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第85話 実技試験

続きです。


投稿100回目!!

 

 シーン…………。


 あれだけ騒がしかった場内が、俺の一言で静まり返った。

 そして、


「エーリ、今何と言った(・・・・・)?」


 皇帝から、そして場内の至る所から殺気が湧き上がってくる。

 彼らが崇める全能神様を、呼び捨て(・・・・)


 この国では裁判なしに処刑である。


『あー、もう。相変わらずバカね。ちょっと魔力貸しなさい』


 そう言うと俺の身体が光り出し、その光は【神域】に向かって伸びていく。

【神域】に達した光は虹色の魔力と混ざると徐々に強さを増していった。


 やがて光が人型を形成していくと、それは俺の知るミルクの姿になった。


 幻想的で、全能神の降臨と呼ぶに相応しい演出だった。


 そのままゆっくりと謁見の間に降り立つと、つかつかと玉座に向かって歩き始める。

 皇帝が玉座を空けると、当然のごとくそこに座った。



「ミルク様……」



 皇帝が跪き、頭を下げる。

 皆次々と跪き、それは波のように拡がっていく。


「久しぶりね、ジョージ」

「はっ! ミルク様もご機嫌麗しく」

「ええ」


 誰の目にも、この場で一番偉いのは誰か明らかだった。


「そこのエーリが私を呼び捨てにしたことは許しなさい。ただ驚いて口走っただけよ」

「……ミルク様がそう仰るなら」

「ありがとう」


 にっこりと微笑みを返すミルク。


「ははっ! 勿体無きお言葉!!」


 皇帝は下げた頭の下で、とても幸せそうな顔をしていた。

 本当にミルクが好きなんだな。


「ところで、これはなんの騒ぎなの?」


 俺の説明で知っているはずだが、あえて聞くのか。


「冒険者エーリの、魔法鞄所持審査中にございます」

「あんな状態で審査……苛めているだけに見えるけど?」


 ミルクの顔が不機嫌に満ちてくる。

 パフォーマンスだったとしてもかなり怖いな。


「そこのアンジェリーナは、容量不明、収容不可物が皆無という破格の能力を有しておりまして、通常の審査では周囲の納得が得られないとの考えからでございます。エーリ自身も、あの状態での審査に同意しております」

「そうなの? エーリ」

「はい、ミルク()。先ほどの非礼、お許しください」

「いいのよ。突然神に話しかけられれば、慌てもするわ」

「ありがたきお言葉、感謝いたします」


 とりあえずこれで怒りが収まってくれるのを願おう。


「さて、と。事情はわかったわ。面白そうだから見ていってもいいかしら?」

「?!」


 その言葉に場内がざわつく。驚きと、恐怖?

 ミルクが見ていくのがそんなに大変なことなのだろうか。


「静まれ! ミルク様の御前だ!」


【雷帝】の一喝で再び静まり返る。


「ありがとう、ジェフ」

「いえいえ。ミルク様、顕現に伴う魔力はどのように調達するおつもりでしょうか?」

「え? ああ、そのことを気にしていたのね。大丈夫よ、そこのエーリからもらったから」

「なっ?!」

「1人で?!」

「ムグッ!」


 皇帝達は普通に驚き、兵士達は口を押さえて声を出さないように必死だ。

 ん? なあミルク、なんで皆驚いてるんだ?


『そりゃそうよ。顕現ってね、まずそれに見合う対価がないと成功しないの。普通なら、そこの兵士達の魔力を限界ギリギリまで搾り取って5分とかが良いところね』


 燃費が悪いんだな。

 俺だとどうなんだ?


『連続で7日ってところ?』


 ……そりゃ驚くか。


「『計測不能』は魔導具の故障ではなかったのか……」


 皇帝が絞り出すようにして呟く。

 まあそう思うよねぇ。


「魔力の心配がないなら良いわよね?」

「! はい。ミルク様と長い時間同席出来る幸せを感じております」

「じゃあ始めて」

「はっ!!」


 皇帝が立ち上がり、俺達2人の方を見る。


「双方準備は良いか?!」

「はっ! 万端に!」

「大丈夫です!」


 気合十分、いつでもいける!!


「では魔法鞄所持審査実技試験、始め!」


 ドドン!


 大砲のような音が鳴り、実技試験が開始される。

 俺は一足飛びに下がり、距離を取った。


【魔封環】の影響で魔力が非常に練りにくいが、そんなもの、今までいくら練習してきたと思ってる。

 バリバリ…


 全身に雷属性魔力を満たした。


「何?!」


 ゴルドンはその状況が信じられないのか、ボーッと突っ立っている。

 出来ればそのまま1時間立っててくれないかな。


「はっ! ……ちぃ! ただの小僧じゃねぇってことか」


 なかなか悔しそうな表情をしてくれる。

 溢れ出る小物感。


「ねぇジョージ。相手してるのは【地帝】よね? どんな魔法使いだったかしら?」

「【地帝】ゴルドンは2つ名が【一軍】でございますので、今からそれが見られるかと」


 場内を土属性魔力が満たし、ズズズっと人型を形成していく。


「お前を侮るのはもうやめだ。全力でいかせてもらう」

「それは光栄です」

「ほざけ! 土属性大魔法【一軍創造】!!」


 魔力が溢れかえり、土人形の形が急速に変わっていく。

 そしてそれが収まる頃には、兵士と呼べる人形が数え切れないほど出来ていた。


「これから5万の兵士がお前を追いかけ回す。覚悟はいいな?」

「ええ、いつでも」

「吠え面かかせてやる! 全軍、突撃!」


 掛け声とともに兵士が一斉に向かってくる。

 投げ槍や弓での攻撃は既に始まった。


 これも全部土で出来てるのか。

 うーん、意外に凄いやつだったんだな。

【地帝】がいれば武器防具、食料等も一人分でいいって訳か。

 勉強になる。


 だが、こういう訓練もいっぱいしてきた!


 ドン!


「何?!」


 あえて軍隊のど真ん中に突っ込む。

 槍、剣、斧、戟、槌、鉤爪などなど、様々な武器を持った兵士が四方八方から攻撃を仕掛けてくる。

 生身の人間と違うところは、人形に命がないことと、それ故の味方をも巻き込んだ攻撃、そして


「おっと!」


 人形の腹や関節、地面からの武器射出。

 フィールド全てが攻撃範囲という訳だ。


「ふん!!」


 ゴルドンが地面に拳骨を叩き込むと、地面が割れ土塊が巻き上がった。

 その土塊からも攻撃が行われ、平面の戦いが3次元に変わる。


 さらにゴルドン自身も攻撃に加わることで、攻撃のバリエーションはどんどん増えていく。

 開始から10分が経過していた。


「流石は【地帝】と言ったところね……」

「お褒めの言葉、痛み入ります」


 皇帝はミルクに褒められて満足しているようだ。

 それはもうニコニコ顔である。


「エーリの方もよく避けております。普通Cクラス程度の冒険者であれば、数秒で終わると思いますが」

「私が依り代にした人間よ。普通な訳ないじゃない」

「成る程……」

「ところで、エーリも攻撃してもいいのよね?」

「はい。試験内容は[防衛戦]ですので」


『だそうよ。そろそろ攻撃したら?』


 ん? もうちょっと避けてようかと思ったんだけど。


『つまんない』


 はいはい。

 やっぱり規模とか威力とか抑えた方がいい?


『最悪私が記憶飛ばすから好きにやればいいわよ。まあ、属性魔法に留めた方がいいとは思うけど』


 了解!


「そろそろこっちからもいきますね。【一軍創造】!」

「何?!」


 俺の魔力が満たされた土から、同じような兵士が出来上がる。

 その数10万(・・)


「さあ行け!」


 俺の号令で全軍突っ込む。

 場内は一気に乱戦の様相を呈していた。




「なんとまあ馬鹿げた魔力量と密度だよ。あれで【魔封環】してんだから恐ろしいねぇ」


【雷帝】が背中に汗をかきながら呟く。


「どう? 成長した弟弟子の姿は?」

「正直ビックリしてますよ。教えたわけでもないのに【雷電】は使いこなしているし、土属性魔法も当代一と言われているゴルドンに迫ってますし……」

「しかも5個(・・)の【魔封環】まで着けて、ね」

「「「「え?」」」」


 アンジー以外の全員がミルクを見る。


「ん? なんか変なこと言った?」


 キョトンとするミルクと、呆然とする4人。


「ミルク様、今、【魔封環】が何個と仰いました?」


【風姫】が絞り出すようにして聞く。


「え……5個、だけど? あの枷も全部そうよね? 魔力をもらう時に感じたわよ?」

「それで、あの動きと魔力、ですか……」


 驚愕から恐怖とも取れる表情に変わっていく。

【魔封環】を5個も着ければ、ほぼ身動きすらままならなくなるはずである。

 普通なら生命の危機すら感じる程に。

 だがエーリは平然と大魔法を行使し、元気に走り回っている。


【風姫】には、エーリが人の形をした別の生き物のように感じられていた。



「ゴルドン、あの野郎」


【雷帝】は卑怯な工作をしたゴルドンに怒りを覚えている。

【炎帝】は指を動かして何かを探しているようだ。


「エーリとは一体何者なのですか? 人間族であれは、異常ですよ?」


 皇帝は後悔を滲ませた声でミルクに問う。

 このままだと化け物に化け物クラスの魔法鞄。

 考えただけで恐ろしい。


「(あなたの魂の記憶にはあるでしょう? ジョージ)」

「記憶……? ?! まさか転s「シー……」はい」


 出そうになった言葉を飲み込み、皇帝は戦っているエーリを見つめていた。



「あと30分か」


 時計の表示を見て呟く。

 ここまでの戦いで、ゴルドンの兵士は約3万程度まで減っていた。

 対してこちらは5万まで減っている。


 用兵に関しては明らかにゴルドンが上だ。

 将軍としては有能だったようだな。

 だが、このペースならこのまま残り時間をやり過ごせそうだ。


「クソッ! こんなはずでは……」


 膠着化した戦場に、苛立った様子のゴルドン。

 どう出る?


 俺が様子を見ていると、ゴルドン側の兵士がグズグズと崩れていく。

 どうやら魔力を抜いたらしい。

 だが、その分ゴルドンの魔力は高まり、その目はギラついていた。

 まだまだ戦意は十分か。


「よくも、ミルク様や皇帝陛下の前で恥をかかせてくれたな。……ふぅ〜〜…………」


 ズ…


 ズズズズズズズズ……


 ゴルドンの魔力密度が桁違いに高まっている。

 加えて、奴の身体には土で出来た鎧が装着されていく。


 ゴン、となるその音はとても低く、かなりの圧力で固められているものだとわかる。


「皇帝陛下……止めなくてもよろしいのですか? 明らかに殺意を持っていますが」


【炎帝】が皇帝に耳打ちする。


「ミルク様、【地帝】がエーリを敵と判断したようです。殺意を持って接しております。止めますか?」

「なぜ? 元々そういう試験でしょう? 敵が殺気を放つのは当たり前のこと。それくらいで死ぬようなら、エーリもそこまでだったということよ」


 ミルクから出た意外な言葉に、目を丸くするのは【風姫】。

 あれは【地帝】が決戦でしか使用しない、本気も本気の魔法だ。

 遠くから見ただけでわかる圧倒的な魔力密度。

 音でわかる硬さと重さ。

 掠っただけで即死しかねない。



「それに……」

「それに?」


 玉座に坐す全能神は、愛を孕んだ笑みでこう答えた。


「あの子は死なないわ」


 ギロ


「なぜです?」


 嫉妬と羨望の眼差しでエーリを見る皇帝が、ミルクを見ずに問う。


「エーリだからよ」


 その言葉に、ミルクから見えない皇帝の顔は、憎悪に歪むのだった。




 シュー……


 完成した鎧から湯気が立ち上る。

 圧力を加えたため、熱が発生したのだろう。


「これが俺の決戦魔法【地帝】だ」


 鎧の熱とは反対の、今までで一番静かな声だった。

 どうやら引き出してはいけない力まで引き出してしまったらしい。


 ちょっと不味いかな。


 残り25分。

 結構長い。


 これは倒す方向で考えないといけないかもしれない。


「雷土合成魔法【簡易電磁加速砲(キャノンボール)】、水土合成魔法【小さな切り裂き魔(ジャックザリッパー)】」


 ゾラ戦で使用した合成魔法2連発。

 砕き、削る。

 まずはこれで様子見だ。

 ただ、何となく……。


「やはり効果なしか」


簡易電磁加速砲(キャノンボール)】が当たったところはほぼ無傷。

 痕が残っているかな? 程度の凹みが見えるのみ。


小さな切り裂き魔(ジャックザリッパー)】が削ったところは、深さは1ミリくらいか。


 まさかここまで無効化されるとは。

 初めてじゃないか?


「小僧、それで終わりか? ならこちらからも行くぞ」


 腰を落とし、前傾姿勢になる。

 足と背中部分に魔力が貯まっていくのが分かった。


 ヤバい!!


「【雷電改】!」


 ゆっくりとなった視界の中で、すれ違うゴルドンと目が合う(・・・・)

 直後、


 ゴガン!!


 けたたましい音が場内に響く。


「マジかよ……」


 残っていた5万の土兵士が、凡そ1万弱まで減っていた。

 1撃で4万を吹き飛ばす威力。


 恐らく制約はあると思う。

 とんでもなく燃費が悪いとか、使用後に何か起こるとか。

 だがこの試験中、ゴルドンがこの魔法を解く気がないのは何となく分かった。


「何とかして足止めするしかないな」


 足止め、足止め。

 ……よし。


「水土合成魔法【蠢く泥の手(マドハンドヘル)】」


 辺り一面を泥が満たし、そこから手が次々と生まれ出でる。

 ここに踏み込んだが最後、泥の手に掴まれ底なし沼にご招待という寸法だ。


 少しでも速度を落として捕まえることが出来れば。

 そんな中ゴルドンはゆっくりと立ち上がり、体勢を整えるとこちらに向け突っ込んでくる。



 ドン!


「ぐっ!!」


 ゴガン!!


蠢く泥の手(マドハンドヘル)】はほぼ役に立たなかった。

 風圧で吹き飛ばされ、掴んだと思っても速度に負けて引き千切られていた。


 だが少しだけ速度が落ちたせいか、今度もなんとか避けることが出来た。

 正直、あんなの掠ったら終わりだ。

 一瞬で卵が砕け散ってしまう。


 俺がホッとしている中、ゴルドンはまたゆっくりとこちらに向き直る。

 あれはまだ魔法としては途中なのだろう。

 硬さと重さ、そこに速さを乗せることには成功しているが、戦略の柔軟性が足りない。

 本当はもっと、あの速度で自由自在に跳び回り、相手をボッコボコにしたいのだと思う。

 もし完成していたら、とっくに不合格になっているな。


「ふう。ちょっと体力が心許ないな。……あれをやるか。精性合成魔法【今夜は頑張っちゃうぞ(ファイト万発)】」


 ブン!

 ギン!!


今夜は頑張っちゃうぞ(ファイト万発)】。

 体力、精力、性力全てを爆発的にあげる魔法だ。

 名前はふざけているが効果は絶大。

 感じていた怠さや重さもまったく感じない。

 それどころか眠らずに1週間は走れそうだ。


「体力はこれでよし。あとはどう止め、どう仕留めるか、だ」


 神経を研ぎ澄ます。

【雷電改】で避け続ける。

 避け続けながら考える。


 デカい【簡易電磁加速砲(キャノンボール)】で迎え撃つか?

 ダメだ。速度は良くても硬度で負ける。

 水の塊に突っ込ませるか?

 いや、それをやっている時間はない。

【神雷】もどきを叩き込む?

 表面だけ砕けて雷を纏った一撃を食らう未来しか見えん。


 どうする? どうする? どうする? どうする?


 俺は知っているはずだ。

 速くて、重くて、硬い物を制御する方法を。

 身近になかったか?

 あんな、決められたように…真っ直ぐ……


 ……!!


「わかった」


 ゴルドンの攻撃を避けながら魔力を練る。

 必要な属性は4つ。


 タイミングを計れ。

 気取られるな。

 俺は自分の魔力を至る所に残しながら、避け続けた。


 そしてゴルドンとの距離が大きく開く。

 よし、ここだ。


「くっ!!」


 ガクッと膝を折り、怪我をしたように偽装する。


「漸くか……俺もまだまだだな。待ってろ、今楽にしてやる」


 ゴルドンの魔力が溜まっていく。

 その魔力が爆ぜた時、


「ここだ! 【簡易電磁加速土人形(キャノンゴーレム)】!!」


 ゴルドンと同じ速度で、ゴルドンの少し後ろから自分に向かって(・・・・・・・)それを放った。


 放たれたゴーレムには車輪が付いており、ゴルドンの下を走る。

 ゴルドンに接すると、出てきた腕がしっかりと掴んだ。


「何?!」


 絶対に放さん!


「上れぇええええええ!!!」


 土魔法で線路を作る。

 ゴルドン列車は線路に乗ってグルグルと坂を登っていく。


 ここまでは順調、気を抜くな!


「【多重水壁(ウォーターウォールズ)】!!」


 線路上に無数の薄い水壁を作っていく。

 パンパン、とそれをぶち破っていく音が聞こえてくる。

 だがそれでいい。これはブレーキだ。


 一度で止めようとするとあらぬ方向に曲がってしまう。

 車で言うポンピングブレーキと同様に、少しずつ少しずつ速度を落としていく。

 距離が伸びれば速度も落ちる。

 距離が伸びれば魔力も練れる。


 そして、ゴルドンの速度がわかるほど落ちた時、


「ここだぁ!! 水音合成魔法【水葬楽】!!」


 ドプン……

 ギシッ!!

 ギィィイイイイィィィィィィイイ……


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!

 ピシッ!


 圧縮した大きな水の塊の中にゴルドンを突っ込ませ、動きを止めた。

 そこに更に魔力を注ぎ込んで圧縮していく。

 ゴルドンの鎧が嫌な音を立てるが、まだ変化はない。


 そこに音魔法で振動を与え続ける。

 振動の仕方や方向、強弱を変えながら断続的に。


 圧縮と振動により、ついに鎧にヒビが入り始めた。


 ピシッ! ビキビキ! ボグ! バキ!


 様々な音でヒビは拡大していく。

 十分にヒビが入り、遂に鎧の下のゴルドンが見えた!


 即座に【水葬楽】を解き、空中に放り出す。


「これで終わってくれ! 雷属性大魔法【刃雷】!」


 ドッ……


 バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!


「ガッ! アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 雷の刃がゴルドンを突き刺し、体内を蹂躙していく。

 アニメの様に骨が透けて見えてもいいほどの雷撃。


 そのまま地面に落ち、ゴルドンは沈黙する。


「はぁ、はぁ……」


 ガクッと膝が折れる。

 今度は本当だ。

 失敗が許されない極限状態での大魔法の連発。

 身体にかかる負担は尋常ではない。

 精性合成魔法がなければ危なかった。


 もう立つな。

 祈る様に見つめる。



 ズ……



 だがその祈りは、


「嘘、だろ。どんな素材で出来てるんだよ、お前は」


 届かなかった。


 ゴルドンは立ち、突撃の構えを見せる。


「……」


 ?


 様子がおかしい。違和感がある。


 気絶、しているのか?

 だが魔力はどんどんと高まっていく。


「執念……畏れ入るね」


 焦点が合わない目で俺を睨みつけ、ゴルドンは魔力を満たし続けている。

 ヤバい。


「久しぶりだな、死の恐怖ってやつは」


 ちらりと観客席を見る。

 応援に来てくれた皆が、何か懸命に叫んでいるのが見えるが、上手く聞き取れない。

 オードリーが柵を越えようとするのをルイーズとセシルが必死になって止めている。

 アンジーを見る。

 泣きそうな顔で祈る様に指を絡めている。

 ミルクを見る。

 その表情は変わらない。


『信じてるわよ』


 そう言われた気がした。


「大丈夫、諦めてなんかいないさ。俺の目標はハーレム作ってまったりと生活することだからな」


 震える足を魔力で支え、立ち上がる。

 雷属性を練り上げ、全身に満たす。


「さあ来いゴルドン。何回でも避け続けてやる」


 俺が覚悟を決めたその時、



 ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!



 場内にブザーが鳴り響いた。


 なんだ?


「審査終了!! これより卵の検分に入る!!」


 皇帝の声がし、長かった審査が終わったことを知った。


 だが……


「ゴルドン!!」


【雷帝】の怒声が響き渡るが、気を失ったゴルドンは止まらない。

 これまでで最大の魔力が練り上げられている。

 そしてその魔力が爆発し、俺に向かってこれまでで最速の突撃が起こった瞬間。



 女神が舞い降りた。



 ピシ



 デコピン。

 女神が行った攻撃の名だ。


 軽く行われたそれによって、ゴルドンの身体はまるでピンボールの様に練兵場を跳ね回り、最後は壁に激突してようやく止まった。


 鎧は砕けちり微動だにしないが、どうやら生きていそうだ。


 俺がやっとあそこまで持っていったゴルドンを一撃かよ。

 美味しいところ持っていきやがって。流石は全能神様だぜ。


 でもありがとな、ミルク。


『どういたしまして。お疲れ様、エーリ。とりあえず寝なさいな。後は任せなさい』


 ああ、頼……む……。



 終わった安心と、全身に拡がる疲労を感じながら、俺は意識を手放した。




何気にミルクの戦闘シーン? は初ですね。

流石のパワーです。


皆様のおかげで投稿100回目です!

PVも60,000、ユニーク数も9,000を超えました。

ブクマも3桁超えてくれましたし、正直夢を見ている気持ちです。


これまで見て下さった全ての皆様に感謝いたします。

これからも毎日投稿していきますので、見ていただけると幸いです。


もしお気に召しましたら、ブクマと、最新話下にある評価をお願いいたします。

感想もお待ちしていますので、お気軽にどうぞ。

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