第65話 香油とチヨコの威力
続きです。
依頼達成報告をしに、東地区ギルドへ向かいます。
2018/02/06 読みにくい箇所を修正しました。
『クリザリス香油店』を後にした俺達は、意気揚々とギルドへ戻っている。
「エーリ、ちょっとだけ『エイミー』を塗ってもいいですか?」
オードリーがらんらんと目を輝かせて聞いてくる。
というか女性陣全員だな。
「いいけど、家まで待たないn「早く塗りましょう。アンジー、お願いします」「合点承知!」「楽しみだわぁ!」
おい。
……いつのまにかリンク切れてやがる。
「まずは手に……。はぅ!」
『エイミー』を手に伸ばし、それをかいだオードリーが腰砕けになっている。
「そ、そんなにいいのぉ?」
はぁはぁしたルイーズ。
顔がヤバいぞ?
「はぁ……。まず伸びがまるで別物です。一滴だけなのに、腕までカバーしています。そして体温と馴染んだ時の香りの広がり方。主張しすぎず、かと言って香らないわけでもない。この子は、素晴らしいです。こ、これで熟成途中だなんて……。明日、完成した『エイミー』を塗ったら、どうなってしまうのでしょう……」
事後のような状態のオードリー。
火照った顔、潤んだ瞳、濡れた唇。
そして、オードリーの匂いと馴染んだ『エイミー』の香り。
これが家だったなら、10歳の俺でも襲う自信がある。
ただでさえ可愛いオードリーの魅力が、数倍に引き上げられたようだ。
「じゃあ、私は首にぃ……」
「私は足にでも」
!!?
バッと後ろに飛んだ。
「エーリ様?」
「どうしたのぉ?」
これはヤバい!!!
『エイミー』を塗った3人の魅力が、シャレにならないレベルになっている。
あそこに立ったら野獣になってしまう。
「ふう、ふう。危ない」
「エーリ?」
しっとりとしたオードリーが小首を傾げて尋ねてくる。
くっ!
襲いてぇ!!! ※主人公は10歳の少年です
「オードリー、香りが落ち着くまで、これ以上近づかないでくれ。我慢が出来なくなる」
「んーーーー?」
上を向き、人差し指を唇に当て、何事か考えるオードリー。
ふう、ふぅ。
抑えろ、俺!
「だぁめ」
「へ?」
ギュ
いつぞやのアルベルトさんの如き歩法で、一瞬の内に距離を詰めたオードリーに抱きしめられる俺。
顔は胸に埋まっている。
「あっ! ぐぅう! くぁっ!」
指をワキワキさせながらも我慢する。
頑張れ! 頑張るんだ! ※この小説は異世界転生ファンタジーです
そこへ
「私もぉ!」
「では私も」
ギュギュ
「はぅわ!」
魅力溢れる3人に抱きしめられ、もはや色々な枷が外れそうになる。
仕方ない、緊急事態だ!
「性、精属性混合魔法、【賢者時間】!!」
この魔法は、荒ぶる自分を解き放った後に訪れる無の境地を再現した至高の魔法である。
「オードリー、ルイーズ、アンジー。ほら、人が見ています。君達が魅力的なのは私が一番わかっているのです。さあ、ギルドへ向かいましょう。こういうことは、私が大きくなってからにしてくださいね」
恐らく、今の俺は仏像のような表情に違いない。
「エーリ……。はぁい。また、後でですね?」
「じっくり、たっぷり、ねぇ?」
「私に、いーっぱい、出したり入れたりしてくださいね?」 ※アイテムなどの事です
「……はい、その内に」
くぅう!
【賢者時間】でもギリギリだぜ!
一体俺は何と戦っているんだ!
そうして香りが落ち着きまで待ち、ようやくギルドへ到着した。
通りを歩く俺達がチラチラ見られるのは、恐らく『エイミー』のせいだろう。
これでも大分薄まったんだぞ?
さて、ジャンヌさんは……いたいた。
「ジャンヌさん。お久しぶりです。依頼達成の報告に来ました」
採取の時は昼夜逆転してたから、全然会ってなかったんだよな。
「『虹の絆』の皆様」
おもむろにジャンヌさんが側にあった鈴を持ち上げると、
チリリーン……チリリーン
何度か鳴らし始めた。
俺達だけじゃなく、ロビーにいた他のお客さんや冒険者も何事かとこちらを見て来る。
すると、
ザッザッザッザッ
色々な所から女性達がやってきて、ホールを埋め尽くした。
他の受付嬢の方も全員立ってこちらを見ている。
オードリーやルイーズを見るが、2人もよくわかっていないようだ。
アンジーはポケっとしている。
「あ、あの、ジャンヌさん?」
「『虹の絆』の皆様! この度は私達受付の者に過分な品を頂き、ありがとうございます!」
「「「「「「ありがとうございます!!!」」」」」
その場に集まった女性達が、スカートの裾を少し上げ、膝を曲げる。
「皆様のご期待に添えますよう、今後とも精進して参りますので、これからも、どうぞよろしくお願いいたします!」
「「「「「お願いいたします!!!」」」」」
圧倒される。
恐らくここには、800名の受付嬢が勢揃いしているのだろう。
それが、俺達に感謝の言葉を伝えるためだけに、集まってくれたのだ。
……チヨコあげただけだよ?!
「エ、エーリ。何か、言った方がいいんじゃないですか?」
オードリーから小突かれる。
ええ?!
こんな雰囲気の中話すの?!
「あ、あの……」
バッ!
800人が俺を見る。
ゴクリ
「私達冒険者や、このギルドを利用する全ての人は、ジャンヌ・メイガード上級受付を始め、受付嬢の皆様にお世話になっています。私達『虹の絆』は冒険者になって日が浅いですが、これまで何度も助けて頂きました。これまでの感謝の気持ちと、今後の皆さんの健闘を祈り、贈らせて頂いた次第です。これからも色々な形でお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」
チーム全員で頭を下げる。
ゆっくり顔を上げると、ジャンヌさんが微笑んでいた。
うわぁ、めっちゃいい笑顔……。
「皆様のご期待に添えますよう、精進して参ります。末永く!」
「「「「「末永く!!!」」」」
ザッ!
「「「「「「よろしくお願い申し上げます!!!」」」」」」
全員に頭を下げられる。
そして
チリリーン……チリリーン
鈴の音と共に受付嬢達が仕事へと戻って行く。
俺達と他のお客さんは、何が起こったのかわからない、という感じなのだが、受付嬢の皆さんは通常通り、と言った感じで仕事していた。
さっきのことは夢だったんじゃないだろうか??
「あの……先ほどのは一体?」
恐る恐る聞いてみる。
「エーリ様。この度は誠にありがとうございました。まさか『ココア・ド・コ』のチヨコレイト、それも『ミルクチヨコレイト』を受付嬢全員にくださるとは思ってもおりませんでした。さらに茶菓子としてあのように大量の……。昨日から受付嬢全体の士気が上がっており、とてもいい雰囲気となっているのですよ。その感謝の気持ちを、皆で表したのです」
それであんな仰々しい……?
「で、でも、お菓子、ですよね?」
「ふふふ。エーリ様はご存知ないと思われますが、あの店のチヨコレイトは、憧れの1つなのです」
「憧れ、ですか?」
よく、わからないが……。
「あの格式、あの味。安い物で1つ銀貨1枚という値段。私達上級受付でも、1年に一度食べるかどうか。見習いに至ってはそもそも店にすら入れないのです。格に見合わないので」
そ、そんな店の前で『やってきました!』とかやってたのか俺達は……。
「そんな店のお菓子を全員分。見習いでも金貨2枚分のチヨコレイトを下さったのです。見習い達など、感動して涙を流し、『私、絶対上級、いや、特級まで上がってみせる!』とやる気に満ち溢れています。先輩の受付嬢達も、後輩に負けないように意識が上がりましたし。受付嬢だけじゃなく、ギルドとしても感謝しております」
チヨコレイト、スゲーーーーー……。
「日頃の感謝の気持ちなので、喜んでいただけて嬉しいです」
「驚かせてしまって申し訳ありませんでした。それで、依頼達成ということでしたね?」
「あ、はい。これが証明書です」
証明書に目を通すジャンヌさん。
「はい、確認いたしました。……失礼ですが、この香りはもしや?」
俺達から漂う香りに気がついたのか、鼻をすんすんするジャンヌさん。
……可愛い。
「アーノルド……いえ、クリザリスさんが作った香油を少し分けてもらったんです。まだ熟成途中らしいんですが」
「とてもいい香りですね。これが『最後の香油』、ですか……」
ん?
「ジャンヌさん、どうしてそれを?」
最後とかそういうのは、依頼書に載っていなかったはずだけど。
「実は、この依頼はマチルダ特級受付から回ってきた依頼なんです」
「マチルダさんから?」
「はい。昔親交があったそうで、『30年ぶりに連絡してきたと思ったら、死にそうな顔で依頼してきたのよ。多分最後にするつもりだわ。そんなことにはさせない。……あの子達ならなんとかしてくれるかもしれないわね。ジャンヌ、頼んだわよ』と言われまして……。でも、『最後』になったんですよね?」
寂しそうな顔で聞いてくるジャンヌさん。
俺はニヤッとして答える。
「伝説の香油士、アーノルド・クリザリスは復活しましたよ。これからも、素晴らしい香油を作り続けるはずです。俺達が専属の素材採取役を担うことになりましたから」
「本当、ですか? ……このことをマチルダ特級受付は?」
「まだ知らないはずです」
「では、すぐに知らせてあげていただけませんか? 恐らく、とても喜ぶと思います」
仕事中にも関わらず、いつになく熱心なジャンヌさん。
マチルダ母さんのことが心配なんだな。
「わかりました。これから伺います」
「よろしくお願いいたします」
ジャンヌさんに見送られ、俺達は急遽、中央ギルドへと向かうのであった。
『エイミー』からはフェロモンでも出てるんですかね・・・。
そんな香油があれば、つけてみたいです。。。
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