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幕間 月間優勝決定戦

続きです。


2018/02/12 読みにくい箇所を修正しました。

「両者準備は……よろしいですね。それでは試合、開始ぃいいいいいいいいい!」


 ドドン!


 大太鼓の音と共に、優勝決定戦が始まった。

 その瞬間、両者共獣化形態になる。


 まずは砲撃組が仕掛ける。

 前衛に山嵐、後衛に亀という布陣だ。

 亀型獣人のブランクは、背負った甲羅から次々と何かを落としていく。


 小さい……亀?


 それらは亀とは思えない速度で走っていき、ある程度近づいたところで大ジャンプ。

 空中で爆発した。

 自立走行型の爆弾か。


 四散した亀の甲羅が、こちらの結界にまで飛んでくる。

 この結界もアーティファクトらしく、建国以来破られたことがないそうだ。

 これなら安心して見ていられる。



 次々と爆発する小亀だが、竜組の2人は避けることをしない。

 破片が当たってもその鱗が全く傷ついていないのだ。

 まるで、避ける価値もない、と言っているようである。


「あの鱗はその硬さもそうですが、魔力を受け流してしまうと言われています。大抵の攻撃はそのまま弾き、逸らします。その特性を生かして、相手の戦法を全てなぎ倒し、そして仕留めるというのが基本戦法です」

「ゴリ押しなやり方ですが、相手の心を折ったりするにも有効ですね。何をしても止まらないというのは、恐ろしいですから」


 闘技場では山嵐族のスティンガーが毛針を飛ばしている。

 ミサイルのように後方に何かを噴射し、執拗に竜を追っていた。

 何本飛ばしても毛針は減らず、会場内を数百本の毛針が飛び交う。


 今回は竜も避け、弾いている。

 地上には折れたり砕けたりした毛針が散乱している。

 何かが違うんだろうな。針に特性でも持たせられるんだろうか。


 遠距離攻撃を凌ぎ続けていた竜組だが、飽きたとでも言わんばかりに突然砲撃組に突っ込んでいった。

 空を高速で飛び回り、どんどん迫っていく。

 どうやら狙いは後衛のブランクのようだ。


 狙われていると感じたブランクは、甲羅から小さい筒のようなものをせり出し、砲撃を放っていく。

 あれは光魔法か?


「綺麗……」


 ステフが感嘆の声を上げる。

 ブランクの放つ砲撃は、さながら弾幕ゲーのようで、会場いっぱいに綺麗な模様を描いているのだ。

 更に、スティンガーも近づかせまいと毛針を飛ばしていく。

 2人の描く弾幕ショーは、見る者に感動を与えていた。


 一方の竜組は器用に避けながら少しずつ近づいていく。

 一定の距離まで近づくと、魔力障壁を展開して一気に突っ込んでいった。


 分が悪いと感じたのか、ブランクは弾の種類を変更した。

 粒状ではなく、レーザーのような線状になっていく。

 辺り一帯を薙ぎ払うように砲塔の角度を変え、撃ち落そうとしていた。


 近づきたい竜と近づかせたくない砲撃。

 近距離と遠距離のわかりやすい構図は、場内の熱気を際限なく高めていく。


 遂に竜組の内、赤の竜人ザイアがブランクの元に到達した。

 一撃必殺と言われた打撃がブランクを襲う。


 バゴン!


 凄まじい音と共に煙が立ち上り、場内が一瞬静まり返る。


 煙が晴れたその後には、手に持った盾と、右拳から煙を上げるブランクとザイアの姿があった。

 場内が震える。


 決定的な瞬間を逃さなかったザイア、一撃入れば終わりの攻撃を凌いだブランク。

 両者を讃える拍手が鳴り止まない。


 そんな中を突っ込んでいくスティンガー。

 毛針を逆立て、回転しながらザイアに突っ込んでいく。


 すかさず間に入るのは、青の竜人ザイル。


 腕をクロスさせ、ザリザリと押されながらスティンガーの回転を受け止めている。

 触れている部分に火花が散る様は、その衝撃と回転の威力を物語っていた。

 スティンガーの回転は徐々に増していき、遂にザイルはスティンガーを抱えるような格好になった。

 更に受け止めているザイルに向かって毛針を飛ばし続ける。

 ザイルは己の防御力を信じて受け続けた。

 お互いに絶対に引かないという意地の戦い。


 だが、これはタッグマッチ。


 回転するスティンガーに、ザイアの飛び蹴りが炸裂した。


 おはじきを指で弾いたように闘技場の壁に激突し、その回転ゆえ四方八方に転がっていく。

 やがてゴロンと止まった車輪の主は、白目を剥いて伸びていた。



 スティンガーの離脱。



 それはつまり、ここから先の戦いが2対1であることを意味する。

 会場内は大勢が決したという空気に満ちる。


 しかし、ここでスティンガーの攻撃を受け続けていたザイルに異変が。

 受け続けていた箇所の鱗は剥げ落ち、血が滴っている。

 スティンガーの決死の攻撃は、竜人の防御力を超えていたのだ。


 更に、ブランクと相対していたザイアの鱗にもヒビが見て取れる。

 その姿は、決して竜人の優勢が絶対的ではないことを表していた。


 会場内に熱が戻ってくる。

 竜と砲撃、両者を応援する声が響く。



 ブランクは相棒の姿を見やり、気合いを込めて咆哮した。

 背中から煙幕を出し、それに紛れる。


 恐らくただの煙ではあるまい。

 俺の【霧幻】の様にレーダーの役割を担っているか、それとも毒を含んでいるのか。

 会場内の半分を煙が満たそうという時、竜が動く。


 赤と青、2つのオーラが立ち上り、そして収まっていく。

 そこには、全身が光り輝く竜が2体。


 ゾラの【極赤狼】と同じ原理か、竜の姿になった2人は、迷わず煙に突っ込んでいく。


 縦横無尽に煙の中を飛び回る。

 赤と青の舞踏。

 これが戦いであることを暫し忘れるほどの美しさだ。


 しかし、それも赤と青が交差した瞬間


 ボン! ドドドドドドドドドン!!!


 煙の中で大爆発。

 恐らくブランクが仕掛けた爆弾だろう。

 地雷タイプかクレイモアタイプか。

 ……恐らく両方だな。

 粉塵爆発も併用したようだ。

 辺り一面が吹き飛んでいく。


 火力が強すぎたためか、煙幕が晴れてしまい、ブランクの姿が露わになる。


 これほどの爆発だが、竜となったザイア、ザイルは止まらなかった。

 血を滴らせながら、ブランクに向けて突っ込んでいく。


 それを見たブランクは、四肢で大地を掴み、甲羅から特大の砲塔を出現させた。

 今までで最高密度の魔力が溜まっていく。


 当たればケガをしている竜組を倒せる。


 当たれば(・・・・)。


 ザイア、ザイルは動かない。


 あれは恐らくブランクの放つ最大、最速の攻撃になるだろう。

 だがブランクが撃った瞬間、それを避け、2人で攻撃する。

 今の状態ならそれが可能だ。


 2人は待つ。


 そして、ブランクの砲塔が唸りを上げたその時、

















 竜組は動けずにいた。















 2人の足を何者かが掴んでいる。


 そこにあるのは、毛針が生えた腕(・・・・・・・)。


 掴んでいたのは、ザイアに蹴られ、伸びていたはずのスティンガーだった。


 竜組はもがく。

 空へ逃げんと、力の限り。

 だがスティンガーは離さない。

 更にスティンガーが何か叫ぶと、地面に散らばっていた毛針が竜組に向かって突っ込む。


 竜化しているとはいえ、満身創痍の2人には、その全てを防ぐ防御力はなかった。

 腕、足、身体に針が突き刺さり、天空を舞う双竜を地上に縫い付けていく。


 そこに迫るは極大の光。


 地に落ち、縫い付けられた竜は、その光の中に消えていった。








 静寂







 光が収まり、観客が眩しさから戻ってきた時、そこにあったのは、人の姿で倒れる竜人と、肩を抱き、拳を上げる亀と山嵐の獣人の姿だった。


「勝者! 砲撃中毒(ジャンキー)!!!」


 司会の絶叫が場内に響く。


 一拍遅れて、割れんばかりの大喝采が起こった。

 事実、俺達のVIPルームのガラスは振動でヒビが入った。


 だがそんなことはお構いなしに、誰もが興奮し叫んでいた。

 誰ともなく抱き合い、中にはキスをしている男女もある。

 獣人のほとんどは男は獣化、女は人化し、異様な雰囲気になった。


 場内の観客は総立ちとなり、万雷の拍手が勝者を讃える。


 月間優勝決定戦は、『砲撃中毒(ジャンキー)』の勝利で幕を閉じた。



今回のは書いていて楽しかったです。


いつも見て下さってありがとうございます。

お気に召しましたら、ブクマ、評価をよろしくお願いいたします。

感想もお気軽にどうぞ。

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