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第73話 VSゾラ

続きです。


2018/02/12 読みにくい箇所を修正しました。

 炎を纏ったゾラが猛スピードで突っ込んでくる。

 赤く熱せられた右爪を振りかぶり、爪撃を放つ。

 左に避け、様子を見ようとすると、火球が飛んで来ていた。

 避けることを見越して放っていたのか。


「よっと」


 すんでのところで避けた。

 流石にAランクともなると動きが違うな。

 直上タイプではあるんだろうが、戦闘に関しては一流か。


「流石人間族だなぁ。逃げ回るのが上手い上手い」


 パンパンと手を叩き、ニヤついている。

 よく出来ましたーってか?


「お褒め頂きありがとうございます。ではこちらからも」


 ビュッと魔法で水球を放った。

 ゾラはそれを避けない。

 顔にクリーンヒットし、ジュウジュウと音がする。


「……手前ぇが余裕だったのは、水魔法が使えるからか?」


 相変わらずの炎を纏って、ゾラが言う。

 全く効いていないな。

 そうだろうとは思っていたが。


 ぽりぽりと鼻をかき、目が座っていく。


「その程度か……もういいや。死ね」


 ボウっと炎が上がったと思ったら、目の前にゾラが居た。

 アルベルトさんがやったやつの炎併用版か!


 全力で離脱。

 俺が居た場所には、貫手を放っているゾラの姿があった。


「チッ! ちょこまかと。ちっこいからやりづれぇな」


 ゾラはこちらを見ると、先程の速度で襲いかかってくる。

 横と思ったら下から、下と思ったら後ろ。四方八方俺を翻弄するように貫手、爪撃、噛み付き、蹴り、炎を纏った尻尾を繰り出す。


 その全てに殺意が乗り、一瞬でも気を抜けば次の瞬間には死んでいるだろう。

 だが、俺も飛び、水で逸らし、目眩しを行い、その全てを避ける。


「オラオラどしたぁ! 気合い入れなきゃすぐ死ぬぜぇ?!」


 俺が避けるのを楽しむように、攻撃の回転を上げてくる。


 久しぶりの実戦。

 しかも相手はAランク。

 戦闘経験豊富で、相手にとって不足はない。


 認識しろ。

 戦闘において、相手を絶対に舐めるな。


 俺が意識を完全に戦闘へと持っていくと、ゾラはピクっと耳を動かし、一度止まる。


「……手前ぇ、本当に人間族のガキか?」

「正真正銘、人間族のガキですよ」


 転生者で、中身おっさんだがな。


 俺の回答に納得なんかしていないのだろうが、ゾラが集中していくのがわかる。

 ようやく、敵として認識してもらえたようだ。


 ゾラが突っ込んでくるが、最小の動きで避ける。

 肌を焼く炎は、水の膜を高速で動かして熱を逃がす。


 ゾラの激しかった突撃は、動きに無駄がなくなっていった。

 纏った炎も温度が上がり、練兵場内の温度も上がっている。


 チラリと皆の方を見る。

 オードリーが氷魔法で熱を防いでいるのが見えた。

 あれなら大丈夫そうだな。


 ゾラの方はというと、無尽蔵かと思うほどのスタミナで攻撃を続けている。

 相手が疲弊したところを仕留める。

 そういう戦法なのだろう。

 単純だが強烈。

 戦場で会ったら悪夢だろうな。


 しかし、その全てを受けきり、俺は反撃していく。


「グッ! 重ぇ! なんだそりゃあ!?」


 圧縮に圧縮を重ねた水を拳に纏い、顔を殴った。

 水魔法【剛水拳(ウォーターフィスト)】。

 俺の拳程度の大きさでさえ、プール位の量を圧縮している。

 普通ぶち当たれば死ぬ。

 だが、恵まれ、鍛え上げられた身体がそれを阻む。


 魔法で強化もしているのだろう。

 気合いとともに弾き飛ばされた球も数多い。


 水魔法だけでは長引くかな。

 よし、混ぜていこう。


 足に雷属性、【雷電改】。


 俺の速度が一気に上がる。

 一瞬俺を見失ったゾラの背後に回り、【剛水拳】に雷撃を纏わせ叩き込んだ。


「グハっ! 雷属性だと?!」


 内臓にダメージを受けながら、ゾラが叫ぶ。

 驚いたようだが、まだまだいくぞ。


「油断するなよ。【霧幻(むげん)】」


 魔力を伴った濃霧が練兵場を覆う。

 この霧はレーダーの代わりだ。

 体温、魔力に反応してその動きを俺に伝えてくれる。


「小癪な……。これならどうだ!」


 ん? ゾラが増えていく?

 ……魔法で分身を作ったな。

 意外に器用だ。


 全10体のゾラが霧の中を縦横無尽に飛び回り、俺を探している。

 爪での攻撃で、中にいたら細切れにされていることだろう。

 でも残念、そこ(・・)じゃあない。


 俺は今、土の中にいる。


「チィ! どこ行きやがった!」


 これだけの攻撃で霧を払えないもどかしさと、一向に捕まえられない焦りを感じる。

 そりゃそうだ。ほぼ全周囲攻撃しているのに、居ないのだから。


「霧が何で出来ているか知ってるか?」

「コソコソしやがって……どこだ!」


 教えてやろう。


「水だよ」


 バリバリバリバリバリバリバリバリ!


「グアアアアアアアアアアアアア!」


 地上に手だけを出し、雷撃を放った。

 全周囲逃げ場なしの霧の檻の中で、分身を含めた全てのゾラを雷撃が襲う。

 プスプスと身体から煙を出し、立ち尽くすゾラ。

 一見すると気を失っているようにも見える。


 だが、


「クソ! めちゃくちゃ強えじゃねぇか!」


 拳を作り、悔しそうに吠える。

 外皮が少し焦げただけで、まだまだやれそうだ。

 なんつう防御力してんだよ……恐怖すら感じるぞ。


「人間族なんかに使うことになるとは思わなかったぜ……。団長の言う通りかよ」


 悔しそうにしながらもどこか嬉しそうに言う。

 言い終わるが早いか、ゾラの身体に異変が起きる。

 ゴキゴキ、ボコボコと身体が変化し、少しずつ、原始的な姿へと変身していった。


 変化が止まり、そこに居たのは……




 見事な毛並みの赤い狼だった。




「おいガキ……いや、エーリだったか。手前ぇは強ぇ。だから、俺ら赤狼族の最高の技で潰す! 喰らってみやがれ【極赤狼】!!」


 魔力が爆発的に増える。

 これまでの様な吹き出す炎ではなく、毛の一本一本が赤く光り、高温となっているのがわかった。

 ゾラの周囲だけ空間が歪んだ様に揺らめき、地面はジュウジュウと焦げている。


 ドン!


 不意にゾラが居た場所が急に爆ぜ、姿が消える。


 ぞわ


「くっ!」


 本能的に首を逸らした。

 ジュッという音と共に、首筋に熱を感じる。


 触ってみると、火傷を負ったような筋が一本、首元にあった。

 爆発を使って速度を上げ、超高温になった身体で攻撃か。

 熱線が飛び回っているかの様だ。


 練兵場のあちこちで爆発が起きているが、ゾラの姿は赤い線にしか見えない。


「スピード勝負か。付き合ってやるよ」


 雷を纏い、一気に加速する。

 目に魔力を通し、凝らす。

 景色がゆっくりになり、周りが見え始めた。


 ……居た。


 速度をさらに上げ、ゾラに並走した。


「なっ?!」


 ゾラはその光景に目を見開き、驚いている。


「さあ、覚悟しろよ。躾の時間だ」


 土魔法で練兵場の土を球にする。

 パチンコ玉くらいの大きさだ。


 それを指で挟み、雷属性魔法で射出する。


 雷土合成魔法【簡易電磁加速砲(キャノンボール)】。


 超高速で動く俺から射出されたそれは、更に見えないほどの速度でゾラに命中する。


 ズドドドドドドドド!

「ガハッ!」


 ほぼ全身にくまなく撃ち込まれたゾラは、壁に激突した。

 同時に【極赤狼】とやらが解け、元の狼の姿に戻る。


「まだやるか?」


 壁にもたれかかり、ボロボロになったゾラに話しかける。


「当たり前だ! 俺はまだ負けちゃいねぇ! この爪で手前ぇを切りs

 ギャリン!


 ポトリとゾラの爪が落ちた。


「あ……? 」


 水土合成魔法【小さな切り裂き魔(ジャックザリッパー)】。


 超高圧で吹き出す水に、練兵場の土を魔法で変質させた硬質の石を混ぜ、チェーンソーよろしく回転させて切っている。

 原理的には削り取っているといったほうが良いか。


 地球ではウォーターカッターとか言われているものの進化版だ。

 魔法で制御しているから、水も石も飛び散ることがない。

 太さと長さは爪楊枝くらいで、人差し指の先から出ている。


「爪が伸びていると女性に嫌われるぞ」

「このクソガキャァアアアアア!!」


 自慢の爪がなくなったことで少しの間呆然としていたが、俺の挑発で再び頭に血が上ったようだ。

 ゴウ! と炎が吹き出し、怒り狂ったゾラがなりふり構わず突っ込んでくる。


「そろそろお終いにしよう……」


 あまり時間もかけていられないからな。

 合成魔法は雷土、水土ときたから、最後は雷水か。


「さあ行くぞ! 雷水合成魔法【女王様のご褒美】」


 水で作った鞭に雷を纏わせる。

 持ち手より先は数百本の鞭となっていて、それぞれが獲物のありとあらゆる部位を雷撃で強かに打つ。


 ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシィ!


「グハ! アガガガガガガガガガ!!」


 鞭で叩かれた所が感電し、動きを阻害する。


「ガァアアアアアアアア!!」


 それらを気合いで乗り切ったのか、俺を掴もうとしてくる。


「グッ! ガッ! グルルルルルル!!」


 だが届かない。

 身体中に巻きついた雷鞭が、ゾラの筋肉を強制的に止めている。


 鞭をゾラに巻きつけたまま飛ぶ。

 ギリギリとゾラの身体を締め付け、簀巻きの様な形にする。


 そして……


「これで終わりだ!」

「グルァアアアアアアアアアアア!!!」


 ドガァン!

 思い切り振りかぶり、練兵場に突き刺した。

 パラパラと、砕かれた地面が舞い上がって落ちてくる。


 ゾラは……最早足しか見えていない。

 魔法を解き、ゾラの元へ向かった。


「よっと!」


 ボコっと音を立て、引っこ抜く。

 うん、変身も解けている様で、人間に近い姿に戻って気を失っている。

 一応土魔法で固めておこう。


「おーい、もう大丈夫だぞ」


 皆に向かって手招きする。

 何事か話して、全員でこちらに来た。


「お疲れ様でした。おケガは?」

「首筋にちょこっとかな。俺もまだまだだね」

「全っ然、全く動きが見えてなかったけど、凄かったよお兄ちゃん!」

「口だけの男じゃなかったわねぇ。でもほぼ完封。流石ねぇ」

「エーリ様……遅いです。お腹が空きましたぁ! エグッ、エグ……」


 あわわわわわわわ!

 アンジーさんがお腹空きすぎて泣き始めた。


「アンジー! 市場で買った食べ物食べてて良いから、泣くなって! な?!」

「ふぁ、ふぁい……ヒック。もぐもぐ……ヒック……もにゅもにゅ……ふう。お疲れ様でした。エーリ様」


 少し食べて落ち着いたのか、キリッとした顔で労ってくれるアンジー。

 ふう。


「あ、あの……」


 両手を胸の前で握り、ちょっとモジモジしているセシルさん。

 ん?


 その様子に、女性陣がピクリと反応する。


「あの、セシル、さん?」

「ひゃい!」


 大分動揺している様で、目が左右に泳いでいる。

 あわわわというセリフが見えるようだ。


「ちょ、ちょっと落ち着きましょう。あちらで座りましょう、ね?」


 流石にマズイかと思って、観客席に誘導しようと肩に触れた。


「ヒッ!」


 ポン!


 音と共に白煙がセシルさんを包む。

 煙がなくなったその後には、











 人間に近い姿の(・・・・・・・)短髪黒髪褐色美少女が立っていた。



次回、ケモ耳娘が登場します!

セシルですけど。


いつも見て下さってありがとうございます。

お気に召しましたらブクマ、評価をよろしくお願いいたします。

感想もお気軽にどうぞ。

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