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「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


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63.恋人同士


 馬車が王宮に着いたので、とりあえずわたしは鞄をルーディガー様に返した。

「これは受け取れません」


 ルーディガー様は首をかしげた。

「女性の宝飾品に対するこだわりは強いと聞いたが、本当だな。私ではマティルドの好む宝飾品はわからん。今度、ミレー家のお抱え職人を呼ぶから、好きなものを注文してくれ」

「そういうことではなくてですね」


 マズい。断ったらさらに高価な宝飾品をプレゼントされそうなのは何故!


 門を過ぎ、魔術師の塔を左に迂回して進むと、訓練場が見えてきた。

 参加者なのか見学の貴族なのか、すでに何人か到着しているらしく、厩番が訓練場に併設された厩舎へ馬を引いている。


 馬車から降りると、ルーディガー様がわたしに何かを差し出した。

「とりあえず、これだけは貰ってくれないか」


 中央に紅玉が嵌め込まれた指輪だ。紅玉の大きさが尋常ではない。


「えええ……」

 ドン引きするわたしに、ルーディガー様が熱弁をふるった。

「実は今、ある実験をしているのだ。魔獣の骨や毛皮などに、ほんのわずかだか魔力が残ることは知っていると思うが、それ以外……、例えば草木や石などにも魔力をこめられるか、もっといえば魔道具として使えるかどうか、試していてな」


 魔道具……、魔力やスキルの効果を強める補助的な道具だろうか? いや、その手のアイテムはもうある。ルーディガー様なら、もう一段階進んだ魔道具を考えるはずだ。

『ソランの薔薇』で敵味方双方が買い求めた、ルーディガー様の発明品といえば……。


「もしかして、自動的に魔術を展開できる魔道具ですか?」

「そうだ、よくわかったな。これがその試作品の一つだ。装備した人間が攻撃を受ければ、自動的に防御魔術を展開する仕組みになっている、……はずだ」

 はず、ってところがちょっと怖いんですけど。


「……今日は軍事訓練ですし、効果を試すにはもってこいですね」

「そうだろう!」

 ルーディガー様はウキウキした様子で、わたしに左手を見せた。

「私も同じ魔道具をつけている。実際に使用して効果を確かめたいと思ってな」


 ルーディガー様の左手薬指には、どでかい紫水晶がキラキラと輝く指輪がはめられていた。

「ちゃんとマティルドの瞳と同じ色にしたぞ」

 そういう問題じゃない。


 けど、まあ……、この魔道具って『ソランの薔薇』で大活躍してたよね。聖女さまを暴漢から守ったりもしていたはず。その効果アップの一助となると思えば……。


「わかりました。軍事訓練でこの魔道具を装備して戦い、効果や使用感など詳細なレポートを作成いたします」

「ありがとう、マティルド!」

 ルーディガー様は大喜びでわたしを抱き上げ、くるくる回した。

 テンションが上がるたびに人を抱き上げて回すのは、ルーディガー様の癖なのか!?


 周囲の人達に「何やってんだあいつら」みたいな目で見られた。

 グレース伯母様はスススと後ろに下がって他人のフリをしているし。ひどいよ!


「ちょっと、ルーディガー様! 下ろしてください!」

「すまんすまん」

 ハハハと上機嫌に笑うルーディガー様だが、ふと真顔になった。


「そうだ、求婚だが……、もう少し人が集まってからのほうがいいな」

「そうですねえ……」

 周囲を見回したが、まだコレット様の姿は見当たらない。騎士たちはだいたい集まっているようだけど、貴族の皆様に見てもらわなくちゃいけないからね!


 騎士たちがさっと二手に分かれたと思ったら、サヴィニー伯爵が現れてこちらにやって来た。

「今年はずいぶん早いな、ルーディガー」

 白いマントに銀色に輝く鎧を身に着け、まさに女子の夢見る光の騎士さまって感じ。


「エドガーか。今日はよろしく頼む」

 機嫌よく応えるルーディガー様。

 王宮騎士団と魔術師の塔は仲が悪いけど、この二人はけっこう仲良しなんだよね。


「やあ、マティルド嬢。君も訓練に参加すると聞いて、とても楽しみにしていたんだよ」

「ありがとうございます。ご期待に添えるよう、頑張ります!」

 張り切って答えると、すっとサヴィニー伯爵が顔を寄せた。


「……マティルド嬢、すまなかった」

「え?」

「私が余計な真似をしたせいで、君に不快な思いをさせてしまった。……馬術講師のヘンリーに叱られたよ」

 馬術……、あれか、障害競走の!


「いえ、大丈夫です! ていうか、おかげで友達が出来ましたので!」

 あれは別にサヴィニー伯爵が悪い訳じゃない。

 それに考えてみれば、あの時嫌がらせをされていなければ、エミール様やジャン様と知り合えなかったかもしれない。


 二人とも、積極的に貴族と関わりを持ちたいとは思ってなさそうだし。エルヴィス様とケンカしているわたしを見かねて声をかけてくれた感じだった。


「そうか……。私を許してくれるかい?」

「もちろんです!」

「じゃあ、王宮騎士団に入ってくれる?」

「もち……、いえ、その」

 口ごもるわたしに、サヴィニー伯爵は声を上げて笑った。

「残念だ。引っかかってくれればと思ったのに。……ところで」


 サヴィニー伯爵はわたしとルーディガー様を見て、からかうように言った。


「二人とも、互いの瞳の色の指輪をつけているようだが……、君たちは恋人同士なのかい?」


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