第76話 天空ゴンドラ
続きです。
2017/11/20 誤字などを修正しました。
2018/02/12 読みにくい箇所を修正しました。
『猫屋敷』で昼飯を食べた俺達は、天空ゴンドラに乗るために停車場に来ていた。
壁にある看板にはコミカルな蜘蛛の絵が書いてあり、料金と時刻表もそこに書いてある。
「もう少しで来るみたいだな」
「天空ゴンドラって、蜘蛛型の獣人さんがやってるんですか?」
「ええ、この天空ゴンドラは『紅蜘蛛商会』が一手に担っておりまして、渋滞知らずの交通手段、及び観光用に親しまれております」
上を見ると蜘蛛の糸で作ったと思しきロープが張り巡らされていた。
遠くからゴンドラ(地球でのそれと近い)が近づいて来るのが分かるが、違う点は運転手? の様な獣人が乗っていることか。
「ご予約のセシル様と、『虹の絆』の皆様、それとステファニー様ですね。この度は当商会自慢の天空ゴンドラをご利用頂きまして、まことにありがとうございます。私、このゴンドラを操縦いたします絹蜘蛛族アレスターと申します。どうぞよろしくお願い申し上げます」
上半身タキシード、下半身が蜘蛛という姿のアレスターさんが丁寧な挨拶をしてくれた。
俺達は自己紹介をし、天空ゴンドラに乗り込んだ。
「わぁ! たっかぁーい!!」「いい眺めだ」
「素晴らしい眺めですね」
「視点が変わると印象も変わるわねぇ」
「ここで食べるご飯は美味しそうです」
「ありがとうございます。それでは出発いたしますので、座席にお座りくださいませ。闘技場までの20分間の空の旅をお楽しみください」
ゴンドラからの光景は、否応無く気分を高めてくれた。
下にいる時には見えない人の流れ、種族の多さに目を見張り、あちらは何か、こちらは何かとアレスターさんに聞いては、その答えに皆で『へぇ〜』と感心していた。
「それにしても、この細い糸でよく支えられますね」
俺達のゴンドラを支えているのは、直径2㎝ほどの蜘蛛の糸で作られたロープだ。
地球では蜘蛛の糸の強度は知られているが、ここまでの太さは見たことがない。
そもそもどんな蜘蛛の糸なのか不明である。
「こちらは蜘蛛種族の中でも様々な糸を紡ぎ出せる神鋼蜘蛛の糸で、この天空ゴンドラのために作られた特注品でございます。強度は伝説の金属、神鋼《しんこう》に迫るほどとされていますので、100人乗っても大丈夫でございますよ」
「それは凄いですね」
どこかの物置のキャッチコピーみたいだが、強度は折り紙つきか。
「我が紅蜘蛛商会では、様々な糸製品も取り扱っております。闘技場近くに本店がございますので、もしよろしければ後でご覧くださいませ。ちなみに、私が今来ている服は、我が絹蜘蛛族の糸で作られたものでございます。軽く丈夫で、それでいてしなやか。防御力も下手な金属鎧よりもあると自負しております」
「艶があって綺麗! お兄ちゃん! 買って!!」
目を輝かせながらナチュラルに強請る我が妹。
絶対に高いだろ、これ……。
「あー……まずはお店に行ってからな」
「わぁい! やったぁ!」
「何を買ってもらいましょうか?」
「お揃いのネグリジェなんてどぉ?」
「着心地良さそうなので、1人2枚くらい?」
「エーリ様がそういうのを好きなのであればわ、私も……」
「じゃあ全員分、あの2人とどうせだからマチルダ母様の分も買って帰ろうよ!」
「こら……」
いわゆる『パパ』に買ってもらう時の会話が飛び交い、このままだと買わされそうだ。
まあマチルダ母さんの分も買っていけば、アルベルトさんには喜ばれるんだろうな。
ネグリジェかぁ……
……ふう。
「エーリ様は皆様にとても好かれているのですね。チームとしての纏まりも感じますし、これからのご活躍を期待しております」
「ありがとうございます。この通り若輩者なので皆には助けてもらってばかりですが、皆とならどこまでもいけそうな気がしています」
「楽しみですね。おや、楽しい時間はあっという間と申しますが、天空ゴンドラの旅もそろそろ終わりへと近づいております。闘技場が見えて参りました。皆様、座席にお戻りになり、降車準備をお願いいたします」
「えー、早ぁい。もっと乗っていたかったな」
「また乗ればいいさ」
名残惜しいが、この後も予定が詰まっている。
「闘技場前に到着いたしました。この度は、紅蜘蛛商会の天空ゴンドラをご利用いただきまして、まことにありがとうございました。またのご利用をお待ち申し上げております」
「「「「「「ありがとうございました」」」」」」
アレスターさんにお礼を言って、次々におりていく。
「エーリ様。これを、皆様に」「え?」
アレスターさんは俺に、ラッピングされた包みを渡してくれる。
「絹蜘蛛のレースハンカチでございます。私からのプレゼントでございますよ」
「え、良いんですか? 多分それなりのお値段すると思うのですが」
レースハンカチは高いだろ?
「皆様を気に入ったというのもありますし、恐らく『虹の絆』は大成する、と私の勘が囁いております。この程度、先行投資にもなりません」
「あ、ありがとうございます。そのご期待に添える様、頑張っていきたいと思います。では、これはありがたく頂戴しますね」
「はい、今後ともよろしくお願いいたします」
にこやかに握手をして、アレスターさんと別れる。
プレゼントのことを話したら、ウチの女性陣は諸手を上げて喜び、セシルさんは驚きの表情をしていた。
なかなかこんなことはないそうだ。
皆でアレスターさんに手を振る。
軽く会釈をして、ゴンドラは去っていった。
「じゃあアレスターさんに紹介された紅蜘蛛商会に行ってみよう。きっと良い品があると思う」
「「「「「「はぁ〜〜い」」」」」
そのまま紅蜘蛛に向かった。
『紅蜘蛛商会』と書かれた店に入る。
「ネグリジェ、ネグリジェ……」
取り憑かれた様にネグリジェを探すオードリー。
ほかの女性陣は、蜘蛛の糸で作られた洋服やカーテンなどを見てあれこれ言い合っている。
俺も近くにあった男性物の服を見る。
品質は最高、だな。
滑らかな手触りで、肌に吸い付く。
引っかかりなど一切なく、油でも引いているのかと錯覚するほどだ。
値段は……金貨100枚?!
……はっ!!
ネグリジェはいくらだ?!
「エーリ、皆決まりました。買っても、良いですよね?」
顔を赤らめ、モジモジとしているオードリーが、カゴいっぱいに入った蜘蛛糸製品を見せてくる。
チラリと見えるそれは……イイ、な。
値段は考えない様にしようか。。。
「ああ、良いよ。頑張って稼げば良いし。その代わり、今夜から着てね?」
それで手を打ってやる!!
パァっと花咲く顔になり、会計しに行くオードリー。
「いいのぉ? あれ、高いわよぉ〜?」
片眉あげたルイーズが訝しげに聞いてくる。
「……いい。夜を楽しみにしている」
「はぁ〜〜い」
会計は、しめて金貨256枚になりました……。
ぐうううううう!
早く大人になりてぇええええええええええ!!
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