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第66話 女帝との謁見

続きです。


マチルダ母さんに会いに行きます。


2018/02/06 読みにくい箇所を修正しました。

「こ、ここが中央ギルド……」


 ジャンヌさんに言われ、マチルダ母さんにアーノルドの復活を教えるため、中央区にある中央ギルドへと赴いた。

 俺は絶賛尻込み中である。


 だってもう、冒険者ギルドじゃないもん、ここ。


 外装からしてどこの高級鉄板焼き店だよってくらい豪華。

 ドアマン? なんて絶対A級以上だろって感じのオーラ放ってるし……。


 気軽に入るのなんか絶対無理。

 ドレスコードすらありそうだわ。


「エーリ?」

「あ、ああ。なんか圧倒されちゃってさ。ここ、本当にギルド?」


 思いっきり看板に『帝都中央ギルド』って書いてあるけどさ。


「ギルドですよ。こうしていても不審者度が上がるだけなんですから、さっさと入りましょう」

「ちょっ! 心の準備が!」


 引きずられるような形でギルドへ連行される。


「(エーリ、シャンとしてください。マチルダさんが恥をかきます)」


 キリ


「受付は……あれか?」


 もはやホテルのフロントのようなカウンターで、美人受付嬢達が接客?していた。

 客層も明らかに貴族や大商人みたいな人ばかりで、冒険者もさぞすごい装備なんだろう、という服やら鎧やらの奴らばかり。

 一瞥はしてくるが、歯牙にもかけていない、という感じ。

 うん、そのままでいいよ。


 ぐるりと見渡してみる。

 ぱっと見てマチルダ母さんはいないようだな。


「いらっしゃらないようねぇ?」

「ああ。あそこの『総合受付』で聞いてみよう」


 中央ギルドの受付は、『総合受付』『S・SS受付』『特殊受付』と分かれている。

『総合受付』以外そもそも相手してもらえなさそうだったので、そこへ向かう。


「あの」


 目が合う。


 ニコ


 ?


「『虹の絆』エーリ様ですね。マチルダ・メイガード特級受付がお待ちです。こちらへどうぞ」

「……え?」

「そろそろいらっしゃる頃だと伺っておりましたので」


 マチルダ母さんて予言者か何か?


「とりあえず行こうか」


 皆に目配せして受付嬢の方についていく。


 幾度か角を曲がり、鍵を開けて、エレベーターのような乗り物に乗り、更にいくつもの扉の先に、『マチルダ・メイガード専用受付』が現れた。


 セキュリティ高いな!


 コンコンコン


「『虹の絆』の皆様をお連れしました」

「お通しして」

「はい」


 案内してくれた受付の方が扉を開けてくれる。


 意を決して中に入ると、そこは社長の部屋か? と思うほど豪華な部屋だった。


「あなたは下がっていいわ」

「はい。失礼いたします」


 すすすっと下がっていった。

 めっちゃアゴで使ってるぅ。


「ご無沙汰しております」


 こちらから挨拶する。

 どう考えても立場が違いすぎるぜ。


「『虹の絆』の皆様、ご足労頂きましてありがとうございます」


 マチルダ母さんが頭を下げている。


 その瞬間、首筋に冷たさを感じた。

 下手なことをするとこのまま落ちそうだ。

 皆も、笑顔のまま臨戦態勢を取る。


「そう緊張なさらないでくださいませ。私が招いたのですから。……少々お待ちください」


 そう言うマチルダ母さんが右手をあげると、張り詰めていた何かがフッと消えた。


「っはぁ……。あの、何が?」


 ようやく息苦しさがなくなり、まともに声が出る。


「ふふふ。もう崩していいわよ、エーリくん。さっきまでのは、私の護衛達が放っていた殺気よ。今はもう大丈夫でしょう?」

「は、はい。あれが殺気ですか。微動だに出来ませんでした」


 他の3人も笑顔だが、額に汗をかいている。


「それでも気を失わないだけ凄いわ。あなた達も相当な修羅場をくぐってきたのね。そこにお座りなさいな。今お茶を入れるわ」

「あ、ありがとうございます」


 ピリ


「あれ?」


 殺気が……


「スライス?」


 ズン!


 ?!!


 殺気がまた来たと思ったら、マチルダ母さんからそれを超える殺気が!!


「後で反省文書いて提出。いいわね?」


 スッ、と殺気が消える。


「あの、これは一体……」


 脂汗をかきながら聞くオードリー。

 急に護衛が殺気を放ったことに関してか、それともマチルダ母さんの殺気に関してか。


 正直後の方の説明が欲しいよ。


「ごめんなさいね。私の護衛、私を好きでいてくれるのはいいんだけど、私が誰かに優しくすると、たまに暴走しちゃうことがあって。後で躾けておくから。はい、お茶」

「あ、ありがとうございます」


 超強いであろう護衛を超える殺気が放てる【絶対強者(マチルダ母さん)】。

 うん、絶対機嫌を損ねないようにしよう。


 皆もいつになく行儀がいい。


「「「「いただきます」」」」

「はい、どうぞ」


 ごくり


「美味い!」「「美味しい!」」「アイサム産の特級茶ですわね。淹れ方が素晴らしいですわ」

「ありがとう。ルイーズも流石ね。当たりよ」


 お茶って、こんなにも芳醇な香りが立つのか。


「お茶菓子はあなた達からの頂き物だけど、皆で食べましょ」


 ギラ!


 茶菓子として出されたチヨコレイトに、女性陣の目が輝く。


「突然贈り物をしてしまって、ご迷惑だっだでしょうか?」


 ピタっとオードリーとアンジーの手が止まる。


「そんなことないわ。中央ギルドの受付嬢もそう頻繁には買わないもの。皆驚いていたわよ? 店主自ら届けに来たのだから。一人一人手渡しで、『「虹の絆』」エーリ様、妹君のステファニー様からです』って、今まで見た事もない、乙女の顔でね。流石エーリくん、やるじゃない」

「はは、は。何故か気に入っていただきまして」


「エーリ様は[たらし]ですから」

 アンジー?!


「へぇ。まあ、ここにいる面子を考えれば、納得できるわね。それで、アーノルドの件はどうだったの?」


 ピリ


 殺気ではないが、場に緊張が走る。


 テストの結果はどうだったの? とかそんな感じだ。


「はい。依頼は達成。アーノルドは香油作りを再開するそうです。私達が素材提供の専属になりました」


 マチルダ母さんは一瞬目を見開き、そして、



 惚れそうになるほど可愛らしい笑顔になった。



 普段厳しめな顔だからか、破顔した際のギャップが凄い。

 この破壊力はヤバいな。

 新聞の1面を飾った理由がよくわかるわ。

 この人には、人を虜にする圧倒的な魅力が備わっている。


「やっぱり、あなた達に頼んで良かったわ」

「あの、なぜマチルダ母様がアーノルドの依頼を受けるのですか?」


 知り合い、なんだろうけど。


「あらあら、随分仲良くなったのね。ふふ。アーノルド、カレンとはこちらで知り合ったんだけど、気があってね。良く遊んでいたの」

「なるほど。やっぱりお知り合いだったんですね。特級受付の母様になんで頼めるのか不思議だったんです」


 頷く一同。

 アンジーはチヨコを食べている。


「と言っても、この数十年碌に話もしてなかったんだけど。偶に様子を見に行っても、死人みたいな顔で無言だし。正直生きてるだけいいかと思ってたんだけど、この前会いに行ったら覚悟が決まった目で依頼されてね。依頼内容もアレだったし……。あんまり腹が立って、絶対に思い通りになんかさせてやらないって、そう思ったの。誰に頼もうかと考えて、ふとあなた達の顔が浮かんだのよ」


「私達にとっても、いい依頼でした。採取では連携の強化や皆との絆も深まりましたし」

「香油の製造の見学やお手伝いもさせていただきました」

「専属契約を結べて、香油も確実に手に入ります。もごもご」

「アーノルドが復活を決めたのは、このアンジーが決め手になったんですのよぉ?」

「あら、そうなの? 詳しく聞かせて」


 これまでの経緯を説明する。

『カレン』とカレンの話が出ると、マチルダ母さんは涙を流した。

 この人でも、泣くんだな。


「そう……カレンが…………。良かった……。本当に」


 肩を震わせ、目頭を押さえている。

 少し、落ち着くのを待った。

 見せなければいけないものがある。


「これが、その『カレン』です」


 コト


「これは……」


 金と青の香油が、瓶の中をクルクルと仲良く回っている。


「この印象……確かに、カレンだわ。伝説の青いバリスティックローズ……。あの2人らしいわね」

「らしい、とはどういう意味ですか?」


「あるとは言うが実体はなく、しかしあると信じたい。そんな花言葉を持つ花なのよ、あれは」

「花言葉、ですか。その意味は……」


 カチャっとティーカップを置いて、微笑むマチルダ母さん。



「【永遠の愛】。それが、青いバリスティックローズの花言葉よ」

「「「「永遠の、愛……」」」」


 皆で『カレン』を見る。

 少し、光ったような気がした。


「母様、塗ってみますか?」

「エーリ?!」


 信じられないと言った表情のオードリー。

 まあ、『エイミー』であれだけ興奮してるからな。

 マチルダ母さんにもそうなるんじゃないかと心配するのはわかるさ。


「オードリー、『カレン』なら、大丈夫な気がしないか?」

「え?」


 ジッと『カレン』を見つめるオードリー。

 やがて納得したのか、


「そうですね。それに、最初に塗るのはマチルダ様がいいと、私も思います」

「異論なしです」

「私もそれがいいと思うわぁ」


 皆の気持ちが纏まった。

 きっとアーノルドとカレンも同じ気持ちだろう。


「と言うことなので、母様どうぞ」

「……ありがとう。じゃあ」



 ポタ……



 一滴。



 ただの一滴で、その場の空気が、ゆったりとしたものへと変わる。

 優しさが心を満たし、どんなに荒んだ心でも、この香りをかげばたちまち癒すのではないか。

 そう思えるほどに、柔らかく、心地のいい香りが部屋を満たした。


「ああ……カレン。……アーノルド、まだこんな仕事出来るんじゃない」


 2人に想いを馳せ、目を細めるマチルダ母さん。


「皆、この『カレン』はこのまま母様にあげてもいいか? 最初の『カレン』は、母様に使ってもらいたいんだけど」

「私はいいですよ。またもらいに行けばいいんですし」

「素材もまた取ればいいから私も大丈夫です」

「異論ないわぁ」


「いいの? これ、使ってもいいし、伝説の青いバリスティックローズのバージンオイルなら、売れば金貨100万からオークションにかけられるわよ?」


 悪戯っぽい顔で聞いてくる。

【賢者時間】を発動しそうになる程魅力的だ。


「使うならともかく、そんなことはしませんよ。俺達にとっても思い入れがありますし」

「そう。じゃあありがたく頂くわね」

「どうぞ」


 マチルダ母さんにいいプレゼントになったな。

 これでまた一段と取り込みに成功したと思う。


 護衛も殺気からしてSクラス以上だろうしな。


 〜〜〜〜


 それから少し話をして、そろそろ帰ろうということになった。

 既に日は落ちているし、お腹も空いてきたからな。


「じゃあ俺達は帰りますね。母様といっぱい話せて、嬉しかったです」


 女性陣も口々にお礼を述べ、さあ帰ろうと言う時だった。



「エーリくん。私は『虹の絆』に感謝してるわ。だから、お礼(・・)をさせてちょうだい」



 マチルダ母さんがそんなことを言ってきたのは……。

いつも見て下さってありがとうございます。


お気に召しましたら、ブクマ、評価をお願いします。

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