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恋逢 〜大金持ちの女性と出逢った話〜  作者: ふかし


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 私たちは情熱的に二週間を過ごした。その時間はあっという間で、アインシュタインの言う相対性理論は正しいと思った。お互いの身体と心を、いくらか知り合えた気がした。


 事を終えた後、あなたはぐっすりと眠った。私は連続してあなたのところに泊まっていたので、服を替えてなかった。夜中、あなたのホテルを出た。着替える為に、自分のホテルへ向かった。


 道路の真ん中に穴が開いていた。それは小さくなかった。前回はドアに不思議な経験をさせてもらった。興味が湧いたので、穴へ近付き、なかを覗いた。暗闇だったが、なかは風が吹いているような音がした。私は引力に引かれた。やっぱりか、と思いながら落ちていった。


 かなり長い時間、落下したが、怪我はなく、痛みもなかった。上を見上げると、星空が丸かった。お経のようなものが聞こえてきた。その言葉の意味は理解出来なかった。けれど、その想念として、この恋はやめておけ、と言われているのだと気付いた。止めようとすると、逆に燃え上がってしまうかもしれないぞ、と心に思うと、お経は小さくなっていった。


 マナカは確かに危険な香りがする。けれど、もう出逢ってしまったんだ、仕方ないんだ、と心に思い描いた。はっきりした声で、「未来はない」と聞こえた。「それでも構わない」と私は返した。本音だったわけではない。未来があるほうが良い。けれど、今はあなたに夢中なんだ、とそれしか思えなかった。


 地面が盛り上がってきた。空の丸が大きくなっていった。私はただじっとそれを眺めていた。地面は地上まで盛り上がり、穴はすっかり埋まった。私は地面に仰向けになった。夜空は綺麗で、その星のどれかひとつを掴んで、あなたにプレゼントしたかった。ネックレスにでもしてくれるだろうか、と妄想してひとりで笑った。


 自分のホテルへ戻り、ベッドへ横になった。着替えて戻っても良かったのだが、今日くらいはあなたをゆっくり寝かせようと思った。目を閉じると、睦み合っているときの、妖艶なあなたの姿が瞼の裏に浮かんだ。あなたの目尻、鎖骨、胸、あばら、私が画家なら、今すぐにでも絵に出来そうだった。ただ残念ながら、私に絵の技能はない。絶望的なほどに。


 あなたはどんな夢を見ているだろう。素敵なものだったらいい。目覚めている世界で、その夢を越えるほどの想いをあなたに届けてみたかった。そういうとき、あなたはどんな顔をするだろう。その目は、その唇は、その心は、と私の頭のなかはあなたで満たされていった。



 朝、起きると、あなたから、「帰ったのね」とメッセージが届いていた。「服がずっと一緒だったからね、いい夢見れた?」と返すと、「私の部屋にあなたの服を置いておくわ、今日は服屋さんに行きましょう、夢は見なかったわ、これから見るの」と書いてくれた。「今日も良い夢が見れるよう、君と向き合うよ、俺の目にずっと映っててくれ」「あら、プロポーズかしら」「どうだろう? 俺の素直な気持ちだ」「今のね」「人間には常に今しかない、過去はもう終わったことだ」「そうね、過去は終わらせないとね」


 私はシャワーを浴びて、香水をつけた。服屋さんに行くということで、試着を考え、脱ぎやすい服にした。あなたを迎えに行った。あなたに逢いに行く道は美しく、昨日の帰り道と同じとは思えなかった。この先で、あなたが待っている、それが私を嬉しくさせた。近くに宝石店でもあれば、昨日、星を捕まえた、とでも言ってあなたにプレゼントをしていただろう。花屋さんも見当たらないので、仕方なしに手ぶらで向かった。


 ホテルの方に、顔を覚えられていたようで、愛想の良い笑顔を向けられた。少し恥ずかしくなったので、私の笑顔は照れていただろう。スイートルームのドアの前で、ブザーを押した。あなたが出迎えてくれた。「逢いたかったわ」と言ってくれたので、強く抱きしめた。

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