第75話 猫屋敷でアンジー無双
続きです。
2018/02/12 読みにくい箇所を修正しました。
セシルさんからのプロポーズ後、ゾラさんを担いでバルバルさんはギルドの地下牢へ。
俺達は詳しい話を後日聞かせてほしいとのことだったが、今日のところはそのまま観光して良いと言われた。
セシルさんも仕事を免除され、俺達と共に観光することになった。
「あんなことがあって、そのまま帰すのも忍びないですし」
とはオードリーの弁だ。
俺から結婚の意思があることが仄めかされたからか、セシルさんへの態度も随分柔らかい。
その前から何となく覚悟していたようだし。
……どんどん増えていってるな。
ミルクが見たらどう思うんだろうか。
会いたいなぁ、ミルク。
「お兄ちゃん、行くよ! アンジーちゃんが限界!!」
「おわ!! すぐ行く!」
俺の思考は、アンジーの空腹により終わる。
既にランチタイムは始まっている。急がねば!
「こちらが『猫屋敷』でございます。従業員全てネコ科の獣人で構成されており、魚料理が絶品です」
ランチを食べる『猫屋敷』は、古い洋館をモチーフにしている建物だった。
蔦が壁をおおっていて、怪しげな雰囲気を醸し出している。
煙突からは煙が上がり、辺りには焼き魚のいい匂いが広がっていた。
ゴクリ、と誰のものかわからない音が響く。
「エーリ様、早く早くぅ!」
そんな風情をぶち壊すように握った両手をブンブンと上下させ、よだれを垂らしながら訴えかけてくるのはアンジーさんである。
「わ、わかったから! だからよだれを拭きなさい!」
「むぐ。お腹が空いたんですぅ」
今にも泣きだしそうだ……。
なぜだ。どんどん酷くなっていってる気がするのは。
「セシルさん、急ぎましょう」「は、はい!」
外観を堪能する間もなく、いそいそと店に入った。
「「「いらっしゃいませーー!!」」」
元気のいい声で迎えられる。
メイド服を着たネコ科の獣人女性達が忙しく動き回り、店の中は活気に満ちていた。
「わぁ! 凄いね! 猫さんがいっぱい!」
「店の名に恥じない猫っぷりですね」
店の中はねこ、ネコ、猫。
猫一色だった。
店内にはネコ科の従業員、普通の猫が歩き回り、客層もネコ科が多い。
食器、テーブル、椅子、花瓶に壁の絵に階段の手すりや柱の装飾まで、あらゆるものに猫が関わっている。
「南地区ギルドのセシルです。個室、空いてますか?」
セシルさんが従業員に聞いてくれる。三毛猫? な従業員さんだ。三毛猫さんと呼称する。
アンジーは既に臨戦態勢。目が爛々と光っている。
このまま食事に突入したら、間違いなき好奇の目に晒されることだろう。
「セシル様ですね。少々お待ちください。てーんちょー!」
三毛猫さんが奥へ引っ込み、20秒ほどで戻ってくる。
「2階の一番奥へお進みください。えーと、6名様ですね。ご新規6名様、22卓にごあんなぁーーーい!」
「「「「「ニャンニャン! ようこそ『猫屋敷』へ!!」」」」」
お決まりの掛け声なのだろう。
店員さん全員で猫の手ポーズをしてくれている。
生きててよかったぁああああああああああ!
まあ、見た目完全に猫だけどな!
三毛猫さんの案内で22卓へ向かう。
呼び方の問題だろうか、なぜか興奮するな。
件のニャンニャン卓だが、ベッドが置かれているわけもなく、センスのいいテーブルと椅子が置かれており、壁にはキャットウォークがせり出している。
よく見ると個室と言いながら壁の一部が抜けている。恐らく猫が出入りするのだろう。
「こちらがメニューでございます。お決まりになりましたら、そちらのベルでお呼びください」
おしぼりと水を配りながら、三毛猫さんが手早く説明してくれた。
「さて、何を食べようか?」
「あれとこれとそれでご飯は特盛で」
俺がメニューに手を伸ばすより前に、アンジーが注文を終える。
「……かしこまりました。ほかの皆さんはごゆっくりお選びください。
「「「「「はい」」」」」
ギラギラしているアンジーは放っておいて、俺達はメニューを見るのであった。
にゃぁ〜〜〜〜〜ん!
どんな構造だ?!
ベルを鳴らすと、可愛らしい猫の鳴き声が出て、三毛猫さんがやってきた。
「お呼びですか?」
「はい。日替わりランチが3つで、後は白金鯖定食、鎌マグロのカマ定食をお願いします。ドリンクは全員ボムレモンスカッシュで、食事と一緒でいいです」
日替わりは季節の刺身定食となっていた。
「かしこまりました。セシル様ご同行という事で、絨毯ヒラメのエンガワの刺身が付きます。デザートは特製パフェとなっております。それでは少々お待ちください。……え、と。そちらのお客様のお料理は、もう少しで出来ますので、お待ちいただけますよう、重ねてお願い申し上げます」
冷や汗をかきながら深々とお辞儀する三毛猫さん。
その先には、黒いオーラを放つアンジーの姿が……。
「アンジー、空腹は最高の調味料と言いますから、もう少し待ちましょう?」
「はい。ギリギリギリ……」
歯を噛み締めて耐えるアンジー。頑張れ!! 頑張るんだ!!!
「お待たせしました! 刺身舟盛り定食、槍さんまの塩焼き定食、金剛鯛の煮付け定食、ご飯特盛でございます!」
「いただきます!!」
パン! と手を叩いたと思った瞬間、とんでもない速度で食べ始めるアンジー。
顎が、ブレている? ……!? 咀嚼が速すぎて残像が見えているのか?!
皆が戦慄する中、およそ2分で全てを平らげる。
「ご馳走様でした」
聖母のような表情になり、オーラも白い。
「ま、満足したか?」
「はい。刺身は鮮度が抜群で、それぞれの良さが倍々に良くなっていますね。槍秋刀魚はパリパリの皮、ふわふわの身、内臓の苦味がアクセントになって、口の中で旨味が爆発しています。金剛鯛の煮付けは、身の芯まで煮汁が染み込み、かといって煮崩れることなく、絶妙なバランスで成り立っています。ご飯と一緒に食べた時の味の広がりは、見事というほかありません。素晴らしいです。シェフにお礼を」
「あ、ありがとうございます。シェフに伝えます」
食事の風景を口を開けて見ていた三毛猫さんが、絞り出すように答える。
プロ根性だなぁ。
何とか取り繕い、戻っていく三毛猫さん。
やっぱり食事になるとアンジー無双が始まってしまうな。
その後、アンジーは俺たちの食事風景に触発されたのか、俺達全員と同じ料理を同じだけ食べていた。
すみません・・・投稿ボタンを押し忘れてました。。。
いつも見て下さってありがとうございます。
こんな作者の拙作ですが、お気に召しましたらブクマ、評価をよろしくお願いいたします。
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