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第71話 南地区ギルド

続きです。


2018/02/12 読みにくい箇所を修正しました。

 東と南を繋ぐ境界門に続く大通りで、獣人女性への愛を爆発させてしまった俺は、ちょっとした有名人になってしまった。


 歩けば、周りの獣人の方にヒソヒソ話をされ、人間族の男の人達からはサムズアップを贈られる。

 獣人女性の皆様は、俺の方を見てはクスクス笑っていた。


 うちの女性陣も心なしか……いや完全に『身内じゃないです』感を出しながら5mほど離れて歩いている。


 しょうがないじゃないか、(ほとばし)ってしまったものは。



 改めて周りを見る。


 獣人が住む南地区は、住民全体の90%以上が獣人である。

 これには多くの混血も含んでいる。


 通りだけでもかなりの数がいるのではないだろうか。

 面白いのでは、下は蛇系、上は猫系だったり、下が馬で上が鳥系なんて人もいた。

 種族どうなる? とか思ったけど、そこら辺は正直どうとでもなりそうな気がするから、気にしないでいこう。


「さて、勢いで来てはみたものの、これからどうする? 南地区に何があるかよくわかってないんだけど」


 俺の後方を歩く女性陣に訪ねる。

 周りのヒソヒソも少なくなってきたから、そろそろ許してほしい。


「そうですね。この南地区最大の特徴は、闘技場があることですね。地区の真ん中に大小5つの闘技場があって、年中賑わっているようです。4年に一度開催される帝都杯では、国内外から、種族関係なく多くの戦士や冒険者が参加します。私もまだ行ったことはありませんが、それは盛大に行われるようですよ」

「へぇ〜。次はいつなの?」


 オリンピックみたいだな、なんて思ってると、ステフが聞いてくる。


「確か……3年後ですね。前回が去年だったはずです」

「そっかぁ。お兄ちゃんが出て良いとこまでいけば、養成所でも過ごしやすくなるかと思ったんだけどな」

「お兄ちゃんは有名になりたくないよ」


 なんでわざわざ戦わなきゃならんのだ。

 おれは世界を回って、最終的にのんびり暮らせればそれで良いんだけど。


「お兄ちゃん……。チヨコレイトの店主を籠絡したり、受付嬢の人達にプレゼント送りまくって全員に挨拶されたり、中央ギルドで騒ぎを起こしたり、さっき通りで私達を巻き込んで有名になった人と同一人物の言葉とは思えないよ」

「グハッ!!」


 精神的な大ダメージを食らい、片膝を着く。


「まったり暮らしたいと言う割にはぁ、相当目立つ行動をとって来たわよねぇ」

「パーティメンバーも、普通とは言い難いのでは?」


「グッ!」


 両膝が地に着く。


「す、すみませんでした……」


 なんかもう目立たないとか無理なんだろうか。


「まあ、エーリですから」

「お兄ちゃんだもんね」

「エーリ君らしいわぁ」

「エーリ様ですね」


 目立つ=俺のせい


 みたいになっているが、現状反論できる余地がない。


「じゃあこの話はここまでで。それで、この後どうしますか?」

「うーん。闘技場に向かっても良いんだけど、南地区の詳しい情報が聞きたいから、まずは南地区ギルドへ行こう。色々教えてもらってからの方が、効率よく回れるだろう? 美味しいご飯屋さんも教えてもらえるだろうし」

「そだね。ここだって大きいんだし、ブラブラするには道を知らなすぎだしね」

「そろそろお腹が空きました……」

「種族が違うと独自ルールとかありそうだものねぇ」

「じゃあ、エーリの言う通り、まずは南地区地区ギルドへ向かいましょう」


 皆の意見が纏まった所で、一路南地区ギルドへ向かう。


 この世界の大都市には必ずギルドがあり、住民の生活を色々な場面で支えている。

 そのため、通りを歩けば『南地区ギルド→』のような看板が掲げられているので、迷うことがない。


「ここかぁ」

「東地区とは外観からして違いますね」


 南地区ギルド。

 蔦に覆われ、一見埋もれているように見える。

 しかも屋根を突き破って大木が生えていた。

 本当にここはギルドか? と思ったが、看板は綺麗に見えており、そこがギルドであることを主張していた。

 看板には獣人達を模した彫り物がされていて、なかなか見事である。


 出入りしている人も、9割方獣人で、大きさも50㎝程から3m程まで幅広い。

 そのため入口の大きさが、東地区の2倍はあるようだ。


「とりあえず入ろうか」


 突っ立っていてもしょうがないので入ってみる。


「わぁ! すごいすごい!」

「まるで森の中ですね!」

「果実が生ってる。食べちゃダメですかね?」

「良い雰囲気だわぁ」


 女性陣から感想が出ている通り、中もそのまま蔦や木が生えていた。

 中央に生えた木は、屋根を突き破っていたあの巨木か。

 その周りを囲うように受付が設置されている。


 それにしても……


「こうも違うもんなんだな」

「同じ帝都内とは思えませんね」


 もはや獣人の国に来たのではないかと錯覚するほどだ。


「まあまあ。とりあえず受付に行こうよ」


 ステフに促され、空いていた受付に近づいた。

 受付嬢は、黒豹? のようなネコ科の獣人女性だった。

 なかなかの美人である。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 普通に会話が出来る。

 そうか! この世界、言語が1種類しかないんだった。


「初めて南地区に来たので、良い観光ルートと、美味しいご飯屋があれば教えていただきたいです」

「かしこまりました。……失礼ですが、『虹の絆』の皆様と、ステファニー様ですか?」

「ええ、そうですが……何故それを?」


 人相まで知られているというのはどういうことだ?

 皆の警戒レベルが上がった。


「いきなり申し訳ございません。東地区地区の受付嬢に同期がおりまして、皆様の話を聞いたことがあったのです。申し遅れました。私、ジャンヌ・メイガード上級受付の同期で、セシル・ブラックと申します。上級受付です。以後、お見知り置き下さい」


 ぺこりと頭を下げたその女性は、ジャンヌの同期だと言った。

 そこら辺はまあ、後で確認すれば良いか。


「はじめまして。ではご存知でしょうが、『虹の絆』、エーリ、オードリー、ルイーズ、アンジェリーナ。そして私の妹のステファニーです。ジャンヌさんにはいつもお世話になっています」


 こちらも挨拶を返す。

 礼には礼をだ。


「こちら、私の名刺です。ジャンヌに渡せばわかるようになっています。ご存知でしょうが、これを見せれば南地区の様々な所で便宜を図ってもらえるはずです」


 2枚目の上級受付の名刺をゲットした。

 これ、威力高いんだよなぁ。

 ありがたく使わせていただこう。


「ありがとうございます。それで、観光ルートですが」

「はい、少々お待ちください。……今からの時間ですと、このルートがよろしいかと存じます」


 どれどれ……。


 まずは『猫屋敷』でランチ(一品追加 + ドリンク、デザートランクアップ) ※括弧内は名刺持参時特典

 その後天空ゴンドラで闘技場まで移動(搭乗料3割引)

 闘技場でタッグマッチの観戦(観戦料2割引、個室無料、ドリンク、軽食サービス)

 甘味処『甘粒』でドーラ焼きを堪能(お会計3割引、お土産にドーラ焼き2つ)

 劇場型レストラン『人魚の入江』で観劇&夕食(出演者が席の近くで歌う&サイン付き)


「相変わらず凄いな……」


 名刺1枚でこの威力。

 上級受付嬢になるには大変な努力がいる。

 住民は彼女達のお陰で安心して依頼ができ、ほとんどの冒険者も、自分の価値を高めてくれる受付嬢に敬意を持っている。

 長年の信頼と実績が、名刺の威力に繋がっている。


「でも、良いんですか? 本来名刺はこのように簡単に渡すわけではないでしょう?」


 オードリーが少し心配そうに訪ねた。


「はい。私も上級受付になってからは10枚も配っていません」

「じゃあ、なぜ兄には下さるのですか?」


 ステフが受付カウンターに爪先立ちになって掴まり、聞いている。


「そう、ですね。ジャンヌから、『虹の絆』とステファニー様が東地区と中央区の受付嬢に贈り物をした件を聞きました。その時、結構感動したんです」

「感動、ですか?」


 まあ、振り返るととんでもない金額使ってばら撒いたからな。

 ただの売名行為と取られてもおかしくないんだけど。


「気に入った受付嬢に贈り物をするのはよくあります。私も何度かもらったことがありますし。……でも、見習い含めて全員と言うのは聞いたことがありません。エーリ様は、受付嬢皆に感謝していると仰ったそうですね」

「まあ、はい」

「それが、とても嬉しくて。正式な受付嬢になるのは、簡単なことではありません。毎年多くの女性が受付嬢を目指して養成所にやって来ます。平均5,000人でしょうか。でも、半年の研修の後に残っているのは、100人ほどなんです」

「2%、ですか」


 どんだけ厳しいんだよ……。


「しかも、研修を終えて見習いになっても、受付嬢になれる者はさらに少なく、毎年各部署で数人いれば良い方です。0人なんて年もあります。しかも、毎年審査があって、その審査に落ちると見習いに降格したり、見習いすら辞めさせられたりします。下の子ほど、厳しい環境にいるんです」


「受付嬢の人って、凄く有能ですものねぇ。あそこまで至るには、相当大変でしょう?」


 ルイーズが眉を顰めながら苦笑している。


「はい。そんな不安だらけで、まだまだ未熟な彼女達にも、エーリ様は贈り物を下さいました。見習い、ではなく、『受付嬢』として見て下さった。もらった子達は、多くが泣いたと聞いています。それはそうです。自分達の頑張りを見て下さっている方、自分達を受付嬢として尊敬して下さっている方がいる。それはもう、心の支えになります。明確な目標が、また出来たのです。私はそれが、嬉しかったんです」


 熱く語るセシルさんの目には、光るものがあった。

 俺が贈り物をしたのには、その方が有利に運ぶという打算が多分に含まれている。

 だが、尊敬しているのも本当だ。


 パソコンがないこの世界において、客の要望を聞いてすぐに回答を導き出せるその手腕。

 そんな受付嬢の4倍、見習いが800人もいると言う現実。

 これらは全て、受付嬢になることが大変なことだと意味している。


 なれるかどうかわからないのに、見習いの子達は一生懸命笑顔で働いていた。

 そりゃ尊敬もするさ。


「一生懸命働く人が、好きなんです。出来れば、その人達皆に報われてほしいんです。でも、そうならないことの方が多いと思います。俺には応援しか出来ません。だからせめて、俺達は皆さんの頑張りを知っている、そう伝えたかったんです」

「十分です」


 俺は前世で、報われない人達をいっぱい見て来たからなぁ。

 働きたいのに働けなかったり、毎日を生きるだけで精一杯になっていたり、他人のために自分を犠牲にしたり、頑張りの成果を他人に根こそぎ奪われたり……。


 せっかく転生して、出来ることが増えたんだ。

 お節介でも、一生懸命な人が報われるように、出来ることをしていこうと思っている。


 俺が考えていることがわかったわけではないだろうが、皆優しい顔で見てくれている。


「ブラックさん。「セシルと」ではセシルさん、これからもよろs「セシーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーール!! いるかぁ?!」


 いい感じでセシルさんとお近づきになれそうなその時、入り口の方から大音量でセシルさんを呼ぶ声が聞こえた。

獣人、憧れますねぇ。

撫で撫でもふもふしたいです。


いつも見て下さってありがとうございます。


お気に召しましたら、ブクマ、評価をお願いいたします。

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