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あなたが用意してくれた車に乗せてもらい、大きな街へ出て、デパートへ入った。あなたは何軒ものお店を回り、私に試着させ、いくつもの服を買ってくれた。荷物はあなたのお付きの方が持ってくれた。デパートのレストランへ入り、昼食を摂った。コームーヤーンという、豚の喉肉のグリルが美味しかった。あなたはもう食べ飽きているのか、牛肉のステーキを食べていた。私は飲めないが、赤ワインが美味しそうだった。
喫煙所へ寄ってもらい、加熱式タバコを吸った。食後は一服がしたくなる。あなたはトイレへ行った。化粧を直したようで、唇が色っぽくなっていた。「キスしたいね」と言うと、すぐに唇を奪われた。あなたは情熱的だ。
車へ戻ると、運転手さんがあなたのホテルまで送ってくれた。あなたの部屋に私の服が置かれるのは幸せだった。もちろん、パンツや靴下や靴も買ってくれた。自分のホテルにもう帰らなくてもいいかもしれなかった。あなたとの時間が増えるのは望ましいことだ。離れていると、どうせすぐに逢いたくなってしまう。
「カラオケに行かなくても、ここで歌ってくれてもいいのよ」とあなたが言ってくれたので、スマートフォンのカラオケアプリを使い、歌の練習をした。あなたは飽きもせず、その様子を見守ってくれていた。「あなた、歌手でしょ?」と訊かれた。私は普段、自分のことを言わないのだが、「そうだよ」と認めてしまった。「あなたの仕事を聞いたからには私も言わなきゃね」とあなたは呟いた。
あなたは大金持ちの男性と結婚していたらしかった。夫が若い女と不倫し、そちらと一緒になりたいから別れてくれ、と言われ、とんでもない額の慰謝料を貰ったとのことだった。「だから、私は働いていないの、一生こんな生活が出来るほどのお金があるの、だから、食事代とか、服とか気にしないで」と言ってくれた。私は素直に感謝を伝えた。
「何か凄い仕事をしている女じゃなくて、がっかりした?」「いいや、そんなことは関係ない、君が貧乏になったって俺は構わない」「本当かしら」「ああ、今すぐにお金をドブに捨ててくるといい」「嫌よ、この生活気に入ってるんだから」とあなたは笑った。
「なんか秘密を打ち明けると、楽になっちゃった、まだ言ってないこともあるけど」「待つよ、そのときが来るまで」「言えば、あなたはいなくなる」「そんな大きな秘密なのか?」「ええ、残酷なことよ」「それでも構わない、俺は待つよ」「ねぇ、一生言わないっていうのはどう? 卑怯かしら」「言わなくてもいいよ、俺が離れるのが嫌なんだろ?」「ええ、怖いわ、そんなことを想像するのが」とあなたは目に涙を浮かべた。
あなたを抱き寄せた。「一生、隠したままでも構わない、俺を騙してくれ」「そんなに甘やかさないで、苦しいわ」「苦しんでくれ、俺を騙すなら」「そうね、そうじゃなきゃおかしいわよね」とあなたは声を震わせた。
「ねぇ、抱いて」とあなたが身を預けてきた。私は強く抱きとめた。これまでで一番甘く、そして濃厚に抱いた。あなたは切なそうに喘いだ。いつものような官能にまみれたものではなかった。初めて、あなたという人間の本質を抱いたのかもしれなかった。




