表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/110

100.嘆きの季節


 小テスト期間に突入すると、一気に王都の気温が下がり、秋から冬へと季節が移り変わった。

 だが王都は寒いといっても、朝、部屋に置いた水差しの水が凍るようなことはない。雪も降らないし、なんだかいつまでも晩秋が続いているような感じだ。


「嘆きの季節の到来ね。……まあマティルド様なら小テストなんて楽勝でしょうけど」

 一年生の学舎脇にある小講堂で、隣の席に座ったブリジット様がため息をつく。


 今日はこれから地理学の小テストがあり、ブリジット様もわたしと一緒に試験を受けるのだ。

 コレット様はテスト予定がないため、今日はお休みだ。

「ブリジット様も地理学を受講されていたんですね」

「わたしは月曜日の午後、地理学を受講しているの。マティルド様は木曜日でしょ」

 そうか。同じ科目をとっていても、受講日や担当講師が違えば顔を合わせないこともあるんだ。とすれば……。

「わたしはカルダン先生の数学をとっているんだけど、そのクラスには女子が一人もいないの。ブリジット様は違う先生の数学をとっていらっしゃるの?」


 騎士志望なら地理学、第二学国語は必須だし、できれば数学もとっていたほうがいい。しかし、ブリジット様は顔をしかめて首を横に振った。

「いいえ、数学はとっていないわ。……わかってる、両親にもさんざん言われたわ。騎士になりたいなら数学をとれ、って。王宮騎士団や王族の護衛を目指すなら、数学をとったほうがいい、って。……わかっているけど、わたし数学は大嫌いなのよ!」

 ブリジット様は顔をしかめ、ため息をついた。


「カルダン先生がおっしゃっていたわ。マティルド様のこと、打てば響くような才知あふれる生徒だ、って。カルダン先生があそこまで褒めるのは珍しいのよ。……マティルド様は、剣術も魔術も同学年の中では頭一つ抜けているし、ほんとに羨ましいわ……」

 まあ頑張らなければ死ぬからね。他の生徒とは必死さの度合いが違うんだと思う。それにわたしには、前世の知識という裏技もあるし。


「でも、嫌いだからって数学から逃げていたら、王宮騎士団はおろか高位貴族お抱えの騎士団にも入れないかもしれないしね。……来年はちゃんと数学をとるつもりよ。わたしの年は騎士志望者が増えるでしょうから、真面目に頑張らないと」

「なぜ騎士志望者が増えるの?」

 わたしの質問に、ブリジット様は苦笑した。


「あなたやガブリエル様がいらっしゃるんじゃ、魔術師の塔に入るのは絶望的でしょ。他の魔術師団や魔術研究所に入っても、同期のあなたたちと常に比較されるでしょうし。魔術師か騎士、どちらを選ぶか迷っている人は来年、全員騎士コースを選ぶと思うわ」

 ええー……、そうなの!? でもそれじゃ、魔術師の数が不足するのでは。


「わたしたちの二つ上の世代は、魔術師志望の生徒が多いから大丈夫でしょ。ほら、二つ上にはケルテス家のご次男がいらっしゃるじゃない。あの方のせいで、騎士をあきらめる生徒が多かったのよ。あんなのと比べられたらたまったもんじゃないものね。……いくら将来は平民だっていっても王太子殿下のお気に入りだし、サヴィニー伯爵にも目をかけていただいているんだもの。いずれは爵位を賜って出世されるのはわかりきっているわ。そんなのと競おうったって無理よ」

 ブリジット様は肩をすくめて言った。


 うん、出世するというか、将来ランドール様はケルテス辺境伯になるんだけどね。

 ……けど、その方法が問題だ。わたしの死というイベント抜きで、どうやってランドール様のスキルを覚醒させるか。

 ランドール様にその気がないのに、無理やり呪術をかけるわけにもいかないしなあ。……でも、どうしてランドール様も血筋の証明をしたがらないんだろう。先日の理由を聞いても、ちょっと頑なというか……。


 考えていると試験官が現れ、試験用紙を配り始めた。

 ランドール様のことは、また後で考えよう。今はテストに集中しなきゃ!



「マティルド様、どうだった? 地理は案外、楽だったわね」

 テスト後、ブリジット様は安心したように言った。

「ええ、過去の地形などを出題されたらどうしようかと思っていたけど、そんなこともなかったし。安心しました」

 地理学はなんとか合格点がとれそうだ。


「マティルド様、次は何のテストを受けるの?」

「歴史です」

 ブリジット様は法学だそうだ。騎士と文官、どちらになってもいいようにバランスよく授業をとっているらしい。


 文官かあ……。まあユニーク魔術を使えるとわかった今では、文官コースまで手を広げなくてもいいだろう。

 ブリジット様とは、剣術のテストでまた会うことを約束して別れた。


 歴史の小テストは一年生の学舎に戻って受けるから、小講堂を出て歩いていると、ランドール様を見かけた。


 正確に言うなら、王太子殿下と一緒にいるランドール様を。


 小テスト期間中なのに一緒に行動してるなんて、マンガと同じくランドール様は王太子殿下に重用されているんだなあ。

 しかしこの二人、ものすごく目立つ。背が高いっていうのもあるけど、二人ともタイプは違えどめちゃくちゃ美形だからなー。

 すれ違う生徒が二人に見惚れ、足を止めて二度見する気持ちがよくわかる。ほんとに目の保養だよ。


 わたしも大勢の生徒の後ろに隠れるようにして、こっそり二人を鑑賞していたのだが、なぜかジェラルド様と目が合ってしまった。


「えっ」


 な、なんかいきなりジェラルド様が方向転換して、こっちにやってくるんですけど!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ