第59話 赤と青
続きです。
アンジーの秘密が一つ明らかに。
2018/02/06 読みにくい箇所を修正しました。
「ただいま〜。エーリ、わかりましたよ」
「おかえり。何かわかったんだ」
皆でテーブルを囲み、話を聞かせてもらう。
「まず、バリスティックローズは夜、交代で寝ています」
「ああ。そんな感じだったな」
「それなんだけどぉ、どうやらローテーションを組んでいるみたいなのぉ」
ローテーションか。
「んー、でもそれだと隙がないんじゃないか?」
「それが、一晩のうちのどこかで必ず、一瞬だけ全部の花が寝る瞬間があるそうなんです!」
「! もしかしてあの時か?!」
昨晩俺がテリトリーに入っても撃たれなかった、あの一瞬。
「はい。でも、大体の群れは数種類パターンを持っていて、それは群れごとに違うらしいです」
「一朝一夕では無理か。でも、光明は見えたな」
「今夜から交代でぇ、その割り出しをしようって話してたのよぉ」
「夜食のパターンは私が考えます」
アンジー……。
「よし! こっちも全員同時に起きる必要はないから、交代で仮眠をとりながら情報収集しよう」
「「「「はい」」」」
そうして俺達は、その夜から観察を続けたのだった。
〜〜 最終日の前夜 〜〜
満月の夜。
ガイノスの丘はいつもよりも輝いていた。
「今夜が満月だからでしょうか? 輝き方がいつもより綺麗ですね」
「花の香りも……はぁ。ここまで届いて来るわぁ。とろけちゃいそう」
「美味しそうです」
「今夜はパターン1のはず、だな?」
「ええ。そのはずです」
パターン1は深夜2時35分。
「今2時半か。よし、最後の確認をしよう」
俺達はこの数日で、バリスティックローズの特徴をつかんでいた。
・交代で寝る。
・交代にはパターンがある(この群れは恐らく3パターン)。
・全部が眠る前は花粉の噴出が一瞬止まる。
・全部眠ってから次が起きるまでは1.5秒。
「その一瞬で俺とアンジーで採取を行う。アンジー、準備を」
「はーい。失礼しますね」
ぬるり
「ひゃう! ……うぅ〜〜。これはまだ慣れないな」
『エーリ様暖かいです』
アンジーが俺を包んでいる。
ぱっと見は俺しか居ないように見えるが、アンジーを着ている、と言ったほうが正しいか。
この数日、採取の方法を話し合っている中でわかったアンジーとの新連携形態だ。
〜〜 2日前 〜〜
「採取の時は俺がアンジーを抱えて突っ込むから、魔法で刈る側から収納してってくれ」
「あ、抱っこしなくても大丈夫ですよ。こうすれば」
「え?」
ぬるり
「ひゃう!」
「なな、なんだ?!」
「アンジー?!」
「あらあらぁ?」
アンジーが俺に触れたと思った瞬間、アンジーはその姿を変え、ぷるんとしたスライム状に変化し、俺にまとわりついてきた。
首から下全部、アンジーが引っ付いている状態だ。
……大事な所まで。
「アンジー?! これどゆこと?!」
「あー、言ってませんでしたねー。 魔法鞄は不定形生物なので、正直どんな形にもなれるんですよ。こうしてご主人様にまとわりついて、袖口から武器を出す、なんてことも可能です。普段からやらないのは、人間の姿の方が、ご飯が食べやすいからです」
ご飯基準!
こうしてアンジー密着形態は完成した。
〜〜 現在 〜〜
そう言うわけでアンジーとの合体? を済ませた俺は、両手が自由に使えるようになった。
大事な所だけ避けてもらうように頼んだけど。
だって色々な意味で気持ちがいいんだもん……。
俺が性徴期を迎えたら、ずっと『おはよう』状態になっちゃうからな。
「エーリ、そろそろです」
「あ、ああ。わかった」
気を取り直して、足に雷属性魔力を集中させ、ゲムで圧縮する。
こうすることで普通の【雷電】よりも倍の速さで移動できるからだ。
【雷電改】と言ったところか。
手には風魔法【鎌鼬】。
準備は出来た。
5
4
3
2
1
花粉が止まる。
「今!」
ズドン!
オードリーの声で飛び出した俺は、一瞬でバリスティックローズの所に近づく。
目の前に広がるバリスティックローズを【鎌鼬】で刈っていく。
刈った次の瞬間にはアンジーが収納していくため、鮮度も抜群のはずだ。
10 20 30……50!
時間も大丈夫だ。
よし、離脱!
そう思った瞬間、目の端に何か煌めいて見えた。
直感的にそこに向かい、1本だけ余計に刈って皆の元に戻る。
ズザザザザザ!!
「隠れて!」
「「はい!」」
草の陰に隠れる。
ピクッ
見張り役のバリスティックローズが起き始めた。
群の異常に気がついたのだろう。
キョロキョロと辺りを見渡し、花粉を噴出した。
それが合図となったのか、バリスティックローズ達は次々と起き出し、
ジャキン!
と臨戦態勢になったまま動かない。
「ああなると丸1日警戒が解けません。成功して良かったです」
「最後、急に方向が変わったけどぉ?」
「家に帰ったら話すよ。気をつけてこの場を去ろう」
「「『了解』」」
俺達は成功の余韻に浸るまもなく、ガイノスの丘を後にするのだった。
「たっだいまぁ〜!」
「おっかえりー! その表情は成功?」
皆でピースをした。
「これで依頼主に届ければ依頼達成だよ」
「じゃあまずはお風呂とご飯に行ってらっしゃい!」
「「「「はぁ〜い」」」」
ザブン
「あ〜〜、今日のお風呂は格別だな」
「苦労した甲斐がありましたもんねぇ」
「冒険、とは違うけれど、立派な冒険者仕事だったと思うわよぉ〜」
「ご飯が楽しみです」
しばし湯船を堪能する。
毎日皆とお風呂に入ったおかげで、無駄に興奮することはなくなった。
流石に凄い場所が見えてしまうと『おはよう』しそうになるけど。
「ところで、最後に方向転換したのはなんでですか?」
「それ私も聞きたかったのよぉ〜。何かに気づいたって感じだったけどぉ?」
両サイドから質問が飛んでくる。
アンジーは俺の前でお湯を満喫している。
「ああ、50本目を刈って帰ろうとした時に、目の端に輝く何かが見えたんだよ。俺も刈る時に一瞬だけしか見てないんだけど、多分青いバリスティックローズだった」
「青い……」
「普通は赤いんだからぁ、突然変異かしらぁ?」
「わからない。依頼主のクリザリスさんに聞けばわかるかな。危険なものだったりしたら大変だし」
現状何もわからないのだから、詳しい人に聞くまではアンジーに保管しておいてもらおう。
お風呂から上がった俺達は朝ご飯を食べ、依頼主の家に向かうのだった。
密着形態、ぜひ体験したい・・・。
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