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回復職の悪役令嬢  作者: ぷにちゃん
エピソード8 世界樹の復活
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16 珍事件

 世界樹が根を張る海は、太陽の光が降り注ぎキラキラ輝いていた。ところどころで根が太陽光を遮っているので、幻想的な光になっていると思う。根の合間は小さな生物が身を守るのにちょうどいいようで、魚が隠れている姿も目に入ってなんとも平和だ。


 私たちは世界樹の根の隙間から先に進んでいく。


「あ……もしかして、あそこがダンジョンの入り口?」

「え、せまくねぇか!?」


 視界に映ったのは、世界樹の根がトンネルのようになっている場所だ。それは根のさらに奥――世界樹の幹の方へ続いていた。ただ、ケントが叫んだ通り入り口部分がとても狭い。


『おお、そうじゃ。あそこを進んでいくと、根のダンジョンに出るんじゃ。しかし、ギリギリといったところかのう……? いや、ちと厳しいか』

「もしかして、世界樹の状態で入り口の大きさが変わるってことですか?」

『んむ。これでも最近は姫様たちが頑張っていたから、大きくなった方じゃろうな……』


 じいやの言葉に、それは確かにと頷く。もしウンディーネたちが頑張ってくれていなかったら、この入り口自体見つけることが難しかっただろう。


『近くまで来てみたが、どうじゃ?』

「わたしは通れそうですにゃ」

「タルトはいけそうだね。私は……ギリギリ行けそう……かも!!」


 私は穴を覗き込みつつ、腕を前に出して頭から入り口に入ってみることにした。


 ……うわ、私のサイズでギリギリだ。


 いや、ちょっと待って。ギリギリいけるかと思ったけど、腰のあたりがちょっと引っかかって先に進めなくなってしまった。


 ……やばい、やばすぎる!


 腕にぐっと力を入れて前に進もうとするも、動かない。かといって、戻ろうにも力が上手く入らず出ることもできない。詰んだ。

 すると、後ろから「シャロン、大丈夫?」というココアの声が聞こえてきた。よかった、ココアに助けてもらおう。


「ごめんココア、動けなくなっちゃった!!」

「シャロン……」


 私の言葉に、呆れたココアの声が返ってくる。それをぐっと耐えて、「助けて~!」と声をあげることしかできない。


「こうなったら、一気に押しちゃって!」


 私はダンジョンへ進むぜ!


「いや押したらもっと詰まって駄目だろうが」


 私の希望にケントから速攻でツッコミが入ってしまった。……うん。私もちょっとは、その方がいいかな? なんて思っていたよ。


「仕方ない、ひっぱってぇ……」


 めそめそしながら告げると、私の腰下がガシッと掴まれた。


「オッケー、いくよ~!」

「ココア任せた~!」


 ココアがぐっと力を入れて、私を引っ張った。が、うんともすんとも言わない。ココアの力が足りないのか、海の中だから上手くいかないのか……。


「んぐぐぐぐ~~!」

「頑張ってココア!」

「わたしも手伝いますにゃ!」


 ココアだけでは無理だったようで、タルトも参戦してくれたようだ。しかし抜けず、私の脳裏に絶望の文字がよぎる。


 ……もしかして私、ずっとこのままなんじゃ……。


 そう思っていたら――突然、世界樹の根がぐわっと広がって私の身体が抜けた。


「えっ!? どういうこと、何があったの――って、ルル!?」

「これで先に進める」


 見たら、ルルイエが根を掴んで力業で広げているではないか。入り口を無理やり物理で広げる発想はなかったよ。さすが女神ともなると、考えることが違うね。


「ありがと。ルルのおかげで助かったよ」


 私がお礼を告げると、ルルイエはピースして笑顔を見せた。


「それにしても、シャロンはもうちょっと考えて行動した方がいいぞ? 〈水中ポーション〉が切れるまでに抜け出せなかったらどうするつもりだったんだよ……」

「ひえっ」


 それはまったく考えていなかったので、私はさああっと青くなる。もちろん予備の〈水中ポーション〉は持っているけど、手をまっすぐ伸ばして身動きがとれなかったのだから、ポーションを飲むなんて行為ができるはずもなく。


「ほんとにありがとう、ルル。命の恩人だよ……」


 私が再度感謝したところで、『先へ行ってみるのだわ』とウンディーネが根のトンネルへ進んだ。ルルイエが広げたとはいえ通路はまだ狭いので、私たちはじいやの背には乗らず泳いで進んでいく。


 体感で五分くらいだろうか。根の狭い通路を抜けた先で、根の上に上がれる場所があった。どうやらここからダンジョンが始まるみたいだ。


「この奥に〈花降る鈴扇〉があるんですね」


 息を呑んだ、サンゴの震える声が周囲に響く。

 おそらくサンゴはあまり戦いが得意ではないはずだ。私はそう思いつつ、全員に支援をかけていく。


 ……私が知ってるモンスターが出てきてくれたらいいんだけど、どうかな。


 世界樹のダンジョンというだけで、敵のレベルは高そうだ。しかも、世界樹なんていうこの世界でも重要そうな場所で、世界樹をきちんとお世話していなければ入れない。なにもないわけが……ないよね。


「じいやさん、このダンジョンの内部って知ってますか? 構造とか、モンスターとか」

『残念だが、儂に言えることは何もないのう』

「そうですか」


 自力で一から攻略していく必要がありそうだ。私はゆっくり深呼吸をしてから、全員を見た。


「目標は、〈花降る鈴扇〉を手に入れること。出てくる敵はボスを含め未知数。無理はせず、命大事に進んでいくよ。ケント、頼りにしてるよ」

「……おう!」


 〈花降る鈴扇〉のためのダンジョン攻略、スタートだ。

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― 新着の感想 ―
>腕にぐっと力を入れて前に進もうとするも、動かない。かといって、戻ろうにも力が上手く入らず出ることもできない。詰んだ 笑い話で済んで本当に良かったです(笑。 もし、シャロンがそのまま抜き差しならなく…
更新お疲れ様です。 もしケットシーになれるポーションが残っていて全員ケットシーになれたら、狭いダンジョンの入り口を楽に通り抜けられそうですが、そうなると戦力ダウンしないかな? それに爺やさんが無理そ…
>私の言葉に、呆れたココアの声が返ってくる。それをぐっと耐えて、「助けて~!」と声をあげることしかできない 久し振りにシャロンがやらかしましたね(笑。 〈きらめき花〉の採取の時もそうでしたけれど、シ…
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