表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/352

第84話 久しぶり!

続きです。

 現在、エレベーターで降下中である。


 既に10分は経過したか…。


 アンジーと話をして時間を潰していた。

 俺達と別れた後、特級鑑定士2人がかりの鑑定を受けたが、やはり以前鑑定した時と同じで、ステータスは見えなかったそうだ。

 俺達の情報については調べられなかったらしい。


 それにしても、


「あの……あとどのくらいかかるのでしょう?」


【雷帝】に聞いてみる。


「ん? 今半分だから、あと10分くらいか。一応お前達に配慮してるんだぞ? もっと早くも出来るんだが、初めてのやつは結構怖いらしいからな」


 なんだ、早く出来んのかい。


「アンジー、早くして大丈夫?」

「はい。問題ないです」

「だそうなので、もっと早くしていただいて構いません」


 面倒ごとはさっさと終わらせたいからな。


「よっしゃ! 【炎帝】、 最速で頼む! エーリ、アンジェリーナの椅子に掴まれ!」

「え? あ、はい」


 それを見た【炎帝】が、指を滑らせると……


 ギュン!


「おわ!」


 下に向かって加速するジェットコースター、とでも言うのだろうか。

 いままでののんびりが嘘の様にグングン降りていく。


 皇帝他3人も、慣れているのか平然とした顔だ。

 かく言う俺も楽しんでいる。


「はは! 凄いな! 大丈夫か? アンジー!」

「はい! これ楽しいですね!」


 アンジーもこういうの好きな方か。

 多分オードリーは苦手だろうな。

 ステフやルイーズも楽しむタイプだろう。

 ジャンヌさんはオードリーと一緒かも。

 ココアとセシルは……


 なんてことを考えていると、ガクン、と速度が落ちた。


「楽しかったか? もう着いちまったぞ」

「あー、もうちょっと早く言えばよかったですね」


 楽しい時間が終わり、どうやら練兵場についたらしい。


 ピッという音とともに、今度は壁の一部が開き始める。


 ワァアアアアアアアア!!


 それと同時に、大歓声が俺達を包んだ。


「帝国が誇る地下練兵場だ。観客席は15万人程入れる。練兵場自体も20万人はイケるな」


 皇帝が兵士に手を振りながら説明してくれる。

 表情は凛々しいものに戻ったな。

 他の3人も澄まし顔だ。

【炎帝】はいつも同じなのだろうが。


「南地区の闘技場よりも大きいですね」

「うん、3から4倍くらいはあるだろうな。これなら他国の偵察もされにくいんだろう」


 広い練兵場の中心に、豆粒ほどの大きさでゴルドンが待っていた。


「エーリ、ゴルドンが待っている。あそこに行け」

「はい」


「エーリ様……」

「ん?」


 珍しくアンジーが心配そうな顔をしていた。

 そんな顔されるとこっちの方が心配になってくる。


「どうした? 大丈夫、絶対合格するから、そんな顔するな」


 ぽん、と頭に手を置いて話しかけた。

 何が何でも合格しないとな。


「違います。お腹が空きました……」


 ズザァーーーー!!


「くっ! さすがアンジー……。いつも変わらないその食欲!! 皇帝陛下。アンジーに何か食べ物をあげてもらえないでしょうか? お腹が空いたそうなので」


 皇帝に頼むことでもないんだがな。

 それを聞いた皇帝は、クスリと笑った後、


「収納している食べ物があるのだろう? それを食べることを許可する。ゆっくり観戦すれば良いだろう」


 そう言ってくれた。

 融通が効くトップは有り難いね。


「だとさ。まあ楽しんで見ててくれ」

「もぐもぐ……ごくん。はい、エーリ様。早く帰って、ご飯にしましょう」


 食べて落ち着いたのか、アンジーは柔らかな笑みを浮かべていた。


「ああ、行ってくる!」

「行ってらっしゃいませ」


 謁見の間から延びる階段を降りる。

 周りの兵士からの視線は、興味、蔑み、憐れみ、期待。


 まあ、いい見せ物だからな。

 せいぜいピエロを演じるとするか。




 ザッ……


「待ちくたびれたぞ。こっちは準備万端整ってる。さあ、実技試験といこうじゃねぇか」

「ここで何をするんですか? 見たところ何もないようですが」


 地面の土以外、何もない。

 ここら辺は南ギルドの物と変わらないな。

 ただただ広いグラウンドって感じだ。


「ゴルドン、試験内容を宣言せよ」


 皇帝の声が響き、皆が一斉にそちらを見た。

 音魔法の魔導具か何かだろうか。

 いつの間にやら空中にも映像が映し出されている。


「はっ! 試験内容は[防衛戦]にございます」

「[防衛戦]?」


 訝しむ俺を横目で見ながらニヤリと笑う。


「ふむ、続けよ」

「はっ! 敵国に魔法鞄の存在が露見し、奪わんとする軍隊に襲われている場面を想定した試験でございます。この卵魔法鞄に見立て、制限時間の最後まで守り抜けば合格とします」


 俺の目の前にひと抱えはある大きな卵が運ばれてきた。

 これを抱えて守りながら情けなく逃げまくれ、と言う感じか。

 でもまあ、なかなか面白い試験だ。

 以外に楽しい奴だな。


 糞野郎どもの件は許さないが。


「わかった。他に条件はあるか?」


 皇帝のその言葉に、とてもいい笑顔をするゴルドン。


「敵国に一度は捕まったと言うことにしたいため、【魔封環】はそのまま。足と腕を鎖で縛って行ってもらおうかと」


 場内がざわついている。

 誰がどう見ても『やりすぎじゃね?』の域だ。

 何が何でも不合格にしたいわけね。


「些かハンデが多いのではないか?」

「いえいえ、冒険者ともなればさまざまな国へ行きましょう。中には人間族を快く思わない国もあるはずでございます。魔法鞄は他国にとっても夢の道具。何としても手に入れたいと思えば、この状況も絶対にないとは限りません」


 うーん……一理ある、とは言いがたいけど、何が起こるかわからないのが人生だからなぁ。

 事実俺も転生しているわけだし。


「エーリ、ゴルドンはあのように申しておるが、何か異論はあるか?」

「異論はないのですが、この卵、仕掛けとかないことを調べていただきたいですね。逃げ切れそうな時に原因不明の何かで割れて不合格とか笑えないので」


 汚ねえことを平気でやりそうだしな。


「わかった。【炎帝】」

「はっ」


 いつものピッ、で卵がスキャン? されていく。

 これは最早科学なのではないだろうか。


「仕掛けはないようですが、この卵は……」

「雷鳥の卵だな」


【雷帝】が不機嫌そうに答える。


「雷鳥、とはなんでしょうか?」

「この国の国鳥だ。本来卵を巣から持ち出すことは禁じられているはず。ゴルドン! どこから持ってきやがった!」


 苛立ちを抑えずに問いただす。

 バリっと雷属性魔力が溢れる。


「俺の部下が見つけて保護しただけだ! 最近国境付近で人間族、獣人族、動物や魔物、区別なく襲われている! 調査に行った俺の部下が雷鳥の巣で隠されていた卵を発見し、保護していたのだ!」

「それをなぜこの試験で使う?!」

「大切な何かを守り抜くのが[防衛戦]だ! ただの卵より、こっちの方が気が入るだろうが!!」


【地帝】、【雷帝】とも魔力を溢れさせ、威嚇しあっている。

 土属性と雷属性の魔力が場内に流れる。


「やめよ!」


 皇帝の声がその場を制した。

 ハッと気付いた2人はその場で跪く。

 場内の兵士もそれに倣う。


「兵の上に立つ者がその面前で口喧嘩とは。恥ずかしいぞ、【地帝】、【雷帝】」

「「ハッ! 申し訳ございません!」」


「互いに思うところがあろうが、此度の試験、雷鳥の卵を使用することを許可する! エーリ、見事守り抜いてみせよ」

「はい。お任せを」


「では試験を始める! 準備せよ!」


 皇帝の掛け声とともに、練兵場を虹色の光が包んでいく。

 これは、全属性?!

 オーロラのようにゆったりと、優しく。

 やがて光の幕はすっぽりと練兵場をドーム状に覆った。


「これがミルク様の加護により形成される【神域】だ」

「え?」


【神域】ってこう、ゼリーみたいにすっぽりと包むって言うより埋めるって感じだったんだけど。

 俺が考えていると、【雷帝】が口に人差し指を当てていた。


『絶対に話すな』


 目がそう語っている。

 了解。


 俺が微笑んで返すと、【雷帝】も手を下ろし、にっこりと笑ってくれた。

 セーフ……。

 まあ自信満々でドヤ顔してる皇帝に、『うちの村よりショボイんですが』とは言えんわな。


 さて、俺の目の前には手枷、足枷、ついでに鉄球?

 それらが次々と付けられていく。

 あれ? これ、枷に見せかけた【魔封環】じゃないか?

 内側に魔力紋が刻まれているし、付けられてから更に魔力が制限されたように思える。


 その影響もあって、いつもより身体が重い。

 魔力を練れないと、こんなに重かったかね。

 こりゃ体力強化は必須だな。


「お兄ちゃーーーーーん!!」

「ん?」


 声の方向を向くと、そこにはチームメンバーとステフ、所持に賛同してくれた面々が来ていた。

 受付嬢勢は流石に全員ではなく、代表してジャンヌさんやセシルだけだったが。


 皆の顔を見て、自然と笑みがこぼれた。


「エーリ!!」


 オードリーが客席ギリギリまで出て来ていた。

 既に泣いていたのか、目元が赤い。


「大丈夫か? 目が赤いぞ?」

「なんでこんなことに?! その格好はなんなんですか?!」

「ああ、これはな……」


 ことのあらましを説明する。


「ヒドい……」

「ここまでするなんて……」

「抗議しないのぉ?」


 上からジャンヌさん、セシル、ルイーズだ。

 オードリーは怒りのあまりプルプルしていた。


「もう、我慢できません。皇帝に抗議してきます!!」

「オードリー!」


 立ち上がろうとしていたところを制す。


「いいんだよ、これで」

「でも!」

「これだけの証人がいて、この状況下で合格すれば、誰も文句言えないだろ?」

「ですが……」


 まだ不安そうな顔をする。


「エーリ君、勝算はあるのかしら?」

「マチルダ母様。はい、この程度のハンデ、ないのと一緒ですよ」

「あら頼もしい。なら見せてみなさい、あなたの実力を」

「仰せのままに」


「お兄ちゃん」

「ステフ」

「やっちゃえ!!」


 突き出された小さい手。

 なんでまあこんなにも頼もしいんだか。


「任せとけ!」


 グッと両拳を上げて応えた。


「皆さん、見てて下さい。必ず合格してきます!!」


 そう言って練兵場の中央へと戻っていく。

 後ろでは俺を応援する声が響いていた。



「お待たせしました」

「ふん、言い訳は済んだか?」


 ゴルドンは余裕綽々といった表情だ。

 身長2m近い大男が10歳の子どもに枷つけて余裕ぶるって、相当恥ずかしいことだと思うんだが、自覚はあるのだろうか?


「制限時間は1時間。精々長く逃げるんだな。1分持てば褒めてやるよ」


 にやけ面で宣う。

 確かに皇帝の言う通りだ。

 大男なのに小物臭くて面白いわ。


 卵を持ち、準備する。


 ふふ。

 帝都地下の練兵場で、15万の人に見守られ、手枷足枷付けた挙句にデカい卵持ってこれから逃げ回るのか。

 ミルクが見たらなんて言うかな?


『久しぶり!! ……何してんの?』


 ははは。

 これから魔法鞄の所持審査の実技試験だとさ。


『へぇ。めでたく魔法鞄ゲット出来たんだ。おめでと』


 まだ許可もらってないけどな。


『ところで、なんかエーリの周りに女増えてない?』


 あー、 話せば長くなるんだけど……。


『そこはゆーっくり「お話し」しましょうね』


 ……はい。


 あれ……?


『ん? どしたの?』


「ミルク?!!!」

『え?! 何?!』



 久しぶりのミルクに驚く俺と、俺に驚かれて驚くミルク。

 待ち望んでいた全能神様との再会は、ミルク村を出てからちょうど2ヶ月後、余りに唐突に起きたのであった。




やっと……ミルクが帰ってきました。

忘れていたわけではありません。。。


いつも見て下さってありがとうございます。

お気に召しましたらブクマ、評価をよろしくお願いいたします。

感想もお気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ