2話
そのまま、仲間の元にとでも思ったのか、大きく1歩下がった。だが京井がすかさず手を伸ばし、胸ぐらを掴んだ。ぐいっと引っ張られ、覆面の者はぐっと唸った。初めて発せられた声だった。
胸ぐらを掴んでいる手から逃れようと、もがいたが逃げられるはずもなく大人しくなった。京井も抵抗されないと分かり、少し力を緩めたのだろう。その隙を狙うかのように、京井の腕を取り足を持ち上げて絡ませた。そして、肘の関節を固めようとしていたが、その前に京井が腕を振った。すると、ぽーんっと飛ばされて机の上を転がっていき、床に落ちた。
今度こそ、自力では立ち上がれないのか机に手をかけて、身体を持ち上げている。覆面におおわれてない目元が、苦しげに細められている。それに流石に息も上がっているのか、肩が上下に動いていた。
「…何か様子がおかしくないか?」
山上が言うと、京井も頷いた。
「やり過ぎたんでしょうか…」
「どうだろうな…」
襲ってきた相手ではあるが、京井は心配そうにしていた。それだけ、相手が苦しそうでもあった。ぎゅっと目を瞑り、ずるずるとしゃがみこんだ。
「おい、おい…人間なんだろ?少しは手加減してやらねぇと」
山上はそうは言ったものの、近寄ろうとはしない。いつ何時、何があるか分からないという警戒だろう。




