れ目を覚ます。
フィオがクロウを見るといつもの様に本を読み頬杖をついている。
仮面を部屋の中ぐらい外せば良いのに。
そう思いながらフィオはベットから出て食事を見た。
クロウが部屋に来る食事を受け取り置いたのだろう。
フィオはいつもどおりそれを食べる。
「今日はどうする?」
フィオが食事を取り終えてからそう聞く。
クロウは本をパタリと閉じフィオを見た。
「裏に行く。
少し情報を集めたい」




