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「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


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76.魅惑の武器


「紅玉か……、もしかしてルーディガー師団長からもらったの?」

 そのとおりなんだけど、何故か正直に答えたらマズい気がする。


「マティルド嬢?」

「ええと、アレです、アレ!」

 わたしは頭をフル回転させて叫んだ。


 なんかよくわからないけど、この指輪はジェラルド様の逆鱗に触れたようだ。

 とすれば……、ジェラルド様に納得していただく理由が必要だ。この指輪を受け取らざるを得ない、そんな理由が。


「これはですね、重要人物を守るための護身用品試作Aです! これを付けていれば、攻撃を受けても自動的に防御魔術が展開されるという優れものなのですが、まだ試作品の段階でして!」

「……護身用品」

 ジェラルド様の目つきがちょっと優しくなった? ような?


「それでっ、この演習でわたしが身をもってこの試作品の性能を確かめ、詳しくレポートすることになりました! この試作品をより使いやすくし、さらなる性能の向上を目指すため、必要な措置であると、そう考えた次第です!」

「……君の安全のため、か。それなら仕方ないな……」

 わたしの渾身のプレゼンに、殿下も納得してくださったようだ。良かった~。


「さっ、参りましょう、ジェラルド様!」

 既に何人かの生徒たちが連れ立って、訓練場の中央にある幻影の森林を目指して進んでいる。

 わたしたちも行きましょう!


「うん、行こう」

 キラキラの王子様スマイルでジェラルド様が応える。本当にひれ伏したくなるくらいの美しさだ。


 連れ立って歩きながら、ジェラルド様がわたしの左手に目を落とした。

「……しかし、そうするとこれはまだ試作品の段階なんだね」

「はい、そうです」

 ルーディガー様本人が「試作品の一つ」と言っていたから間違いない。


「……じゃあ、私は完成品を君に贈るよ」

「え」

「君の身を守ってくれる品なのだろう? それなら、試作品よりも完成品のほうが安心して使えるだろう」

 それはそうだけど。


「ここに嵌める石は、魔石ではなく普通の宝石でもかまわないのかな?」

「あ、ええ。ルーディガー様は紫水晶をお使いです」

 ジェラルド様の目が光った。


「……紫水晶」

 な、なんだかまたジェラルド様の機嫌が悪くなったような? いきなり何故!


 ジェラルド様が真剣な表情で言った。

「マティルド嬢、約束してほしいんだが」

「約束します!」

 即座に叫ぶと、プッとジェラルド様が噴き出した。


「まだ何も言っていないよ。内容を聞きもしないでそんなことを言っていいの?」

「でも、殿下のご要望ですから。わたしにできることでしたら、何でもお応えしたいと思います!」

 ジェラルド様はわたしの未来の主君だしね! しかも誠実で頭が切れて、能力本位で部下を登用してくださる理想の上司だ。

 わたしも出来る限り、主君のご要望にお応えしたいと思います!


「そう……」

 ジェラルド様は苦笑し、わたしをじっと見つめた。


 な、なんだか落ち着かない。

 ジェラルド様はありえないような美形だから、見つめられると申し訳なさに居たたまれなくなってしまう。


 その美しい瞳に、わたしなんかの姿を映してしまってすみません!

 でもジェラルド様レベルの美形なんて、それこそ物語後半に出てくる聖女さまくらいしかいないので仕方ないんです!

 わたしは殿下の剣として一生懸命お仕えいたしますので、どうかそれで許してください!


「これは命令じゃないんだ。私の我がままなんだけど」

 おお? 珍しい、ジェラルド様が我がままをおっしゃるなんて。


 ぎゅっと左手を握られ、ささやくようにジェラルド様が言った。

「これからは、誰に宝飾品を贈られても、受け取らないと約束してくれる? ……今回のように、君の安全に関わることならしかたないけど、それ以外……、例えば舞踏会用の首飾りや耳飾りなどは、私がすべて用意する。だから、私以外の人間からは受け取らないでほしいんだ」

 お願い、と言われ、ドキドキしてしまった。


 ひえー、王子様の人たらしフェロモン炸裂って感じ!

 『ソランの薔薇』でもジェラルド様ご自身の説得により、何人もの貴族が第二王子派から王太子派へ寝返ったくらいだしなあ。


 言葉もなくコクコクと頷くわたしに、ジェラルド様は満足したように微笑んだ。

 ぅおおおお! 後光が差して見えるよ! まぶしい! 主君が美形すぎてツラい!


 気づけばもう目の前に幻影の森がある。このまま少し進めば、王宮騎士団か魔術師団に合流できるだろう。

 幻影の木々は、触るとごつごつとした木肌の感触があるのに、その向こうが透けて見える。なんとも不思議で神秘的な景色だ。


「……そういえば殿下が選んだ武器は、ずいぶん大きいですね」

 わたしはちらりとジェラルド様の手に握られた武器を見た。

「うん、これを実際に使う騎士がいるかどうかはわからないけど、万が一に備えて自分が使い慣れている得物がいいかなと思って」

 爽やかな笑顔でジェラルド様が答える。

 その手には、巨大な戦斧が握られていた。


 ……いや、柄が長いから槍なのか? ハルバードより、バルディッシュと呼ばれる武器に近いかも。横向きに取り付けられた先斧がだいぶ大きいなあ。バランスを取るのが難しそう。


「何?」

 興味津々で殿下の武器を眺めていると、おかしそうに聞かれた。

「マティルド嬢は、宝石より武器に興味があるのかな」

「初めてみる武器なので」

 ジェラルド様がくすっと笑った。


「そうだね、これは扱いが難しい武器だから、あまり流通していないかもしれない。これは三日月斧と呼ばれる武器で、東部でよく使われているんだ。でも、北部は斧より長剣が主流だしね。……それにこれは、君には少し重いんじゃないかな」

「そうですねえ……」

 残念。すっごくカッコいい武器なのに。


「……よかったら後で、この武器を使った型とか見せようか?」

「えっ、いいんですか!? えっ、見たい! 見たいです!」

「じゃあ、今度王宮においで。日程調整をして連絡するよ」

「ありがとうございます!」

 ウキウキしながらお礼を言って、ふと我に返った。


 ……えっ……、王宮?


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