第77話 闘技場
続きです。
2018/02/12 読みにくい箇所を修正しました。
「行けーーーーー!! そこだ! あぁ、惜しい!」
「今のフェイント、勉強になりますね」
「このタッグマッチは結構人気で、連携の勉強をしに若い冒険者も見にくるんですよ」
「あ、追加で岩石ジャガイモのフライを……10人前で」
紅蜘蛛商会での買い物を終え、現在闘技場でタッグマッチ観戦中である。
買ったものはアンジーに任せている。
ネグリジェ、なぜかセシルさんの分も当然のごとくカゴに入っていた。
女性陣が入れたらしい。
当のセシルさんは恥ずかしそうにしていたが、特に拒否しておらず、俺も異論はなかった。
顔は冷静だが、頭の中は夜のことでいっぱいだ。
………………ふう。
「うふふふ。早く大きくなってね?」ふぅ〜〜
ルイーズが耳元で艶めかしく囁く。
ゾクゾクゾクゾク!
頑張る! 俺、頑張る!
「それにしても、こんなにいい個室、いいんですか? 多分、普通じゃ入れないですよね?」
セシルさんの名刺では個室と書いてあったが、これはどう考えてもVIP用の部屋の様な気がする。
ベルを鳴らせばすぐに人が来るし、ドリンクも飲み放題。軽食のレベルも高い。
先程頼んでいた岩石ジャガイモのフライでさえ、つけて食べるためのソースが何種類か用意されており、そのどれも絶品だった。
アンジーがよく頼んでいる。
「はい。私の名刺ではここまでの部屋は無理なのですが、ギルマスが連絡してくれていた様で。私も初めて入りました。ここの会計はギルマス持ちだそうなので、遠慮せず頼んでください」
「この部屋、貴賓室、と言ってもいいほどですものね。少し気後れしてしまいます」
調度品の数々も高そうだからな。無闇に触れない。
「皆様にはギルドも感謝しておりますから。……もし攫われていたら、どうなっていたか」
ギルドとしては上級受付嬢が冒険者に攫われるなんて、恥以外の何ものでもない。
それにそれを許してしまったら、ギルドと冒険者、依頼主の間にも浅くない溝が生まれていた可能性もあるか。
考えてみると、結構大事になりそうだったんだな。
「とにかく阻止できて良かったですよ。さ、今は試合を楽しみましょう」
「エーリ様……。はい」
頰を赤らめてセシルさんが頷く。
初めて会ってからまだ3時間位なんだけど、プロポーズまでされてるしな。
なかなか異常な事態なんだけど、ルイーズから
『獣人は強さと言うものに異常な執着があるのよ。こと戦闘の強さは自分の子孫を残す上で重要と考えていてぇ、戦闘を一度見ただけでその日に結婚とかよくあるらしいわぁ。バルバルの言い方を見るに、セシルには決まった相手とか浮いた話がなかったんじゃないかと思うのよぉ。そこにエーリくんが電撃的に現れたからぁ、きっと興奮しているのねぇ』
と言うお言葉をリンクで頂戴した。
白馬の王子さま的な感じなのだろうか。
おっと、観戦観戦。
闘技場ではこれからメインイベントが始まる様だ。
場内が薄暗くなり、一部だけ明るい場所に司会がやって来た。
手には、マイク? が握られている。
「ご来場の皆様! お待たせいたしました! 本日のメイーーーーーーーンィベントぉ!! 月間王者決定戦を行います!!」
場内に歓声が響く。
この部屋は大きなガラス張りの部屋なのだが、カタカタと揺れていた。
相当な熱狂ぶりだ。
「皆様知っての通り、今月はなんと! 月間ランキング第1位が2組存在します! 本来であればこのまま2組同時優勝とする所で・す・が! 2組の強い希望により、直接対決での優勝決定戦を行う運びとなりました!!」
また歓声が上がる。
観客が足を踏みならし、腕を振り上げ、は選手の登場を催促する。
「それでは選手の入場です!! まずは北の扉より、チーーーーーーーーーーーム『双竜』!!!」
煙が出る入場ゲートから、2つの何かが飛び出し、空に浮かんで静止した。
翼が生え、身体の所々が鱗に覆われた同じ顔の戦士が2人。
一方は赤、もう一方は青の鱗だ。
武器は、籠手か?
「チーム『双竜』。竜人族の双子の兄弟のチームです。竜人族は元々、高い防御力と竜拳と呼ばれる特殊な戦闘スタイルで無類の強さを誇っていますが、この兄弟は歴代の中でも最強と呼ばれるほどの強さで、そのコンビネーションから生み出される連続攻撃は、一度打撃が入ったらそれで終わり、とも言われています」
セシルさんが補足情報を入れてくれる。
こういう情報って、知る知らないで観戦に込める熱が大分変わるからな。
結構助かる。
「続きまして南の扉より、チィーーーーーーーーー〜〜〜ム『砲撃中毒』!!!」
扉からデカイ大砲がせり出し、何かを発射する。
飛び出した何かは地面に着弾し、着弾時の煙の中から甲羅を背負った亀? の獣人と、髪から背中にかけてビッシリと針が飛び出ている獣人が出てきた。
「セシルさん! あの2人は何々?!」
「モグモグ、突撃牛のステーキを焼き方全種類でお願いします」
ステフとアンジーはガラスの近くで見ており、張り付く様にして観戦している。
俺たちの中で一番楽しんでいるのではないだろうか。
興奮の分か、アンジーの食が進んでいるのは気になる。
請求大丈夫かな……。
「あれはチーム『砲撃中毒』と言って、砲撃特化のチームです。2人とも魔力量が桁違いに多く、それに任せた様々な魔力弾で相手を制圧していくという、シンプルながら対処のしにくい戦法で勝ってきました。甲羅を背負っている方が砲亀族、トゲトゲしている方が山嵐族ですね」
ああ、ヤマアラシか。
あの模様どっかで見たことがあった気がしたんだよな。
「あの面構え、両者とも相当な実力者ねぇ」
「ええ、砲撃の方は2人ともAですし、竜の方は冒険者ではありませんが、実力的にはAと同等と言われていますから」
「今後の勉強にもなるだろうから、しっかり見ておこう」
「「「「はい」」」」
同じレベル、しかも強者同士の戦いを見る機会なんてあんまりないからな。
勉強させてもらおう。
睨み合う両チームの間に司会者が立ち、双方を見た後、口を開く。
「今回は両者合意のもと、このステージで行います! 皆様準備はよろしいですかぁ〜〜? 開けぇーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「「「「「ゴマ!!!!」」」」」
「ブッ!」
「エーリ?」
勢いよくお茶を吹き出してしまった。
慌ててオードリーが拭いてくれる。
何か掛け声をかけるからどんな言葉かと思ったら、よりにもよって開けゴマかい!!
「いや、何でもない。開けゴマって何だ?」
「『蟻婆と40人の盗賊』って言うおとぎ話に出てくるんですよ。扉を開く合図によく使われます」
「そ、そう」
……転生者の悪ふざけか。
たまに地球と関わりのある言葉が出てくるとドキッとしてしまうな。
気をつけないと。
一方闘技場では、地面が割れ、下から岩が散乱し、山もいくつかあるような地形が出てきていた。
「これが帝都自慢の変形闘技場です。各々の戦闘スタイルで戦わせるために、様々な地形を用意できるんです。帝都ができた当時から使われているらしいのですが、どうやって作ったのか、未だに謎らしいですよ?」
「アーティファクトと言うやつですね。現代の魔法学、魔導具学でも解明できないと言う……」
凄いのはわかるが、これも絶対転生者が関わってると思う。
この国、成り立ちに転生者が関わっていそうだな。
次回は決勝戦の模様を幕間でお届けします。
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まあ次の瞬間に減ってる可能性もあるのですが、記念ということで・・・。
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