アイラ・エトワール
後日この騒ぎはマーレ中に話が行き渡り街中が騒がし話し声で溢れた。
フィオは燃え落ちた倉庫を見ていた。
「全く、やられた」
フィオは瓦礫を蹴り怒りをぶつけ瓦礫を砂埃へと変えた。
「ヘレナさんを、保護しました。
火傷を負ってはいますが気絶しているだけのようです。
現在は孤児院で寝ています」
「地下へと向かった、冒険者達の生存も確認しました」
ルアとルナが到着しフィオに伝えた。
「それで、クロウは?」
「それが…伯爵夫人のバトゥナさんの話では黒ずくめの人に助けれれたそうで。
その後また炎に包まれた邸宅の中に入っていったらしくて…」
フィオは今度は倉庫の壁を拳で叩き付け壁をでかい音と共に打ち壊した。
「あんの、馬鹿。
やばかったら逃げろって言ったのに」
フィオはそう言い倉庫を離れた。
「フィオさんどちらに!?」
「決まってんだろ、クロウを探しにだよ」
フィオが去る倉庫街では全ての倉庫からそしてクローバ邸からはまだ黒い煙が登っていた。
フィオは一人クローバ邸へと向かった。
…
先日、フィオ率いる冒険者達は倉庫の中へと侵入した。
作戦は予定通り行われ地下へと潜入。
昇降機で冒険者達をおろし片っ端から捕まえ出口へとまるで追い込み漁をするかの様に追い立てフィオは力の限り暴れた。
その際に冒険者達は、魔族達の保護。
そして闇市にいる者たちの確保に努めた。
しかし余りにも広い闇市には数多くの人がおり冒険者の数が足りぬ程だ。
中には逆に襲ってくる者もおり冒険者の負傷者も少なくは無い。
ルアとルナ率いる冒険者達も出口を占領そこから逃げ出てくる闇市の者達を捕らえ保護した。
ルアとルナは大きな背に背負えるほどの鎌を武器とし、雇われていた傭兵達を圧倒し殺さずに手首足首に損傷を与え冒険者に捕らえさせて自分達は奥へと進んでいく。
そんな中それは起こった。
爆発音と共に天井の崩落。
フィオは闇市の中、天井を見上げ驚きに表情を見せた。
「なんだ…あれは!?」
天井から落ちたのは天井につくハッチのような扉の部分で闇市に巨大な扉が家を壊し落ちた。
そして最後にフィオの前にそれは姿を表した。
目が緑色に光る蜘蛛の様な何か。
生物なのか足を動かし起き上がる。
ピピピと機械音がしそれは唐突にあたり構わず攻撃を開始した。
背中から火の玉を上空へと撒き散らし街へとそれは降り注いで行く。
「魔法!?」
フィオは上空からまるで雪の様に降る火の玉に目を凝らしたあとあたりを見た。
まだ冒険者達が剣を構え全身鉄でできた魔物に向かい剣を構えている。
「足手まといだ!! 出口まで急いで走れ!!」
フィオはそう言い放つと同時に赤く光る玉がゆっくりと家に着弾した。
次の瞬間とてつもない爆炎と爆風が巻き起こりフィオは顔を腕で守った。
それを始めに次々と爆発していく。
冒険者達は今見ている光景が信じられなかった。
爆風に飛ばされ地面を転がったと思えば先程まであったはずの街が忽然と消え木の端材が鉄の魔物を中心に脇へと押しやられていた。
残るはフィオと鉄の魔物のみ。
フィオは笑い拳を握り鉄の魔物は戦闘態勢に突入し目を赤く光らせフィオに何か太い鉄の筒をフィオに向けた。
マシンガンだ。銃が円上に並び束にされた筒。
先に動いたのは鉄の魔物だった。
フィオに向けマシンガンを放ったのだ。
フィオは飛び道具と察知するや走り出し凄まじいスピードで機体の後ろへと回り込んだ。
「ふざけた、魔物だ!!」
フィオは蜘蛛の魔物の下へと入り込み拳の一撃を見舞う。
その一撃は機体をわずかながら宙に浮かせ金属板を凹ませた。
しかし魔物は着地すると自ら飛び上がりフィオから距離を取った。
「フィオさん!!」
フィオを呼ぶ声がしフィオが見るとルアとルナがフィオの横に挟んで到着したところだった。
「私達も、微力ながら、てをかします」
ルアとルナは鎌をそれぞれ振るい構えた。
「気を付けろよ、あいつ堅い上に重くすばしっこい。
おまけに魔術も使う!」
フィオはそう言い終わると走り出し魔物へと向かっていく。
ルアとルナもまた交互、挟む様にして横に回り込みながら走り出す。
機体はピピピと再び音を出しフィオに向けマシンガンを2台動かし撃った。
フィオはそれよりも早く走り銃弾を避け機体の前で跳躍した。
機体の上空、フィオは拳を構え落ちる様にして再び拳を放った。
機体はズンっと地面に叩きつけられ蜘蛛のような鉄の足からは耐えきれず火花が飛び散った。
ルアとルナはそれを見逃さず鎌を構えそれぞれの方向から足の接続部を狙い振りかざした。
すると見事にそれは切断され6本ある内の前足2つが地面に落ちた。
フィオは自分を狙うマシンガンが魔物の背に乗っている自分を狙うのを見てすかさず飛び退り地面に降りた。
「いいぞ、ルア、ルナ!」
「少し体が鈍ってましたが、ようやく調子が出てきた所です」
ルアはそう言い魔物を見る。
魔物は前足が無くなった事で胴体を引きずりギギギと音を立てながらもフィオ達に向き直った。
「しぶといですね」
ルナはそう言い機体のマシンガン部分を見た。
「姉さん、次はあれを狙いましょう」
「ええルナ、そうしましょう」
二人は顔を見合わせフィオを置いて走りマシンガンを狙った。
「おい! 待て!!」
フィオがそう叫ぶと機体は叫び声なのか高い壊れたような音を発し次々と最初にはなった魔術を行使し始めた。
それは次々先程のように爆破しルアとルナはその爆炎に飲み込まれた。
どうやらフィオの最後の一撃で壊れたらしく動きがガクガクと動き今では火花を様々な箇所から飛び散らせ止まらなくなっている。
「ルア!! ルナ!!」
フィオはすぐさま飛ばされたルアのもとへ行き脇に抱え同じようにルナも回収した。
「たく、久しぶりの癖に格好つけるからだ」
フィオはそうぐちを吐きながら走り機体から離れる。
次々と巻き起こる爆発に耐えられなくなったのか長くこの天井を支えていた金属板が次々と崩壊し施設ごと崩れ始めた。
「逃げるしかねーな」
フィオは昇降機を見たが木の廃材で潰されもう使い物にならなそうだ。
フィオと冒険者は出口へと急ぎ。
洞窟の中を駆けた。
冒険者達はその場にあった馬車や馬を使い洞窟の中を走っている。
「おっせーぞ!」
闇市が存在した場所はやがて瓦礫で見えなくなり徐々に崩落が外へとぬける洞窟でも起気始め天井が落盤していく。
後ろからこちらへと次々に押しつぶすように上から天井の岩が落ちてくる。
しかしそれでも冒険者はフィオの先導、足による瓦礫の粉砕により何とか難を逃れ脱出する事ができた。
…
フィオが向かったクローバ邸、そこでは街の住人達が瓦礫の撤去を始めておりそこにクロウの姿は見えない。
フィオは息を吸い、瓦礫の撤去作業を手伝い始めた。
そのフィオの働きは周りの住人を驚かせた。
片腕で大きな瓦礫を放り集めている場所に投げ込んでいく。
しばらくしてルアが到着し冒険者と共に手伝い始めた。
やがて昼になりルナがヘレナを連れ現れ瓦礫を退かす作業を手伝い始めた。
フィオやルナ、ルア、ヘレナは休憩も取らず作業を続けやがて夕暮れとなり暗くなり始めた頃。
フィオのましたでコーンコーンと言う金属音がこだまし聞こえた。
フィオは目を見開き両手を瓦礫に入れ、かき分けて瓦礫を掘り始めた。
その様子に作業を中断し全員がフィオを見た。
フィオが最後に大きな瓦礫を持ち上げ投げるとそこにクロウが地下への階段でフィオを見上げていた。
「遅いぞ、フィオ」
フィオは何か糸が切れたかのように涙を浮かべクロウに飛びついた。
これはクロウに取って笑い事では無かった。
フィオの力は強くまず階段の一番下まで転げ落ち、フィオの本気の締付けは肋骨を脅かす。
「落ち着け! 体にまた傷が出来るだろ」
フィオは力を緩めてはくれたが離す気は無いらしい。
そんなフィオを見てクロウはゆっくりと話し始めた。
「すまないが離れてくれ、ヘレナに見せなくちゃいけない子がいる」
クロウは冷静な声で低くそう言いフィオの頭をまるで子供のようになで、体から離した。
上からルア、ルナそして、ヘレナが降りてきた。
クロウはヘレナに向いた。
ヘレナは不安そうにクロウの場所までゆっくりと降りてきた。
「ヘレナ、心の準備は良いか?
こっちだ。
他の者達はついてこないでくれ」
クロウはそう言いヘレナの顔を見た。
その後その場にいる3人はヘレナの鳴き声と声を聞いた。
「なんて酷い…」
耳を済ますと泣き崩れる音 独り言のように話しかける優しいヘレナの声が聞こえてくる。
その声は震え途切れ途切れだ。
「ごめんね…母さん、助けてあげられなくてごめんね…」
「痛かったよね…怖かったよね…辛かったよね。
私がもっと警戒してれば、忠告しておけば…しっかりと言ってれば。
気づいてあげられたなら…」
ヘレナの言葉は続き外にいるフィオ、ルア、ルナはその一言一言を噛みしめるように聞き、暗くなった夜空を見上げた。
…
クロウはその後フィオ、ルア、ルナを集めギルドで話し合っていた。
「それで、一応大半は牢屋に入れられたんだな?」
ルアは頷き答える。
「はい、そして魔族の方々の保護も完了しました。
人目につかぬようナバト村へと護送中です」
ルナもそれに続き話し始める。
「食料などはこちらから共に輸送する予定です。
それでなのですが…地下は爆破により崩落、あの場所への道は塞がれました」
フィオは頷き天井を見た。
「街が陥没してない所から見て完全には埋まってないだろうがあの闇市はグチャグチャになってるはずだ。
逃げ遅れた奴含めてな…」
ルアは顔をしかめ続ける。
「そちらの掘削作業は冒険者に動いて貰っていますが、闇市そしてクローバ伯爵と関連付け立証するのは難しいかと…」
クロウはそこまでを聞き終え席を立った。
「引き分け…と言った所か。
向こうは取引出来る大切な拠点を奪われたはずだ。
これで当分は麻薬、イリュジオンの花は出回りづらくはなる筈だ…。
しかし今回、クローバ伯爵と関連付けられ無かったのはかなり痛手だな。
肝心の伯爵も死亡…」
もしかしたら芋づる式に首謀者達、上層部にいる者を一掃、出来たかもしれない。
そう思いながらクロウはギルドの2階から1階の冒険者が行き交う光景を眺めた。
…
後日、フィオとクロウは次の依頼がある為 王都パンテーロへ向かう。
マダム ジョセリーナの幸福亭を出てギルドへと向かう途中。
ギルドではルアとルナが苦渋の表情で地下牢の前に立っていた。
「ここまで、徹底するとは…」
そこには捕らえた商人や傭兵が口から泡を吹き倒れ牢獄の中にいた。
おそらく、朝の食事に毒が混ぜられていたのだろう。
早朝、食事が配られ、時間差で現れる毒。
「冒険者を配置していたはずですが…一体いつ?」
ルナはルアに向きそう聞いた。
「急いで、食料庫にある物、全てを焼き払うしかありませんね」




